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第49章: 団結の炎

戦場には一瞬の静寂が訪れていた。アズラスとの激闘の余韻がまだ空気に残る中、アレックスは地面に横たわっていた。破れたシャツの隙間から負傷した体が露わになっていたが、その瞳には揺るぎない決意が宿っていた。彼は分かっていた——この戦いの行方は、最後の一押しにかかっていると。


痛みに耐えながらも、アレックスは自身の唯一の強み——古代のルーンに刻まれた支援の力に意識を集中した。


目を閉じ、過去の戦いの記憶を呼び起こす。仲間たちが彼を頼り、彼の力を必要としていた瞬間の数々。その鼓動が次第に早まり、傷ついた体を超えて彼の内なるエネルギーが活性化していく。やがて、彼の腕と胸元から黄金の輝きが放たれ、破れた服の隙間からその光が溢れ出した。


その瞬間、彼の体から溢れた光は川のように流れ、仲間たちのもとへと届いた。そのエネルギーは彼女たちを包み込み、力を蘇らせ、戦場に再び命を吹き込んだ。


アリアは、影の混沌に飲まれそうになっていたが、アレックスの力が流れ込むと、その魔力が一気に増幅した。新たな力を得た彼女は、再び巨大な影の巨像を召喚した。以前よりもはるかに明確な輪郭を持ち、その漆黒のオーラはまるで意志を持つかのように脈動していた。


EMIは、消えかけていた光の魔法を取り戻し、さらに強化された力を解き放った。黄金と白の光が戦場を照らし、闇を浄化するように輝く。その光の一撃一撃が、より鋭く、より強力に、かつてない精度で放たれるようになった。


セレナは、彼女の分解魔法が新たな領域へと達していくのを感じた。指先から放たれる火花のようなエネルギーが、まるで生き物のように踊り、あらゆる物質を粉々にするほどの強力な力へと変わっていった。その手のひらに広がる光景は、まるで世界そのものを砕けるかのような圧倒的な破壊力を持っていた。


戦場の空気が変わった。彼らが描く戦いの軌跡は、ただの戦闘ではなく、新たな歴史の始まりのようだった。


アレックスはゆっくりと体を起こし、息を整えながら仲間たちを見渡した。


「これだ…」と、掠れた声で呟いた。「これが、俺たちに必要だった力だ。これで、どんな敵が来ようとも、立ち向かえる。」


アリアは影の巨像を見上げながら、しっかりと頷いた。

「もう迷う時間はない。全力で戦うだけよ。」


EMIは光を放ちながら、静かに微笑んだ。

「私たちなら、絶対に負けない。」


セレナは短く笑い、仲間たちの姿を見て満足げに頷いた。

「団結の力…これほどまでに強大だったなんてね。」


東の空には、朝日が昇り始めていた。新しい一日が始まる。だが、彼らの戦いはまだ終わっていない。アレックスが分け与えた力は、単なる魔力の強化ではなかった。彼らの心を一つにし、不屈の絆を再確認させるものだった。


影の巨像を先頭に、EMIの聖なる光が周囲を包み込み、セレナが圧倒的な破壊力を解き放つ準備を整える。彼らはこれから訪れる試練に備え、一歩前へと進んだ。


「行くぞ。」アレックスは立ち上がり、力強く言い放った。



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