アズラスは軽蔑の眼差しでアレックスを見つめた。彼のサポートのオーラが強く輝いている。戦士でないとはいえ、その放つエネルギーは十分に目を引くものだった。
「貴様ごときが俺を惑わせるつもりか?」
漆黒の獅子は低い声で唸った。
アレックスはごくりと唾を飲み込んだが、足を止めなかった。
彼の狙いはただ一つ——アズラスの注意を自分に向けさせること。その隙に、EMI、アリア、セレナが連携攻撃の準備を整える。
獅子が一歩踏み出した瞬間、大地が震えた。
轟音とともにアズラスの姿が掻き消えたかと思うと、次の瞬間にはアレックスの目の前に現れていた。
「——速すぎる!」
アレックスの背筋に冷たい戦慄が走る。
アズラスは影を纏った鋭い爪を振り上げ、一撃でアレックスを切り裂こうとした。
「——今だ!」
アレックスが叫ぶ。
その瞬間、黄金の閃光とともにEMIが横に飛び出した。
彼女の拳が聖なる光をまとい、アズラスの爪を受け止める。
ズガァンッ!
衝撃で地面が砕け散ったが、EMIは一歩も引かず、そのまま獅子を押し戻した。
「もっと頑張らないと、私たちには勝てないよ!」
EMIは挑発するように微笑んだ。
アズラスは数歩後退し、目を細めた。
「ほう……ただの人間が、俺と互角にやり合えるとはな」
だが、彼の驚きは一瞬だった。
「——幻影の闇!」
アリアの声が響くと、突然、アズラスの周囲に漆黒の旋風が巻き起こった。
地面から無数の影の触手が這い出し、獅子の四肢に絡みつく。
「この程度で俺を捕らえたつもりか?」
アズラスは吼え、力を込めて束縛を引きちぎろうとした。
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「そんなことはしないわ。」
落ち着いた声が答えた。
アズラスは顔を向けた。そこには空中に浮かぶセレナがいた。
彼女の周囲には崩壊の魔力が渦巻き、眩い光を放っている。
「これで終わりよ、漆黒の獅子!」
セレナが手を伸ばすと、一瞬にして崩壊のエネルギーが猛威を振るい、アズラスへと殺到した。
獅子は怒りの咆哮を上げ、全力で拘束を破ろうとしたが、アリアの影の魔法が彼をしっかりと縛り付けていた。
その隙をつき、EMIが光の魔力でさらに動きを封じる。
息を荒げながら仲間を支援していたアレックスは、その光景を見つめた。
「…これで決まるはず…!」
しかし、その瞬間——アズラスの黄金の瞳が激しく輝いた。
「俺を甘く見るなァ!!」
暗黒のエネルギーが爆発し、影の拘束を粉砕するとともに、セレナの攻撃の一部をかき消した。
それでも、その毛並みには焼け焦げた跡が残り、部分的に崩壊の影響を受けた体がわずかに消えかけていた。
アズラスは地面に着地し、荒い息をつきながら四人を睨みつけた。
「フン…悪くない…」
獰猛な笑みを浮かべながら唸る。
「俺に本気を出させる奴が現れるとはな…何年ぶりだろうな?」
四人の全身が緊張に包まれた。
「…なに…?」
アレックスは背筋に冷たい感覚を覚えた。
アズラスの気が変化する。
漆黒の毛並みが深い蒼の輝きを帯び、たてがみが影の炎となって揺らめき始めた。
その瞳は、先ほどまでの黄金ではなく、まるで幽玄の太陽のように光り輝いている。
「——ここからが本当の戦いだ!!」
漆黒の獅子が咆哮する。
アレックスは拳を握りしめた。
「…みんな、これは想像以上に厳しくなりそうだ。」
アズラスの四肢が地を踏みしめた瞬間、大地が揺れ、暗黒の気が燃え盛る炎のように広がっていく。
彼の身体はまるで幻影のような輝きを帯び、そのたてがみは蒼黒い炎となって激しく燃え上がっていた。
アレックスは再び戦慄した。
仲間の力を強化したことで、すでに体力の限界が近い。それでも——ここで止まるわけにはいかない。
「アリア!影の牢獄を強化しろ!」
そう叫んだが、アリアが動くよりも早く——
アズラスが消えた。
次の瞬間、彼はアリアの目の前に現れた。
「遅い!!」
暗黒の爪が閃く。
「アリア!避けろ!!」
アレックスが叫ぶが、その一撃はあまりにも速い。
しかし——
黄金の閃光が舞い、EMIが間に割って入った。
「くっ…!!」
両腕を交差させ、防御の構えを取る。
——ドンッッ!!!
衝撃が炸裂し、EMIの体がまるで弾丸のように吹き飛ばされ、背後の石柱に激突。
石柱は砕け散り、瓦礫が舞う。
「EMI!!」
セレナが叫び、アズラスに向かって魔力を解放する。
崩壊の魔力が奔流となり、獅子へと襲いかかる。
しかし——
「無駄だ。」
アズラスはたてがみを揺らすだけで、エネルギーを弾き飛ばした。
そして、しなるような尾を一閃させる。
「くっ…!」
セレナは反射的に後退し、なんとか直撃を避けた。
「ちっ…!」
彼女は歯を食いしばる。
アレックスは奥歯を噛み締めた。
——こいつは、まだ余裕がある。
アズラスは彼に視線を向けた。
「人間、お前の力はもう限界だろう。」
冷徹な声が響く。
「顔を見ればわかる。消耗しきっている。こんな状態で、俺に勝てるとでも思うのか?」
アレックスは息を整えながら、疲れた笑みを浮かべた。
「…勝てるかどうかの問題じゃない…やるしかないんだよ。」
アリアが額から流れる血を拭い、再び立ち上がった。
「…簡単には…やられない…。」
少し離れた場所で、瓦礫の中からEMIが這い出してくる。
頭を軽くさすりながら、苦笑した。
「…今のはさすがに効いたな。でも…まだ終わってないよ。」
セレナは唇の端を拭い、じっとアズラスを睨む。
「…私たちが諦めるとでも思った? …だったら、本当に私たちを甘く見てるわね。」
アズラスは、しばし沈黙した後——
「……ほう。」
興味深そうに彼らを見渡す。
そして、獰猛な笑みを浮かべた。
「いいだろう……ならば、本物の狩りを見せてやる!!」
空気が一気に重くなる。
アズラスが深く息を吸い込むと——
——グォォォォォオオオオオオオオオッ!!!
咆哮が轟き、大地が震えた。
暗黒の嵐が吹き荒れ、戦場全体を覆い尽くす。
「くっ…!」
アレックスは反応する間もなく、影の嵐に飲み込まれた——。