復讐と遂げたルキアさんは、花屋を後にし、どこかに去ってしまった。そんなルキアさんを追いかけるために、混乱に陥っている街の中を駆け回り、僕は一旦、ルキアさんの屋敷に戻ることにした。
「屋敷に戻ってきたが……。ルキアさんは、どこに行ったんだ?」
屋敷の中をひたすら歩き回っていると、裏庭から笑い声が聞こえた。僕はすぐさま、裏にはへ向かった。
「姉さん。俺は、あいつを殺せなかった。あの場で殺してしまえば、俺は俺ではなくなりそうだったから。ははっ……」
裏庭に着くと、ルキアさんは今にでも雨が降りそうな空を見上げながら、一人で何かを言っていた。僕は、彼に駆け寄ると、ルキアさんは僕に気づいた瞬間、涙を流し始めた。
「クロイ、殿……。俺は、やり遂げたんだよな?」
「あぁ。これでルモンド王は、もう上に立つことはなくなり、世間から迫害を受けることとなるはずだ。ルキアさんのお姉さんも、嬉しいだろう。ルモンド王の首を刎ねず、よく我慢したな。あれで刎ねていれば、街の人間たちのトラウマにもなっていた。それに、ルキアさんのトラウマにも。お姉さんも、そんなことは望んでいないはずだ」
芝生に片膝をつけ、彼の背中を擦った。それと同時に、雨がポツリと降り始めた。
「そ、うだな。だが、俺は。これから、どうすればいいんだ。この街から去るが、行く当てもない。ましてや、ルモンドのことだろうだから、報復は必ずしてくるだろう。騎士団の中に、ルモンドを逃がす準備をしている騎士たちも、存在しているはずだ。そして、俺を捕まえて、公開処刑する手順だろう」
「ルキアさん……」
「ほとぼりが冷めるまで、身を隠すか。だが、どこに身を隠すかだな。なぁ、クロイ殿」
ルキアさんは、僕の名前を呼び、互いの瞳を写すように、見つめ合った。
「なんだ?」
「俺がもし、死ん……」
「馬鹿なことを言うな!!」
僕は、彼の言葉を遮った。本能的に、最後まで聞きたくないからだ。今までに出したことのない声量で、自分でも驚いているが、僕はルキアさんに自分の感情をぶちまけた。
「クロイ殿?」
「僕は、ルキアさんに生きていて欲しい! 言っておくが、ルキアさんの初恋相手は、僕だ。あの時、確かに迷子になっていた。知らない土地で、一人になるのが怖かった。そんなところに、ルキアさんが現れたんだ。最初は、全く信用していなかった。まだ、〈勇者・クロイ〉ではなかったからな。だが、次第に
「……」
「今も、貴方と再会できて、嬉しいんだ。貴方の過去も知った上で、今の貴方に問う。」
「なんだ……?」
戸惑っているルキアさんを見つめながら、僕は彼にある問いかけを投げた。
「僕たちと、共に旅をしないか? いや。───共に旅を