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第 (5x-7) 章: 私を寝かせてくれませんか?

朝日がようやく地平線に昇り始めた頃、アリアは長い紫の髪をなびかせながら、いたずらな笑みを浮かべて屋敷の廊下を静かに進んでいた。


この瞬間をずっと待っていた。


母から「未来の妻として、婚約者には優しく、愛らしく接するべき」と教えられてきた。アレックスはまだ自分を認めていないが、それでも構わない。焦る必要はない。時間をかければいいのだ。…そして、チャンスを最大限に活かせば。


アレックスの部屋の前に到着すると、彼を優しく起こすための「おはよう~」を用意し、静かにドアを開けた。


だが、部屋の中で彼女が目にしたものは、まったく予想外だった。


ベッドの横、部屋の大部分を占領する巨大なピンクの毛玉――


アズラス


あの村で戦った巨大な獅子。


あの闇の魔術師との戦いの後、アレックスのもとに留まることを決めた獣。


だが、キャンプに到着してから姿を消していたはずのアズラスが――


今、アレックスの寝室にいる!?


アリアの目が見開かれる。


— 「きゃああああああああっ!!!」


その悲鳴は爆発のように部屋中に響き渡った。


安らかに眠っていたアレックスは、驚きのあまり飛び起き、危うく天井に頭をぶつけるほどだった。


一方、アズラスは四肢を広げたまま飛び起き、目を輝かせながら混乱した様子で辺りを見回した。まるで、昼寝を邪魔されたことに抗議するかのように。


しかし、本当の惨事はその直後に起こった。


パニックに陥ったアリアは足を滑らせ、バランスを崩し、見事に転倒――


アレックスの上に。


二人はベッドの上を転がり、気づけば何とも言えない体勢に。


— 「う、うわぁ……」 アリアの顔は一瞬で真っ赤に染まった。


アレックスは呆れ顔で、完全に彼女の下敷きになったままため息をついた。


— 「…アリア」


— 「…な、なに?」


— 「どいてくれないか?」


— 「だ、だって、私のせいじゃ……! そもそも、部屋に巨大な獅子を入れて寝てる君が悪いでしょ!」


— 「それとこれとは関係ないだろう」


二人が言い合いをしていると、突然ドアが勢いよく開いた。


— 「何が起きてるの!?」


エミ、セレナ、そして数人の使用人たちが、騒ぎを聞きつけて駆け込んできた。


屋敷中がすっかり目を覚ましていた。


沈黙。


部屋に入った全員が、アレックスとアリアの「状況」を見つめ、微妙な空気が漂った。


セレナは目を細め、


エミは腕を組み、厳しい視線を向けた。


そしてアズラスは――相変わらず状況を理解せず、大あくびを一つ。


— 「……見なかったことにするわ」 セレナは静かにドアを閉じた。


— 「ありがとう!!」 アリアは床の上(まだアレックスの上)から叫んだ。


だが、その直後――


— 「ちょっと待った!!!」


今度はエミがドアを乱暴に開け、怒りの形相でアリアを指差した。


— 「アリア! 一体何をしてたの!?」


— 「ち、違うの!! ただ、優しく起こしてあげようと思っただけで…!」


— 「"優しく" ねぇ……」 エミの目がさらに細まる。


— 「えっと……ちょっとだけ、やりすぎたかも……?」 アリアは視線を逸らしながら呟いた。


— 「はぁ……」 セレナは呆れたようにドアの枠にもたれかかった。


— 「むしろ、エミと私もこういう風になりたいわね」


— 「ぶふっ!!?」


セレナの突然の爆弾発言に、エミは思わずのけぞった。


— 「な、何を言い出すのよ、セレナ!?」


— 「思ったことを言っただけよ」 セレナは微笑み、頬を少し染めながら言った。


二人が言い争いを始めたその時――


グルルルルルル……


低く、重い唸り声が響いた。


全員の視線が、一つの方向に向く。


アズラス。


巨大なピンクの獅子は相変わらず床に横たわりながら、大あくびをし、のんびりと体勢を整えて再び寝息を立て始めた。


そして、ようやく皆の思考が現実に追いついた。


— 「ちょっと待て!?」 エミは剣の柄に手をかけた。 「なんで巨大な獅子がここにいるの!?」


— 「それより……どうやって入ってきたの?」 アリアは混乱しながら尋ねた。


— 「扉からは無理でしょ……」 セレナはドアを見ながら呟く。


— 「窓も小さすぎるし……」


三人は不安げに視線を交わす。


しかし、当のアズラスはそんな彼女たちを完全に無視し、悠々と丸まって再び寝始めた。


— 「……俺にも分からない」 アレックスはため息をつきながら、ベッドの上に座り直した。 「昨夜寝た時にはいなかった。でも、起きたらいたんだ」


— 「……意味が分

からない」 エミは警戒を解かずに呟いた。


— 「もう何もかも意味不明よ、エミ」 セレナはこめかみを押さえながら肩をすくめた。


アリアは腕を組み、まだ納得がいかない表情で巨大な獅子を睨んだ。


だが、最大の問題は――


「どうやって外に出すか?」 だった。


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