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第5X-2章: ルーンに刻まれたもの




アズラスは嵐のように突き進み、その一撃ごとに地面を砕き、空気を震わせるほどの圧倒的な力を見せつけていた。アリア、EMI、セレナは全力で戦っていたが、黒獅子には疲れの兆しすらなかった。


「無駄よ!」セレナは辛うじて突進をかわしながら叫んだ。「どれだけ攻撃しても、こいつの耐久力は異常すぎる!」


「それだけじゃない…」EMIは眉をひそめた。「まるで…楽しんでいるみたい…」


アズラスが咆哮し、アリアに襲いかかった。疲れ果てた彼女は、迫りくる一撃をただ目を見開いて見つめることしかできなかった。


しかし、その瞬間、アレックスがそこにいた。


何も考えず、彼はアリアと黒獅子の間に立ちはだかった。計画もなく、こんな化け物に立ち向かう力もない。


だが彼には…ルーンがあった。


かつてアリアが彼に託した、魔法と戦闘のためのルーン。


迷わず、彼はそれを発動させた。


彼の腕から光が広がり、全身に魔力の紋様が浮かび上がった。その力は、彼女たちのようなものではない。微々たるものにすぎなかった。


それでもアレックスは動かなかった。


退かなかった。


恐れもしなかった。


アズラスは一瞬彼を見つめ…そして、爆笑した。


「ははは!まさか!そんな役立たずのルーンで、俺を止められるとでも?」


黒獅子は闇のエネルギーを前脚に凝縮させ、全力でアレックスに振り下ろした。


衝撃で粉塵が舞い上がり、岩の破片が周囲に飛び散った。


「アレックス!」アリアが手を伸ばし、叫んだ。


だが、粉塵が晴れた時――アレックスはそこに立っていた。


両足は震え、腕はルーンの余波で焼けるように痛んでいた。それでも、一歩も動かなかった。


アズラスは目を細めた。


「…なんだと?」


アレックスは荒い息をつきながら、まっすぐに黒獅子を見た。


「俺の力は足りないかもしれない…でも、お前が仲間を傷つけるのを黙って見ているわけにはいかない」


アズラスは舌打ちし、初めて真剣な表情になった。


「…どうやら、お前はとんだ馬鹿らしいな」


暗黒のオーラが彼を包み込んだ。


アズラスはじっとアレックスを見つめたまま、動かなかった。


荒々しく、傲慢に戦っていたはずの黒獅子が、一歩後ずさった。


空気の緊張がわずかに和らいだ。アリア、セレナ、EMIはすぐにそれを察知した。


「アズラス…?」セレナが信じられないというように呟いた。


黒獅子は不機嫌そうに低く唸り、その漆黒のたてがみを揺らした。


「…これ以上戦う理由はない」


闇の魔導士は眉をひそめ、苛立った表情を浮かべた。


「どういうことだ、アズラス? まさか、ただの人間がちょっと勇気を見せただけで降参するつもりか?」


アズラスは答えなかった。ただ、静かに座り込み、深い思案に満ちた目でアレックスを見つめ続けた。


魔導士は再び何か言おうとしたが、突然、地面の下から鈍い振動音が響いた。


「ヴゥゥゥゥゥン…!」


足元の大地がわずかに揺れた。


魔導士の表情が一変した。驚き、そして――笑みを浮かべた。


「…フフ」


次の瞬間、彼は高笑いを始めた。


「ハハハハハハハ!」


三人の英雄は即座に警戒を強めた。


「今度は何がおかしいのよ?」EMIが拳を握りしめ、低い声で言った。


魔導士は両腕を誇らしげに広げた。


「フフ…ついに…真の目的が果たされたのだ!」


アレックスは眉をひそめた。


「…何を言っている?」


魔導士は指を鳴らした。すると、地面が血のような赤い光に包まれた。


「お前たち、本当にこの戦いに意味があると思っていたのか? 我々がここで勝利することが目的だと?」


祭壇の光が激しく点滅し、地面に刻まれた魔法陣が回転し始めた。


アリアが目を細めた。


「…嫌な予感がする」


「当然だ」魔導士は芝居がかった仕草で手を広げた。「なぜなら、今この瞬間、お前たちが目にしているのは――反物質爆弾の起動だ」


静寂が落ちた。


「…なに?」セレナが震える声で呟いた。


「そうだ」魔導士は、彼らの恐怖を楽しむようににやりと笑った。「これは…この世界を理解の及ばぬ技術。存在そのものを消滅させる、究極の兵器」


アレックスの背筋に冷たいものが走った。


「お前たち…世界を滅ぼすつもりだったのか?」


「いやいやいや」魔導士は指を振りながら、さらに邪悪な笑みを浮かべた。「これは、ただの始まりに過ぎない」


祭壇の振動が激しさを増し、暗黒の渦が空中に形成され始めた。


「この爆弾は、単にこの世界を消すため

のものではない! 次元の門を開く鍵なのだ!」


セレナ、EMI、アリアの血の気が引いた。


「…他の世界?」EMIが息を呑んだ。


魔導士の笑みが狂気を帯びる。


「そうだ。そして…我らが真の支配者が、今まさに到来しようとしている!」



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