闇の魔術師は両手を広げ、巨大なエネルギーの波動を自身の上に集め始めた。
—「アハハハハッ! ただの駒でしかない絶望を存分に味わうがいい!」
紫がかった闇のエネルギーが渦を巻き、空気が重く、圧迫感を増していく。
しかし、その時——
シュラッ!
闇の魔術師の体が硬直した。
何か冷たく、鋭い金属が彼の胸を貫いていた。
信じられないという表情で視線を下げると、そこには暗黒の剣が突き刺さっていた。
—「な…ん…だ…?」
ゆっくりと振り返ると、背後にザレクが立っていた。
彼は不敵な笑みを浮かべ、闇のエネルギーで作られた左腕と右脚を光らせていた。 それはセレナとの戦いの名残だった。
—「チッチッ… まさか自分が主導権を握ってるとでも思ったか?」
闇の魔術師は血を吐きながら問いかける。
—「ザ…レク… なぜ…?」
ザレクは剣をゆっくりと捻りながら、彼の苦しむ様子を楽しんでいた。
—「上からの命令さ。——」
そう言うと、もう一方の手に闇の祭壇を掲げた。 それはまさに、彼が起動しようとしていた装置だった。
—「ボスが、お前はもう用済みだってさ。」
闇の魔術師の顔が恐怖に歪む。
—「ま、待て! 俺はまだ——!」
ザシュッ!
ザレクは剣を引き抜き、闇の魔術師は膝をついた。 その目から光が消えていく。
—「哀れなもんだ。」
その瞬間、もう一人の存在が現れた。
コツ、コツ…
ガロッシュが闇の中から姿を見せる。 彼の身体は傷だらけで、ほこりまみれだった。 それはEMIとの激戦の証だった。
しかし、彼は笑っていた。
—「へっ… いい戦いだったぜ、EMI。」
彼は光の少女に挑戦的な視線を向けた。
—「いつかまた、リベンジしに来るぜ。」
EMIは拳を握りしめ、悔しさを滲ませながらも、何も言わなかった。
アリア、セレナ、アレックスは困惑していた。
—「…何が起きてるんだ?」アレックスが訊いた。
—「お前たちのボスって誰だ?」セレナがザレクを睨みつける。
—「何のために反物質装置を求めたんだ?」アリアが攻撃の構えを取る。
しかし、その時——
狂気じみた笑い声が響いた。
—「アハハハハハハ!」
闇の中の影が、まるで意思を持つかのように蠢き、収束していく。
そして、一人の女性がその中心から現れた。
彼女は異様な存在だった。
— 短い緑色の髪が先端で尖っている。
— 顔の一部を仮面で隠し、見えているのは片方の青い瞳のみ。
— その体つきは魅力的だが、着ている衣装はザレクと同様、どこか幼稚で奇抜なデザインだった。
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その場の空気が一変した。
彼女はアズラスに穏やかな表情を向けた。
—「あらぁ〜 アズラス、愛しい子。」
偉大なる黒獅子は即座に頭を下げた。
—「お会いできて光栄です、閣下。」
アレックスは背筋が凍るのを感じた。
この女は…一体誰だ…?
しかし、疑問に思う間もなく、彼女は闇の魔術師を見た。
笑顔が消えた。
—「…簡単な命令をしたはずよ?」
空気が一瞬で重くなる。
闇の魔術師は恐怖を感じた。
—「し、閣下… それは…」
彼女は面倒そうに目を細めた。
—「アレックスをこの戦いに巻き込むなって言ったでしょ?」
沈黙が降りる。
EMI、アリア、セレナの心臓が止まったかのように凍りつく。
なに…?
アレックスの目が大きく開かれる。
—「…どういう意味だ?」
彼女は彼をじっと見つめた。
そして、次の瞬間——
消えた。
気づいた時には、アレックスの目の前にいた。
速すぎる。
反応する間もなく、彼女の手がアレックスの顎を掴み、まじまじと顔を覗き込む。
アレックスは彼女を知らない。
しかし、彼女は——
狂気じみた笑いを響かせた。
—「アハハハハハハ!」
彼女の瞳は、異様なほど興奮に満ちていた。
—「まさか、こんな形で再会するなんてねぇ!」
彼女はアレックスの顔をさらに近づけ、口元に妖艶な笑みを浮かべる。
—「でも… 嬉しいわ。 すごく、すごくね。」
そして、声のトーンが一変した。
—「もし、あなただじゃなかったら—— 私が殺してたわ。アレックスの背筋に、死の予感が駆け抜けた。