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第61章: La capital y la mujer cansada

王都への旅は長かったが、決して不快なものではなかった。アラリック公爵が手配した馬車は豪華で広々としており、一行は快適に移動することができた。


アレックスはアリア、エミ、セレナと同じ馬車に乗り、別の馬車には護衛の騎士や使用人たちが乗っていた。小さな姿のアズラスはアレックスの膝の上でくつろぎながら、馬車の揺れを楽しんでいた。


アリアは目を輝かせながら、王都の地図を広げ、興奮気味にいくつかの興味深い場所を指し示した。


「訪れるべき場所がたくさんあるの! 珍しい品が並ぶ市場に、色とりどりの花が咲き誇る王宮庭園、それにおしゃれなカフェも……! あ、それから商業地区では王国で最高級の布や宝石が手に入るのよ!」


彼女の目は好奇心で輝き、さらに少しだけ視線をアレックスに向けながら、何気ない口調で付け加えた。


「でも、デートするなら川沿いの公園や、お城が見えるテラスがぴったりね。夕日を眺めるには最高の場所よ~」


「おい……」


アレックスが反応する前に、エミが呆れたように腕を組んだ。


「はぁ……! みんなの前でそんなこと言わないで! 王都にはデートじゃなくて、もっと大事な用事があるでしょ!」


得意げな表情を浮かべながら、エミは自分の地図を広げ、別の場所を指さした。


「本当に行くべき場所は《大戦記博物館》よ! そこには世界中の戦争の記録が残されていて、最強の英雄たちの遺物や、歴代の召喚者たちの像まで展示されているの!」


「それは……確かに興味深いな。」


アレックスは頷いた。


「でしょ? 絶対気に入ると思った!」


エミは満足げに微笑んだが、すぐにセレナが茶目っ気たっぷりの笑みを浮かべながら口を挟んだ。


「ふふ~ん、それよりも、エミと私がロマンチックなムードに浸れる場所はあるのかしら?」


彼女の大胆な発言に、エミは思わずむせた。


「な、何言ってんのよ!?!?」


「え~、本当は嬉しいくせに~?」セレナは冗談っぽく続けた。「静かな夜、二人きり……月明かりが君の瞳に映るなんて、素敵だと思わない?」


その言葉に、アリアは自分がアレックスと一緒にいるところを想像してしまい、顔を真っ赤に染めた。


「~~~っ!! そんな恥ずかしいこと言わないでよ!!」


恥ずかしさに耐えきれず、アリアはセレナと一緒に地図で「デートに最適な場所」を探し始めた。


その間、アレックスとエミは顔を真っ赤にして黙り込んだ。


「そ、そんなこと絶対にしない!」


「そ、そうよ! 変なこと言わないで!」


焦った様子で否定する二人だったが、エミは小さな声でボソリと呟いた。


「だって……私は主人公なんだから……」


アレックスは彼女をちらりと見たが、あえて何も聞かないことにした。



---


王都への到着


数時間の旅を経て、ついに王都へと到着した。


その壮観な景色に、誰もが息をのんだ。


巨大な白い石の城壁がそびえ立ち、その門をくぐると、一行の目の前に広がったのは活気あふれる王都の街並みだった。


石畳の道は磨かれ、建物は高く荘厳で、行き交う人々の服装も格式を感じさせるものばかりだった。


「……すごい。」


エミは圧倒されながら建築の細部を眺めた。


「すごいどころじゃないわ。」アリアは微笑んだ。「ここが王国の誇り、《王都》よ。」


一方、セレナは周囲の人々を観察していた。


「……でも、歓迎ムードとは言えないみたいね。」


アレックスもそれに気づいた。


確かに、市民や商人たちは彼らに敬意と好奇心の入り混じった視線を向けていたが、中には小声で何かを囁き合い、明らかに警戒している者たちもいた。


そして、一行が王都の中央広場に到着すると、すでに待機していた騎士たちが迎え入れた。


「王都へようこそ。」


騎士の一人が厳かな声で告げた。


「国王陛下のご厚意により、祝賀会までの間は貴族の屋敷に滞在していただきます。」


騎士の中には、彼らに敬意を示す者もいたが、明らかに歓迎していない者たちも混ざっていた。


アレックスは王都の美しさに感動しながらも、この場所が決して安住の地ではないことを感じ取った。




賑やかな王都を抜けた一行は、彼らを迎えるために用意された貴族の邸宅へと案内された。


その建物は堂々たるもので、白い大理石の優雅な構造、広々とした窓、そして手入れの行き届いた庭園が広がっていた。


到着すると、騎士たちは道を開け、主人の登場を待った。


屋敷の入り口には、一人の女性が腕を組んで立っていた。


背が高く、すらりとした体型。


その豊かな曲線と気品ある雰囲気からすれば、魅惑的で妖艶な女性にも見えたが──


その表情が、あまりにも疲れ切っていなければ、の話である。


彼女の肌は透き通るように白く、わずかに青白ささえ感じさせる。


長く銀色に輝く髪は無造作に肩へと垂れ、ところどころ絡まっていることから、長い間まともに梳かしていないことが伺えた。


何より目を引いたのは、その琥珀色の瞳の下に刻まれた深い隈。


まるで何ヶ月も眠っていないかのような疲労感が、全身からにじみ出ていた。


それでも、身に纏う衣装は完璧だった。


黒を基調とした上品なドレスは体にぴったりとフィットし、縁には金色の刺繍が施されている。


控えめながらも気品ある胸元の開き、漆黒の手袋が彼女の高貴さを際立たせていた。


しかし、アレックスが最も気になったのは──


彼女の銀髪の間から覗く、鋭く尖った耳だった。


「……エルフ?」


思わず小声で呟いたアレックスをよそに、女性は額に手を当て、深々とため息をついた。


「……まあ、一応歓迎するわ。私の屋敷へ」


その声は、まるで話すことすら億劫だと言わんばかりに、ゆっくりとした調子だった。


礼儀正しいアリアが一歩前に出て、丁寧にお辞儀をする。


「お迎えいただき、感謝いたします。レディ──」


「シエナ」


女性──シエナは欠伸を噛み殺しながら名乗る。


「シエナ・ヴァンシア。ここの領主であり、この屋敷の持ち主。……でも、正直なところ、今はそんな肩書きどうでもいいわ」


彼女は片手で目を擦りながら、明らかに客人の相手よりも睡眠を優先したい様子だった。


アレックスは、つい気になってしまい口を開く。


「……失礼ですが、最後にちゃんと眠ったのはいつですか?」


シエナは疲れた目でアレックスを見つめ、皮肉げに微笑んだ。


「……三ヶ月目を過ぎてからは、数えるのをやめたわ」


アレックスの背筋に冷たいものが走った。


どうしてそんな状態で今も立っていられるのか、理解できなかった。


彼がさらに質問しようとした瞬間、シエナは再び大きく欠伸をし、踵を返した。


「……さあ、中へ。部屋を案内するわ……その後で……私は……寝る……かも……」


そう言いながら、今にも倒れそうな足取りで歩き始める。


屋敷へと入っていく彼女の背中を見つめながら、アレックスは思った。


──この女性には、何か特別な事情がありそうだ。


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