「僕たちと、共に旅をしないか? いや。───共に旅を
復讐を遂げ、今後の人生に不安を抱いていたルキアさんに、僕は共に旅をして欲しいと、頼んだ。
「クロイ殿……」
「無理にとは言わないが、死ぬくらいなら、僕たちと共に行動をした方が、楽しいだろう? それに、出逢った頃みたいに、また話をしたいんだ。ルキアさん……。どうだろうか?」
彼に対する想いは、本物だ。「噓」ではない。この短期間だが、彼と共に過ごす日々は、色々と楽しかった。彼の本心と過去を知れて、彼と昔に出逢っていたことも知れた。
(ルキアさんと、もう一度だけ。一緒に居たい)
心の中で、彼が頷くのを待っていると、ルキアさんは震える両手で、僕の左手を握った。とても冷たく、水のように繊細な触り心地だ。
(怖いんだな。この先のことが)
僕は、彼の手を握り返し、そのままそっと、抱きしめた。
───あの時と同じように。
彼が静かに涙を流し、背丈は僕よりもあるが、細い身体を震わせている。落ち着きを取り戻すまで、雨に打たれながらも、このまま待つことにした。
───数分後
ルキアさんは、何とか落ち着きを取り戻し、僕から身体を離した。
「クロイ殿。すまなかった。寒かっただろう……?」
「平気だ。ルキアさんこそ、もう大丈夫か?」
「俺も大丈夫だ。この埋め合わせはする。それとは別で、お前と一緒に居たい。初恋相手というのもあるが、シエル殿とクロイ殿と一緒に居たせいなのか、誰かと過ごす日々が、こんなにも愛おしいと感じてしまった。それを、改めて実感した。死ぬくらいなら、この命。クロイ殿に捧げたい」
その場に立ち上がり、騎士らしく片膝を立て、胸に手を当てた。僕は、彼の答えに頷いた。
「命を捧げるというのはなくても良いが、一緒に居れるのであれば、それだけで僕は嬉しい。これから、よろしく頼む。ルキアさん」
「ありがたきお言葉。このルキア・マエロン。
「クロイ様って。クロイでいいから」
(流石に、恥ずかしい)
「それなら、俺のことは
ルキアさん。いや、ルキアは僕たちと共に旅立つことを、決意してくれた。このことをシエルに伝えなければと思っている矢先、僕の背後から気配を感じ、振り向くと、シエルが立っていた。
「い、いつからいたんだ!?」
僕はシエルに問いかけると、ため息を吐かれた。
(いや、なんでため息?)
「君たち、本当に警戒心無いね。特にクロイ。流石に、あたしの魔力を感じないと。ちょっぴり、出してたんだけどな~」
シエルの言う通り、少しだが、魔力を放っているのを確認できた。
すると。シエルは、魔力を鎮め、僕たちに近づいてきた。
「ルキア君。これからあたし達と来るのであれば、一旦この場所を離れようか。クロイ、あの宿に行くよ。そこで、店主から話を聞こう。〈ユーベル〉で起こったあの出来事に関すること。そして、魔王についてね」
こうして僕とルキアは、シエルの言われるがままに、僕たちが止まっている宿屋に戻ることとなったのであった。