次の日。
久しぶりに深い眠りについた僕は、とても目覚めが良かった。だが、目を覚ました時、隣で寝ていたはずのルキアの姿がなく、身支度を整えてから一階に降りると、ルキアとバーナさんの姿があった。
(様になるな……)
ぼーっと、そんなことを思いながら、カウンター席に座っているルキアと、その向かいに立っているバーナさんを見つめていると、バーナさんの目線がこちらに向き、微笑まれた。
「クロイ様。おはようございます」
「クロイ! おはよう!」
「お、おはよう」
僕は、ルキアの隣の席に座ると、バーナさんが手際よく珈琲を淹れてくれた。
「プリムラ様から頂きました。どうぞ」
「あぁ」
(さっぱりとしているな。おかげで目が覚めそうだ)
一口珈琲を口に含め、香りと味を堪能していると、カウンターテーブルの上に、朝食だと思われる卵とハムが挟まれたパンが目の前に置かれた。
「こちらは、ルキア様のリクエストで御作り致しました。朝食にどうぞ」
「姉さんがいたころ、良く作ってくれたんだ。食が小さかった俺にって。どうだ?」
「確かにうまいな。僕もあまり食べない方だからな。毎朝これでもいい気がする」
ルキアのお気に入りの朝食を頬張っていると、バーナさんがクスッと笑った。
「バーナさん?」
「申し訳ありません。なんだか、お二人が微笑ましく思いましてね」
「バーナ殿! 俺たちは普通です!」
(バーナさんには教えていないつもりだったが、もしかして。ルキアのことがバレているのか?)
ふと、そう思った僕はバーナさんにある問いを投げかけた。
「バーナさん。エスパーか何かか?」
「エスパーではありませんが、出逢ったころに言ったことですが、
バーナさんの目が見えずらい理由が判明し、それ以上に特技というか、体質があるのだと知ることが出来た。
「こ、恋しているだとかも分かるのですか!?」
「えぇ。ルキア様が、クロイ様を想っていることも、お見通しなのですよ」
優しく微笑んだバーナさんに、ルキアは顔を隠すように、下を俯いた。
「どなたを愛そうか構いません。恋に性別は関係ないのですから」
「バーナ殿……。ありがとうございます」
「良かったな。シエルも感づいているしな」
僕は、前回シエルに感づかれていたことを話すと、ルキアは顔を真っ赤に染めた。
「バレバレではないか!!」
「しょうがないだろう? それだけ、ルキアは感情豊かだという事だ」
「クロイまで……。まぁ、それならこれからは、隠さなくてもいいという事だな?」
(突然何を?)
「覚悟しておけよ。クロイ?」
ルキアはそう言うと、僕の頭に手を置き、部屋に戻っていった。
「クロイ様。少々お顔が赤いですよ?」
バーナさんに指摘された僕は、誤魔化すかのように、珈琲を一気に飲んだ。
「若いっていいものですね~」
クスクスと笑うバーナさんを前に、恥ずかしさを紛らわすようにパンを喉へと通したのであった。