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第63章: 首都の朝の散歩


太陽がまだ完全に昇る前に、アレックスは目を開けた。


彼は静かに天井を見つめながら、シエナの言葉を思い返す。


「お前…興味深い気配を持っているな。」


ため息をつく。


昨夜の奇妙な会話の後、少女たちは休むことにした。アリアはアレックスと一緒に寝ると主張したが、セレナが彼女を部屋から引きずり出した。貴族の少女は、「婚約者なら一緒に寝てもいいはずよ!」と小声で抗議していた。


隣に視線を向けると、アズラスがチビの姿のまま、大きな枕の上でぐっすり眠っていた。


ピンクの小さな獅子は、セレナからもらった肉の形をしたぬいぐるみを噛んでおり、美味しい夢を見ているようだった。アレックスは思わず微笑む。


そっとベッドを抜け出し、静かに服を着替えると、屋敷の廊下へ出た。


「今のうちに、首都を見て回るか。」


そう呟くと、まだ眠る仲間たちを残し、一人で外へ向かった。



---


首都の街はすでに活気づき始めていた。


商人たちは屋台を準備し、パン屋は焼きたてのパンの香りを漂わせ、旅人たちが続々と到着していた。


アレックスは目的もなく歩きながら、町並みや人々の生活を観察する。


今まで訪れた村とは異なり、この都市には豪華さと絶え間ない活気が満ちていた。広く整備された通り、高級な店、そして異国の品々で溢れた市場。


ふと、遠くの建物に大きな看板が掲げられているのが目に入った。


そこには、青い髪の少女の肖像が描かれていた。


「…王女か?」


彼は思い出す。


彼らが招待された宴は、王女の誕生日を祝うものだった。


「まさか、こんなことになるとはな…」****


と呟きながら、彼は歩き続ける。


しかし、次第に違和感を覚え始めた。


通行人の視線が、時折こちらに向けられている。敵意は感じないが、まるで観察されているような…


「……?」


何かがおかしい。


「城への招待のせいか…? それとも別の理由が?」


疑問を抱きつつも、彼は散策を続けた。



---


しばらく歩いた後、アレックスは一軒の大きな石造りの建物の前に立ち止まった。


木製の看板が入口にかかっている。


「冒険者ギルド…か。」


彼はぼんやりと看板を読み上げる。


なぜか、この場所に強く惹かれた。


初めて一人で依頼を受けた頃のことを思い出したからか、あるいは単なる好奇心か。


彼はふと、ポケットから小さな魔法カプセルを取り出した。


これは以前、アリアからもらったものだった。彼女は「冒険者にとって非常に便利な道具」だと言っていたが、実際に試したことはなかった。


好奇心に駆られ、彼はそれを軽く指で叩いた。


次の瞬間、カプセルが輝き、彼の現在の服が消え、代わりにかつての冒険者装備が姿を現した。


黒い旅装、強化された防具、そして顔を隠すための仮面。


「…想像以上に便利だな。」


彼は自分の姿を確認しながら呟く。


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「アリアに感謝しないとな…。」


だが、彼女のことだ。おそらくお礼に「キス」を要求してくるだろう。


その考えに、彼は小さく笑う。


「さて、集中しよう。」


そう言い聞かせ、彼はギルドの扉を押し開けた。



---


ギルドの中は賑わっていた。


冒険者たちはテーブルで酒を酌み交わし、掲示板の依頼を確認し、任務の話に花を咲かせている。


だが、彼の目を引いたのは、一人の若きゴブリンの受付嬢だった。


彼が今まで見たゴブリンとは違い、彼女の姿には洗練された雰囲気があった。


――透き通るようなエメラルド色の肌。


――活気に満ちた黄金の瞳。


――白く短い髪に、小さな金の飾りがついている。


彼女の服装も興味深い。


居酒屋の給仕服とギルド職員の制服を組み合わせたようなデザイン。


暗いスカートに、白いブラウスの上にきっちりとしたベスト。


小さな丸眼鏡をかけたその姿は、どこか知的な雰囲気を漂わせていた。


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彼女の見た目に反して、冒険者たちは彼女ととても仲が良いようだった。


「リナさん、もう一つ注文お願いします!」


「ありがとう、リナ!料理、美味しかったよ!」


彼女は微笑みながら忙しそうに動き回り、料理を運んだり、冒険者たちの質問に答えたりしていた。


そんな中、彼女の目がアレックスと合った。

笑顔はそのままだったが、彼の姿を見て表情にわずかな興味が浮かぶ。


ためらうことなく、彼の方へ歩み寄った。


「おや、新しい顔ね…しかも面白い格好してるじゃない。」

彼女は腰に手を当て、楽しげな視線でアレックスを眺めた。

「もしかして、孤高の賞金稼ぎかしら?」


アレックスはすぐには答えず、ただ彼女を見つめた。


「ふーん…そんな感じね。」リナはクスリと笑った。

「自己紹介が遅れたわね!私はリナ。ギルドの受付嬢兼、この場所を混乱の渦にしないよう管理する責任者よ。」


彼女は自信たっぷりに手を差し出した。


アレックスは一瞬その手を見つめた後、しっかりと握り返した。



「アレックス。」


それだけ言うと、リナの笑みはさらに深まった。


「いいわね、アレックス。で、今日はギルドに何の用?仕事?情報収集?それとも、私の素晴らしさをこの目で確かめに来たの?」


その軽快な口調に、アレックスはわずかに眉を上げた。


どうやら、ギルド訪問は思った以上に面白いものになりそうだった。


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