地面が揺れ、アズラスは強烈な跳躍で前へと進んだ。暗黒と青のオーラが破壊的な波のように広がる。祭壇の幽玄な光の下でその牙が鋭く輝き、かつて穏やかだったその瞳は、今や完全に制御を失った怒りで燃えていた。

「クソッ！」アレックスは拳を握りしめた。「あのライオンが厄介なのは分かってたが、これはやりすぎだ…！」

セレナは依然として大魔導士を拘束していたが、彼女の手には崩壊の魔法が火花を散らしていた。だが、アズラスの突然の突進を見て舌打ちする。

「ライオンが本気で戦うなら、こんな奴に構ってる暇はない！」と怒鳴り、大魔導士を地面に投げ捨て、素早く後退した。

大魔導士は膝をつき、荒い息を吐きながら胸を押さえた。しかし、その顔には歪んだ笑みが浮かんでいた。

「フッ…遅かれ早かれ、お前たちはあれに屈することになる…」

アレックスはその言葉を気にしている暇はなかった。アズラスはすでに間近に迫り、その速度は規格外だった。巨体とは思えないほど俊敏な動きで距離を詰めてくる。

「アリア、セレナを守れ！ EMIは俺と来い！」アレックスは素早く指示を出した。

アリアは即座に反応し、両手を広げて闇のバリアを展開。セレナと大魔導士を包み込み、迫る衝撃から守る。

EMIは力強くうなずくと、拳に光の魔力を集めた。

「ライオンが遊びたいなら、本当の力ってものを見せてやるよ！」と、自信満々に叫ぶ。

アズラスは彼らの目の前に降り立ち、青黒いオーラを揺らめかせながら、苛立ち混じりの低い声で言った。

「やりたくはないが…もう分かってるだろう？」

次の瞬間、アズラスが口を開き、轟音の咆哮が地下を揺るがした。圧倒的な威圧感が空間を歪ませるほどだった。アレックスはその衝撃に耐えるため、必死に地面に踏みとどまる。EMIも必死に耐えていたが、身体がまるで鉛のように重く感じられた。

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—抑制魔法だ！—バリアの中からアリアが叫んだ—動きが制限されている！

アレックスは歯を食いしばった。アズラスが強いことはわかっていたが、無策で正面から挑むのは自殺行為だ。

—持久戦は無理だな…—アレックスは呟いた—隙を作るしかない…

EMIは挑戦的な笑みを浮かべ、首を回して筋肉をほぐした。

—だったら、作ればいいだけだろ。

アレックスの返答を待たずに、EMIは黄金の光を拳にまとい、目にも止まらぬ速さでアズラスへと突進した。ライオンはその動きを見て、退屈そうにしながらも一抹の興味を示した。

—正面から来るのか…なら、少しは驚かせてくれよ。

アズラスは軽く前足を上げ、EMIの拳を難なく受け止めた。衝撃波が地面を揺るがしたが、ライオンは微動だにしなかった。

—悪くない…だが。

次の瞬間、アズラスは尾を振り抜き、鞭のような一撃をEMIに叩きつけた。彼女は地下の壁に叩きつけられ、岩が砕ける音が響いた。

—EMI！—アレックスが叫んだ。

ライオンは溜息をつき、鬣を揺らした。まるで戦い自体が煩わしいかのようだった。

—最後のチャンスをやる。引き下がれ。

アレックスは沈黙し、状況を分析した。アズラスは戦うことを強いられているが、本気で殺す気はない。まだ、打つ手はある…

—引くつもりはない—アレックスは力強く言った—あの魔導士が何かを企んでいる限りはな。

アズラスはしばらくアレックスを見つめた後、低く笑った。

—厄介なやつらだな…。

突如、ライオンの姿が闇の閃光とともに消えた。アレックスは反応する間もなく、背後に殺気を感じた。

—遅い！

アズラスが漆黒の爪を振り下ろした。

—クソッ…！—アレックスは反射的に腕を上げた。

しかし、衝撃が来る前に、一つの影が割り込んだ。

—チッ…お前には触らせねぇよ！

それはEMIだった。彼女はアレックスの前に立ち、両手でアズラスの攻撃を受け止めた。光のオーラが眩しく輝き、ライオンの圧力に耐えている。

—簡単には負けないぜ—EMIは挑発するように笑った。

アズラスは興味深そうに片眉を上げた。

—面白い…。

こうして、真の戦いが始まった。

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EMIは歯を食いしばりながら、アズラスの巨大な爪を受け止めていた。彼女の手は眩い光を放ち、ライオンの漆黒のオーラとぶつかり合い、火花を散らしていた。

