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第[5X-1]章: 漆黒の獅子狩り


アズラスは軽蔑の眼差しでアレックスを見つめた。彼のサポートのオーラが強く輝いている。戦士でないとはいえ、その放つエネルギーは十分に目を引くものだった。


「貴様ごときが俺を惑わせるつもりか?」

漆黒の獅子は低い声で唸った。


アレックスはごくりと唾を飲み込んだが、足を止めなかった。

彼の狙いはただ一つ——アズラスの注意を自分に向けさせること。その隙に、EMI、アリア、セレナが連携攻撃の準備を整える。


獅子が一歩踏み出した瞬間、大地が震えた。

轟音とともにアズラスの姿が掻き消えたかと思うと、次の瞬間にはアレックスの目の前に現れていた。


「——速すぎる!」

アレックスの背筋に冷たい戦慄が走る。


アズラスは影を纏った鋭い爪を振り上げ、一撃でアレックスを切り裂こうとした。


「——今だ!」

アレックスが叫ぶ。


その瞬間、黄金の閃光とともにEMIが横に飛び出した。

彼女の拳が聖なる光をまとい、アズラスの爪を受け止める。


ズガァンッ!


衝撃で地面が砕け散ったが、EMIは一歩も引かず、そのまま獅子を押し戻した。


「もっと頑張らないと、私たちには勝てないよ!」

EMIは挑発するように微笑んだ。


アズラスは数歩後退し、目を細めた。

「ほう……ただの人間が、俺と互角にやり合えるとはな」


だが、彼の驚きは一瞬だった。


「——幻影の闇!」


アリアの声が響くと、突然、アズラスの周囲に漆黒の旋風が巻き起こった。

地面から無数の影の触手が這い出し、獅子の四肢に絡みつく。


「この程度で俺を捕らえたつもりか?」

アズラスは吼え、力を込めて束縛を引きちぎろうとした。


@@


「そんなことはしないわ。」

落ち着いた声が答えた。


アズラスは顔を向けた。そこには空中に浮かぶセレナがいた。

彼女の周囲には崩壊の魔力が渦巻き、眩い光を放っている。


「これで終わりよ、漆黒の獅子!」


セレナが手を伸ばすと、一瞬にして崩壊のエネルギーが猛威を振るい、アズラスへと殺到した。


獅子は怒りの咆哮を上げ、全力で拘束を破ろうとしたが、アリアの影の魔法が彼をしっかりと縛り付けていた。

その隙をつき、EMIが光の魔力でさらに動きを封じる。


息を荒げながら仲間を支援していたアレックスは、その光景を見つめた。


「…これで決まるはず…!」


しかし、その瞬間——アズラスの黄金の瞳が激しく輝いた。


「俺を甘く見るなァ!!」


暗黒のエネルギーが爆発し、影の拘束を粉砕するとともに、セレナの攻撃の一部をかき消した。

それでも、その毛並みには焼け焦げた跡が残り、部分的に崩壊の影響を受けた体がわずかに消えかけていた。


アズラスは地面に着地し、荒い息をつきながら四人を睨みつけた。


「フン…悪くない…」

獰猛な笑みを浮かべながら唸る。

「俺に本気を出させる奴が現れるとはな…何年ぶりだろうな?」


四人の全身が緊張に包まれた。


「…なに…?」

アレックスは背筋に冷たい感覚を覚えた。


アズラスの気が変化する。

漆黒の毛並みが深い蒼の輝きを帯び、たてがみが影の炎となって揺らめき始めた。

その瞳は、先ほどまでの黄金ではなく、まるで幽玄の太陽のように光り輝いている。


「——ここからが本当の戦いだ!!」


漆黒の獅子が咆哮する。


アレックスは拳を握りしめた。


「…みんな、これは想像以上に厳しくなりそうだ。」


アズラスの四肢が地を踏みしめた瞬間、大地が揺れ、暗黒の気が燃え盛る炎のように広がっていく。

彼の身体はまるで幻影のような輝きを帯び、そのたてがみは蒼黒い炎となって激しく燃え上がっていた。


アレックスは再び戦慄した。

仲間の力を強化したことで、すでに体力の限界が近い。それでも——ここで止まるわけにはいかない。


「アリア!影の牢獄を強化しろ!」

そう叫んだが、アリアが動くよりも早く——


アズラスが消えた。


次の瞬間、彼はアリアの目の前に現れた。


「遅い!!」


暗黒の爪が閃く。


「アリア!避けろ!!」

アレックスが叫ぶが、その一撃はあまりにも速い。


しかし——


黄金の閃光が舞い、EMIが間に割って入った。


「くっ…!!」


両腕を交差させ、防御の構えを取る。


——ドンッッ!!!


衝撃が炸裂し、EMIの体がまるで弾丸のように吹き飛ばされ、背後の石柱に激突。

石柱は砕け散り、瓦礫が舞う。


「EMI!!」

セレナが叫び、アズラスに向かって魔力を解放する。


崩壊の魔力が奔流となり、獅子へと襲いかかる。


しかし——


「無駄だ。」


アズラスはたてがみを揺らすだけで、エネルギーを弾き飛ばした。

そして、しなるような尾を一閃させる。


「くっ…!」


セレナは反射的に後退し、なんとか直撃を避けた。


「ちっ…!」

彼女は歯を食いしばる。


アレックスは奥歯を噛み締めた。

——こいつは、まだ余裕がある。


アズラスは彼に視線を向けた。


「人間、お前の力はもう限界だろう。」

冷徹な声が響く。

「顔を見ればわかる。消耗しきっている。こんな状態で、俺に勝てるとでも思うのか?」


アレックスは息を整えながら、疲れた笑みを浮かべた。


「…勝てるかどうかの問題じゃない…やるしかないんだよ。」


アリアが額から流れる血を拭い、再び立ち上がった。


「…簡単には…やられない…。」


少し離れた場所で、瓦礫の中からEMIが這い出してくる。

頭を軽くさすりながら、苦笑した。


「…今のはさすがに効いたな。でも…まだ終わってないよ。」


セレナは唇の端を拭い、じっとアズラスを睨む。


「…私たちが諦めるとでも思った? …だったら、本当に私たちを甘く見てるわね。」


アズラスは、しばし沈黙した後——


「……ほう。」


興味深そうに彼らを見渡す。



そして、獰猛な笑みを浮かべた。


「いいだろう……ならば、本物の狩りを見せてやる!!」


空気が一気に重くなる。


アズラスが深く息を吸い込むと——


——グォォォォォオオオオオオオオオッ!!!


咆哮が轟き、大地が震えた。


暗黒の嵐が吹き荒れ、戦場全体を覆い尽くす。


「くっ…!」


アレックスは反応する間もなく、影の嵐に飲み込まれた——。


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