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20.〈仲間〉

「僕たちと、共に旅をしないか? いや。───共に旅を


 復讐を遂げ、今後の人生に不安を抱いていたルキアさんに、僕は共に旅をして欲しいと、頼んだ。


「クロイ殿……」


「無理にとは言わないが、死ぬくらいなら、僕たちと共に行動をした方が、楽しいだろう? それに、出逢った頃みたいに、また話をしたいんだ。ルキアさん……。どうだろうか?」


 彼に対する想いは、本物だ。「噓」ではない。この短期間だが、彼と共に過ごす日々は、色々と楽しかった。彼の本心と過去を知れて、彼と昔に出逢っていたことも知れた。


(ルキアさんと、もう一度だけ。一緒に居たい)


 心の中で、彼が頷くのを待っていると、ルキアさんは震える両手で、僕の左手を握った。とても冷たく、水のように繊細な触り心地だ。


(怖いんだな。この先のことが)


 僕は、彼の手を握り返し、そのままそっと、抱きしめた。


───あの時と同じように。


 彼が静かに涙を流し、背丈は僕よりもあるが、細い身体を震わせている。落ち着きを取り戻すまで、雨に打たれながらも、このまま待つことにした。




───数分後


 ルキアさんは、何とか落ち着きを取り戻し、僕から身体を離した。


「クロイ殿。すまなかった。寒かっただろう……?」


「平気だ。ルキアさんこそ、もう大丈夫か?」


「俺も大丈夫だ。この埋め合わせはする。それとは別で、お前と一緒に居たい。初恋相手というのもあるが、シエル殿とクロイ殿と一緒に居たせいなのか、誰かと過ごす日々が、こんなにも愛おしいと感じてしまった。それを、改めて実感した。死ぬくらいなら、この命。クロイ殿に捧げたい」


 その場に立ち上がり、騎士らしく片膝を立て、胸に手を当てた。僕は、彼の答えに頷いた。


「命を捧げるというのはなくても良いが、一緒に居れるのであれば、それだけで僕は嬉しい。これから、よろしく頼む。ルキアさん」


「ありがたきお言葉。このルキア・マエロン。に忠義を誓います」


「クロイ様って。クロイでいいから」


(流石に、恥ずかしい)


「それなら、俺のことはと呼んでくれ。これからよろしくな。


 ルキアさん。いや、ルキアは僕たちと共に旅立つことを、決意してくれた。このことをシエルに伝えなければと思っている矢先、僕の背後から気配を感じ、振り向くと、シエルが立っていた。


「い、いつからいたんだ!?」


 僕はシエルに問いかけると、ため息を吐かれた。


(いや、なんでため息?)


「君たち、本当に警戒心無いね。特にクロイ。流石に、あたしの魔力を感じないと。ちょっぴり、出してたんだけどな~」


 シエルの言う通り、少しだが、魔力を放っているのを確認できた。


 すると。シエルは、魔力を鎮め、僕たちに近づいてきた。


「ルキア君。これからあたし達と来るのであれば、一旦この場所を離れようか。クロイ、あの宿に行くよ。そこで、店主から話を聞こう。〈ユーベル〉で起こったあの出来事に関すること。そして、魔王についてね」


 こうして僕とルキアは、シエルの言われるがままに、僕たちが止まっている宿屋に戻ることとなったのであった。

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