—クソッ…こいつ、本当に化け物かよ…！—EMIは呻いた。

アズラスは冷静な笑みを浮かべたまま、さらに力を込めた。

—悪くないな、人間。でも…。

突如、ライオンが足を踏み込み、爆発的な力でEMIを吹き飛ばした。彼女は空中で体勢を整え、地面に滑り込みながら着地した。

アレックスが彼女の元へ駆け寄る。

—EMI！

—大丈夫、大丈夫…—EMIは痛む手を振りながら言った—だが、こいつ…本気でぶつかってくる気はないな。

アズラスは鬣を揺らしながら、二人を見下ろした。

—確かに実力はある…だが、無駄なことをしているな。お前たちでは俺を倒せん。

少し離れた場所で戦況を見ていたアリアとセレナが目を合わせる。

—あのライオン、本気で戦ってないわね—アリアが呟いた。

—どういうこと？—セレナが尋ねる。

—攻撃は正確だけど…すべて抑えている。殺す気がないんだわ。

セレナは拳を握りしめた。

—なら…奴の堪忍袋の緒を切ったらどうなると思う？

アリアは彼女をじっと見つめ、ため息をついた。

—嫌な予感しかしないわ…。

しかし、セレナはすでに動き出していた。

—アレックス！EMI！援護しなさい！

言うが早いか、セレナは片手を掲げ、漆黒の光を放った。彼女の周囲に黒い火花が散り、崩壊の魔力が地面を侵食し始めた。

アズラスは興味深そうに目を細める。

—ほう？何をするつもりだ？

セレナは不敵な笑みを浮かべた。

—私はね…強敵と戦うのが好きなの。でも、それ以上に…そいつらを打ち倒す瞬間が大好きなのよ。

瞬く間に、アズラスの足元の地面が崩壊し始めた。漆黒の魔法陣が広がり、岩を塵へと変えていく。

—チッ…！—アズラスは跳躍し、腐食の効果を避ける。

しかし、空中で待っていたのはEMIだった。

—捕まえたぜ！

彼女の拳がライオンの顎に炸裂し、アズラスを吹き飛ばす。

—今だ！—アレックスが叫ぶ。

アレックスは手をかざし、EMIの体に補助魔法を展開する。

—第二ラウンドだぜ、でか猫！—EMIは笑いながら、猛攻を開始した。

最初の一撃はアズラスの前足で防がれた。次の一撃は鬣に受け流された。しかし、三撃目が脇腹に直撃する。

—ぐっ…！

爆発的な光が炸裂し、地下空間に衝撃波が広がった。アズラスは後退しながら、鋭い爪で地面を抉り、体勢を立て直す。彼の呼吸はやや荒くなり、脇腹の部分にはEMIの光の力による焼け跡が見えた。

—…面白い。

ライオンは顔を上げ、今までとは違う鋭い目つきで彼らを見つめた。

—ここまでやるとはな…。仕方ない、本気で相手をしてやるか。

空気が一気に重くなる。地面が震え、ライオンの漆黒の魔力が荒れ狂い始めた。

アレックスは唾を飲み込んだ。

—マズいぞ…。

アリアとセレナもその圧力に気

づき、顔をこわばらせる。

—とうとう本気になっちゃったわね—アリアが呟いた。

—計画通りよ—セレナは自信満々に微笑んだ。

アレックスは呆然と彼女を見つめる。

—お前、一体何考えてたんだよ？！

だが、今さら後戻りはできない。アズラスは頭を低く構え、鬣が逆立った。

—さあ、覚悟しろ…。

黒と青の閃光が弾け、ついに、真の戦いが始まった。