セレナは地下の混乱の中でしっかりと立ち、大魔道士を片手で掴んでいた。もう一方の手で敵を指さし、彼女の消滅の魔法が空気を弾けさせた。放たれる光は影と混ざり合い、不気味な光景を作り出していた。
決然とした声で、セレナは叫んだ。
「祭壇を調べていたら、こんなものを見つけたわ!」
セレナの強大な魔力によって縛られた魔道士は、絶望的に叫び始めた。
「離せ、貴様ら!こんなことは許されん!」
その間に、急いで地下へと駆けつけたアレックス、EMI、アリアが状況を見守るために集まった。彼らの表情には疑問が浮かんでいた。祭壇から放たれる異様な輝きが、場の緊張をさらに高めていた。
突然、魔道士が苦痛と怒りに震える声で叫んだ。
「アズラス!
その名が静寂の中に響き渡ると、アレックスは瞬時に凍りついた。彼は驚きの中で、かつての戦いで悠然と眠り続け、周囲の混乱にも動じなかった巨大なピンク色の獅子を思い出していた。
まるでその記憶が何かを呼び覚ましたかのように、獅子がゆっくりと身を起こした。深く静かなあくびをしながら、黒い鱗が首、前足、そして尾の 一部を覆うその巨大な獣は、ゆっくりと頭を持ち上げた。
しわがれた声で、獅子は問うた。
「魔道士は何を望む?」
セレナの魔法で縛られたまま、大魔道士は必死に制御を取り戻そうとし、命令するような口調で獅子に叫んだ。
「助けろ!」
一瞬、獅子は躊躇したように見えた。その目が鋭くなり、拒絶の意を示すように頭を横に振った。しかし、その直後、魔道士は苦々しい笑みを浮かべながら呪文を唱えた。暗黒の波動が獅子を包み込み、その壮大な身体を痛みに歪ませた。
獅子は洞窟全体を震わせるような咆哮を上げた。
その咆哮は戦況を一変させた。怒りに燃えた獅子は、勢いよく立ち上がると、魔道士をじっと見据え、命令に応じるような姿勢をとった。怒りと諦めが入り混じるように、一度頷くと、獅子は堂々と前へと進み、攻撃の構えを取った。黒と青の邪悪なオーラが獅子の体を包み込み、その威圧感をさらに際立たせた。
アレックス、EMI、アリアは驚愕の表情で互いに目を見交わした。アレックスはごくりと唾を飲み込み、獅子の登場が戦いの流れを変えることを確信した。その時、セレナは魔道士の拘束を強めながら、力強く宣言した。
「どうやら、ゲームのルールが変わったようね!」服従の呪いに完全に支配された獅子は、大魔道士の指示に従いながら動いた。しかし、その目に宿る怒りは、獣の本心が未だに反抗していることを示していた。
拘束されたままの魔道士は、痛みと怒りに悲鳴を上げた。しかし、その声は不安げに揺らいだ。目の前にそびえ立つ獅子は、黒と青の邪悪なオーラを纏い、すべてを押し潰すかのような存在感を放っていた。
緊張は頂点に達した。強制された獅子と魔道士の同盟。そして、それを見守る英雄たち。戦いは、ここから新たな局面を迎えようとしていた。
「準備しろ!」 アリアが叫んだ。
「ここからが本番よ!」獅子は魔道士を見据えたまま、一気に飛びかかった。その隙を逃さず、セレナは消滅
の魔法を強めた。
轟く咆哮と強力な呪文が洞窟を満たし、闇に手を伸ばした者たちの運命を決定づけた。