ついに、大きなイベントの日がやってきた。
荘厳な王宮の城が目の前にそびえ立ち、その塔は静かな守護者のように空に向かって伸びていた。入り口は黄金の松明で照らされ、温かく上品な雰囲気を醸し出していた。アレックスはアズラスに乗って到着した。アズラスがどうしても彼を乗せていくと言い張ったのだ。
「やっぱりアズラスはすごいな!」アレックスはアズラスの頭を軽く叩きながら言った。
「もちろんさ。」アズラスは誇らしげに胸を張った。
しかし、ライオンの誇らしげな表情は、入り口に近づいた瞬間に消えた。
「申し訳ありませんが、ペットはご遠慮ください。」と、門番がきっぱりとアズラスの前に立ち塞がった。
「ペットだと?」アズラスは怒りのこもった声で唸った。
「落ち着け、アズラス。」アレックスはアズラスの背から降りながら言った。「すぐ戻るから。」
アズラスは鼻を鳴らし、「誰が本当の英雄か見せてやる」などとぶつぶつ言いながら立ち去った。
アレックスが中に入ると、そこは豪華で眩い光景が広がっていた。金色のシャンデリアが大広間の隅々まで照らし、オーケストラの柔らかい音楽が空気を包んでいた。
突然、声が響き渡った。
「皆さま、お待ちかね!アラリック公国を救った英雄たちです!」
会場は歓声と拍手で包まれた。
最初に紹介されたのは、セレナ、「紅薔薇」。恐るべき崩壊の力を持つ彼女にふさわしい名だった。
次に紹介されたのは、アリア、「優雅なる影」。幽霊のような影を召喚する魔法で名を馳せていた。
最後に最も大きな歓声を浴びたのは、エミ、「輝ける剣」。彼女の戦場での偉業は人々に強い印象を残していた。
三人は少し気まずそうに頭を下げ、過度の注目に困惑している様子だった。しかし、彼女たちが最も戸惑ったのは、アレックスの名前がまったく呼ばれなかったことだった。
「なんでアレックスのことは何も言わなかったの?」アリアが不満そうに小声で言った。
「きっと、あまり活躍してないと思われたんじゃない?」セレナが苦々しくつぶやいた。
エミは無言のまま、明らかにその扱いに不満を感じていた。
一方で、アレックスは胸をなでおろしていた。
「少なくとも、俺はあの子たちみたいに囲まれなくて済むな…」と、貴族たちが英雄たちに群がる様子を見ながら思った。
しかし、その安堵はすぐに罪悪感に変わった。アズラスの姿が脳裏に浮かんだからだ。彼は今も外で、一人で拗ねているはずだった。
「不公平だよな…」アレックスは心の中でつぶやいた。「アズラスだって、たくさん活躍したのに…」
その頃、大広間の隅で、一人の人物がアレックスを見つめていた。
黒いマントを羽織り、どこか不気味な雰囲気を漂わせるその姿は、群衆の中でも異様に目立っていた。
「なるほど…こいつが、あの奇妙なエネルギーに包まれた少年か…」その人物は不敵な笑みを浮かべ、つぶやいた。「これは面白くなりそうだ…」
貴族たちに囲まれて身動きの取れない三人を横目に、アレックスはひっそりと軽食のテーブルへと向かった。
「やっと一息つける…」アレックスはそう思いながら、軽いワインの入ったグラスを手に取った。
その時、突然ホールにざわめきが広がった。
「ラッパの音…?」
厳かなファンファーレが響き渡り、場内の視線が一斉に入り口へと向けられた。
「国王アウグスト陛下、そして王国の王女殿下のご入場です!」と、司会者が威厳のある声で告げた。
最初に入ってきたのは、金色の刺繍が施された荘厳なマントを羽織った国王だった。その堂々とした姿は、まさに王の威厳を象徴していた。
だが、アレックスの目が釘付けになったのは、その隣に立つ人物だった。
「…キヨミ?」
彼女は純白のドレスをまとい、そのシルエットは完璧に彼女の体に沿っていた。流れるようなシルクの生地は片脚を美しく露わにし、優雅さと気品を引き立てていた。
アレックスの記憶の中にある、森で出会ったあの無造作な青髪のキヨミとはまるで別人だった。あの時の荒々しさはどこへやら、今の彼女はまさに「王女」の風格そのものだった。
「何がどうなってるんだ…?」アレックスは思わず呟いた。
キヨミは優雅に歩みを進め、にこやかに貴族たちへ手を振っていた。しかし、その瞳がアレックスを見つけた瞬間、彼女の微笑みは鋭く、挑発的なものに変わった。
「お前、まさか…」アレックスは冷たい汗を感じた。
—彼女を知ってるの? —隣から声がした。
アレックスが振り向くと、好奇心に満ちた表情のセレナが立っていた。
—ああ...でも彼女が王女だとは知らなかった。
—へえ? —セレナは片眉を上げた—。で、どうやって彼女と知り合ったの?
