バーナさんから〈魔王〉が三人存在していたこと。その一人の〈失望の魔王〉が現在、行方を眩ませていること。
そして、〈魔王〉の一人が生きている間は、〈悪魔〉も実在するという事。そのため、バーナさんが〈悪魔〉と契約をしていることで、〈魔王〉がこの世から消え去れば、〈悪魔〉も消え、契約破棄という形で、バーナさんも亡くなってしまうという事実にも気づいた。
簡単に言うと、〈魔王と悪魔〉は一心同体。契約者も同類という扱いになる。
それに、シエルも〈魔王〉と関係あるみたいだ。バーナさんはさっきから、元からの細目でシエルのことを見ている。
「バーナさん。僕は、シエルの口から事実を聞きたい。だから、シエルが言える日まで、僕は待ち続ける。それでいいな?」
僕はシエルの前に立ち、バーナさんを睨みつけた。申し訳ない気持ちもあるが、シエルの負担になっている方が、僕にとって不利益だ。
「……そうですか」
バーナさんは、細目を開き、灰色の髪色に似合わない
「クロイ。君は本当にお人好し過ぎるよ。でも、まぁ。ありがとう……」
シエルは、恥ずかしいのか、耳を赤く染めながら、そっぽを向いた。その仕草が、子供の様に愛らしく感じた。
「さて、長居は無用ですね。今のこの国は、次期国王の座をかけ、争いが始まると思われます。これもまた、いい方向に進む合図だと。ルモンドが追手を向かわせ、クロイ様たちを探していることや、争いに巻き込まれないためにも、今すぐにこの国から姿を消す方が身の安全かと」
「次の目的地は、ここから出た後にしよう。彼の言う通り、今は逃げることが最優先さ」
「その前に、クロイ様。
突然、バーナさんがそう尋ねてきたことに、僕は戸惑った。悪魔と契約している者が、僕らに力を貸してくれるとは思えないと。しかも、ルモンド王の先祖だ。ここまで、話してくれたのは、
「バーナさん。僕たちを裏切るようなことはあるのか? ルモンド王の先祖で、〈悪魔〉と契約をしている貴方を、簡単に信じられない」
「クロイ……」
僕は、「嘘」を見抜けるが、それは
「それに。バーナさんは、どうして僕たちを、そこまで気にする。僕が〈勇者〉だからか? それとも、シエルに何か関することか?」
「クロイ様の言う通り、どちらもありますが、
バーナさんはそう言うと、片膝を床につけ、頭を下げた。それはまるで、ルキアさんと同じ騎士のようだった。
「……」
「クロイ。彼の言っていることは事実だよ。だから、今は信じよう」
シエルは僕の左手を握った。僕は、バーナさんを受け入れることにした。
「バーナさん。よろしく頼む。それとすまない。この旅で、信頼を得られるようにしてくれ」
「かしこまりました。クロイ様」
こうして、新たにバーナさんが仲間に加わり、急いでグローリア帝国の外に出ることに成功し、次の目的地を目指しながら、歩き続けたのだった。