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Capítulo 28: 「休日の一日」



空は晴れ渡り、穏やかな外出にぴったりの日だった。

ユウとカナデは、カフェの仕事が休みの日を利用して、ショッピングモールへ向かって歩いていた。


ユウは濃紺の長袖シャツの首元を少し開け、黒いジーンズと白いスニーカーを合わせていた。

いつものように無造作に乱れた黒髪が、彼の気楽な雰囲気を際立たせている。


一方のカナデは、華やかでありながら上品な服装を選んでいた。

白いレースが肩にあしらわれたゆったりとした袖のブラウスに、ミッドナイトブルーのスカートを合わせており、そのスカートは膝上までの丈で、彼女の長い脚を引き立てていた。

オレンジ色の小さなショルダーバッグが肩にかかり、同じ色のヘアバンドが彼女の濃紺の長い髪を飾っている。

その髪は腰まで流れる滝のように美しく、太陽の光の下で彼女の紫色の瞳が輝いていた。


歩きながら、カナデは楽しそうに話していた。


「ねぇ、覚えてる?初めて一緒に出かけた時のこと」

カナデは優しく微笑みながら言った。

「あの時、私…ちょっと緊張してたんだよね…」


ユウはうなずいたが、正直なところ彼女の話はあまり耳に入っていなかった。

彼は、どうしてもカナデから目が離せなかった。

風に揺れる彼女の髪、話すたびに柔らかく弧を描く唇…


「俺たち、カップルに見えるのかな?」

ふと、そんな考えがユウの頭をよぎった。


悪くない、そう思う反面、わずかな不安が胸に広がる。

もし、そう見えるなら…それはつまり、カナデに気持ちを伝えるチャンスがあるってことなのか?

それとも…彼女はまだ、元の世界のアニメの主人公に恋をしているのだろうか?


そんな考えに囚われているうちに、ユウはカナデが立ち止まっていたことに気づかなかった。


「…ユウ?」


カナデが不安そうに声をかけた。

ユウがじっと自分を見つめているのに気づいた彼女の顔が、ほんのり赤く染まる。


「何かあったの…? それとも…今日の私、変かな?」


その声には、不安がにじんでいた。

今日の自分の服装がユウに気に入られなかったのではないかと、どこか心配しているようだった。


「えっ? いや、そんなことない!」

ユウは慌てて答えた。自分の顔が熱くなっていくのを感じる。

「すごく…すごく、綺麗だよ」


カナデの瞳がわずかに驚いたように見開かれたが、すぐに優しい笑顔が浮かんだ。


「…本当に?」


「うん…すごく、似合ってる」


しばらくの間、二人は無言で見つめ合った。


「…ユウ」


「…カナデ」


静けさが辺りを包み、まるで時間が止まったかのようだった。

ユウの胸の鼓動が早くなる。

カナデは何か言いかけたようだったが、その瞬間──


「おい、危ないぞ!」


近くを通り過ぎた自転車のクラクションが、その静寂を破った。


二人は慌てて身を引き、カナデは胸に手を当てながら照れくさそうに笑った。


「…ぼーっとしてると危ないね」


「…だな」

ユウは顔の火照りがまだ冷めないのを感じながら答えた。


再び歩き始めたユウは、先ほどの一瞬が何か特別な意味を持っていたのではないかと考えずにはいられなかった。

もしかして、カナデも自分のことを…?


ショッピングモールの入口に差し掛かったとき、聞き慣れた声が響いた。


「ユウー!カナデー!」


元気いっぱいの声で手を振るヒカリの姿があった。


今日の彼女のコスプレは、いつもの「ミユキ」とは違い、より派手なスタイルだった。

黒を基調としたゴシックドレスには、濃い紫のレースが施され、スカートは不規則に尖った裾が特徴的で、どこか妖艶な雰囲気を醸し出していた。

普段は下ろしている白髪も、今日は高い位置でポニーテールに結ばれ、黒いリボンが飾られていた。


だが、最も目を引いたのは、左目を覆う黒い眼帯だった。

露出した右目の鮮やかな赤が、さらに印象を強めていた。


「…そんなに大声出さなくても」

ユウはこめかみを押さえながら、ヒカリの存在感に苦笑した。


その隣には、リカが無言で立っていた。

黒く艶やかな髪が太もものあたりまで流れ落ち、冷たい緑の瞳がユウとカナデに向けられていた。


リカの服装はシンプルながらも洗練されていた。

胸元に控えめなデザインが施された白い長袖のTシャツに、体のラインを引き立てる黒いスキニーパンツ。

肩には黒のレザージャケットを羽織り、腰にはいつもの愛用の刀が鞘に収まっていた。


リカの視線はまずユウへ、その後カナデへと移り、二人の近さに僅かに表情を曇らせた。


その視線に気づいたカナデは、迷うことなくリカを見返した。


二人の視線が交わり、空気が張り詰めた。


まるでショッピングモールの喧騒が消え去り、二人だけの世界が広がったかのようだった。

冷たく揺るがぬ目をしたリカに対し、カナデは穏やかだが自信に満ちた微笑みを返した。


緊張感が漂う。


「…はぁ、また始まった」

ユウは背筋に冷たいものが走るのを感じた。


その空気をまるで感じ取

っていないヒカリが、無邪気に二人へ駆け寄った。


「さぁさぁ!今日は楽しもうよ!」


その後ろで、カナデとリカは依然として視線を交わしたまま動かない。


「…今日は長い一日になりそうだな」

ユウはそう心の中でつぶやいた。


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