—まあ...ちょっとした複雑な出会いがあってな。
サロンの向こう側でのキヨミのいたずらっぽい笑みが、これがまだ終わりの始まりであることをアレックスに悟らせた。
---
王アウグストゥスがキヨミと共に一行に近づいてきた。彼の威厳ある存在感は、周囲の注目を一瞬で引き寄せた。
—今宵はよくお越しくださいました —王はエミ、アリア、セレナに向かって穏やかに微笑んだ—。アラリック公爵領を守ってくれたあなた方の功績は実に素晴らしい。
次に彼の視線はアレックスへと向けられた。
—そして...君も —その声は先ほどよりも乾いた冷淡なものだった。
アレックスは気にしなかった。仲間たちにばかり注目が集まるのはいつものことだ。軽くうなずいて済ませた。
それよりも気になったのは、キヨミが相変わらず自分を見つめていることだった。その嘲るような笑顔は、彼の不快感を楽しんでいるかのようだった。
アレックスが何か言おうとしたその時、アリアが突然前に出た。
—陛下、自己紹介させてください —アリアは堂々とアレックスの隣に立ち、彼の腕をぎゅっと掴んだ—。私はアリア・フォン・アラリック... そしてアレックスの許嫁です。
その瞬間、空気が凍りついた。
—な、なに!? —エミが驚愕の声を上げ、目を大きく見開いた。
—許嫁? —キヨミが好奇心を含ませた声で繰り返した。彼女の笑みはさらに不敵なものへと変わった。
—そ、そんなの嘘よ! —エミが思わず叫んだ—。アリアだけが許嫁じゃない!
—へえ? —キヨミの笑みはさらに深まり、悪意すら漂わせるようになった—。面白くなってきたわね。
—じゃあ、エミがアレックスと結婚するなら —セレナが茶化すように言いながらエミの背中に抱きついた—、私も彼と結婚するから、エミとシェアしても構わないわよ?
—えええっ!? —エミとアレックスが同時に叫んだ。
エミの顔は真っ赤になり、アレックスはアリアに腕を掴まれ、セレナにからかわれ、混乱と疲労にため息をついた。
その様子を見ていたキヨミは、まるで観劇を楽しむかのように微笑んでいた。
—ふふっ、なるほどね... 君の人生、意外と面白いじゃない —と軽く笑いながら言った。
これまで黙っていた王が、ついに厳かな声で咳払いをした。
—いい加減にしなさい —王は威厳のある声で言った—。ここは王宮の舞踏会だ。酒場の集まりではないぞ。
その言葉で少女たちはすぐに静かになったが、互いに火花を散らすような視線は止まなかった。
王が立ち去ると、キヨミは優雅にアレック
スへと歩み寄り、突然耳元で囁いた。
—次に戦う時は、前より強くなっていてね...あまりに簡単に死なれたら、つまらないから。
その警告めいた言葉に、アレックスの背筋は冷たいものが走った。
—なんか...ますます面倒なことになりそうな気がする —とアレックスは小声でつぶやいた。