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Capitulo 2: 戦士の王女

第5X-9章: 難しい服選び


朝の陽光が公爵アラリックの邸宅の窓から差し込み、黄金色の輝きで室内を照らしていた。まだ少し眠気の残るアレックスは、目の前に並べられた豪華な衣装の数々をぼんやりと眺めていた。彼を囲むように、アリア、エミ、セレナの三人が立っており、王城での大宴会に向けて準備を整える気満々だった。


「いい? アレックス、あなたをちゃんとした姿に仕上げる必要があるのよ」

腕を組んだアリアが、紫色の髪を輝かせながら真剣な表情で言った。


「なんでそんなに騒ぐんだ…」

アレックスはため息をつきながら、面倒くさそうに服の山を眺める。

「動きやすい服でいいだろ?」


「ダメ!」


三人は見事に声をそろえた。


アリアは黒地に銀の刺繍が施されたスーツを取り出す。

「これが完璧ね。上品で落ち着いていて、品格もあるわ」


「つまらないわね」

セレナがいたずらっぽく微笑みながら口を挟む。

「彼の個性に合わないわ。もっと色のあるもののほうがいいんじゃない?」


そう言いながら、彼女は深紅のアクセントが入った衣装を取り出した。短いマントが背中を飾る、どこか威厳を感じさせるデザインだった。


「これならもっと印象的に見えるわよ」


「印象的って… 貴族の嫌味な男に見えるってことか?」

エミが舌打ちしながら別の衣装を持ち上げた。

「もっと英雄らしくて、私たちの仲間にふさわしいものがいいでしょ」


アレックスはエミが差し出した服をじっと見る。

それは白と紺の配色で、胸元には金色の紋章が輝いていた。


「…軍服にしか見えないな」


「その通りよ!」

エミは誇らしげに言った。


「軍人みたいに見えるのは勘弁だ」


「じゃあ、どれにするの?」

アリアが少し苛立った様子で問いかける。


アレックスは目の前の選択肢を見渡し、どれを選んでも誰かしらに文句を言われるのが分かっていた。重いため息をつく。


「どれでもいい」


その瞬間、三人は互いに目を合わせ、次の段階に進む合図をした。

エミとセレナはアレックスを更衣室へと押し込み、アリアは指示を飛ばす。


「シワをつけないように気をつけて!」


「おい、いつからお前らが決めることになったんだ?」


「あなたが服に興味ないって知ってるからよ」


次々と衣装を着せられ、却下されていくアレックス。

いくつかは似合っていたが、三人は何かしら理由をつけてダメ出しをした。

そして、一部の衣装はアレックスにとって不快でしかなかった。


結局、長い服選びの末に、黒地に銀の刺繍が施されたスーツに決定した。


「ほらね、結局私の選んだものが一番だったでしょ?」

アリアが誇らしげに微笑む。


「お前が試着を強要したからだろ…」


アレックスは、この服選びにどれほどの時間を費やしたかを考え、呆れ果てていた。

しかし、試練はまだ終わっていなかった。


突然、小さな姿のアズラスが彼の膝の上に飛び乗る。

青いリボンが不器用に結ばれており、その姿にアレックスは目を疑った。


「お前… 何をされたんだ?」

アレックスは驚きながら尋ねる。


「私もオシャレをしろと言われて…」

アズラスはうなだれ、エミとセレナは満足げに微笑んでいた。


「かわいいじゃない!」

セレナが嬉しそう

に抱きしめる。


「やめろ! 人間め、息ができん!」


アレックスは深いため息をつく。

服選びですらこの有様なら、宴会はさらに厄介なことになるに違いなかった。


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