「ずいぶんと私の宮の近くが賑やかだったこと。どうだった?梓涵
《ズハン》」
私は恭しく跪拝すると、
「昨日の
私の報告に、欣怡様は頷いて答える。
「さすがは梓涵ね。
「えぇ、そうなると思います。すでに
「本当に、梓涵は劉家の中では頭脳派で優秀ね。そうは思わなくて?
なんと、欣怡様の部屋には文官長の陳
「浩然様、ご無沙汰しております。梓涵にございます」
私が欣怡様へと変わらぬような挨拶をすると浩然様は、少し顔をしかめて言う。
「梓涵、今はあなた貴妃なのですからその態度はいけません」
相変わらず、真面目で凛とした佇まいの浩然様は欣怡様と並んでも見劣りしない美人さんである。
男性だけれど、長い青みがかった黒髪を髪紐で結っている姿が実に似合っている。
「ですが、私の貴妃の位は皇妃様である欣怡様を守るためのかりそめの地位。表でこそ出しませんが、ここでは元のままでもよろしいでしょう?」
そんな私たちのやり取りを欣怡様はにこやかに見守っている。
「仕方ないわよ、浩然。梓涵は私たちみんなの妹分なのだから。許してあげましょう?外では本当によくやっているでしょう?」
そんな欣怡様の言葉にも小さくため息をこぼしながら浩然様は答えた。
「確かに清やその部下から、頑張って位という報告は来ていますよ。さっそくたくさんのネズミを釣り上げて、呉貴妃をすでに呉国へ送還する手はずが整ったのは上々ですが……。梓涵、あなた今後どうするつもりなのです?」
浩然様には私の初日と二日目の段階ですでに二人の貴妃に迫っているので、勢い良すぎだと思われているのだろう。
しかし、引っかかって来たのはあちらの方で私は応戦しているにすぎないので何も悪くないのでは?と思う。
引っかかるように仕向けてはいても、引っかかる動きをしたのは呉貴妃と黄貴妃だけなのはほかの貴妃はしっかりしており、攻略難度が高いことを示している。
今後の攻略の振るい出しにもぴったりだったと思うのだけれどね。
「梓涵、今回で動いた貴妃は早々に送り返す手はずなのでしょうけれど。ほかの貴妃はどうするのです?」
それには私は浩然様を見つめて一言。
「そこは、頭脳派の浩然様にお任せします。だって私がやりやすいのは昨日今日みたいな挑発に乗って来る短気な方々と、武力でお話することだし?」
実にあっけないほどにあっさりとした態度で堂々と言う私に欣怡様も浩然様もポカンとしていたけれど次の瞬間には声をあげて笑い出した。
「本当に
いつでも、私たち兄妹が先陣切って突撃できるのは後方支援に龍安様に欣怡様、浩然様が居るから。
三人で画策、計画し、それを実行に移すのが私たち兄妹の役割だった。
「そうでしょう?今回のためにたくさん演劇も見たし、欣怡様のお母様に雅な振る舞いも習ってきたし、体を動かして覚えることならなんとかなるのよ!」
私の開き直った一周回って強気発言に、二人の肩の力も抜けたようだ。
「梓涵ぐらい真っすぐな者が多ければ、苦労は無いのですがね。後宮はそうもいっていられぬ場所です。欣怡様だけであれば問題なかったのですが、周辺国に侮られたのは本当に不本意です。そろそろ、蹴りをつける頃合いでしょう」
ニヤリと微笑む浩然様は不敵であり、お兄様にはないカッコよさでますます好きになってしまうけれど現在まだそれは決して表に出せない。
あぁ、早く隣であなたを眺めていられる権利が欲しいです。
梓涵は頑張って欣怡様の周りをお守りして、安全を築きサクッと浩然様との結婚をつかみ取って見せる!
やる気に溢れる私を、欣怡様が微笑ましいと言った感じで見守ってくれる。
そして、ポツリとこぼす。
「こんなに梓涵が分かりやすいのに、なぜ浩然は気づかないのかしらね?」
この呟きを拾う者は、今はいないのであった。
二日目の夜、さっそく碧玉宮には招いてないお客様がバンバンとやって来た。
楽するため、もとい早期解決のために碧玉宮は現在私とお兄様と
なぜって、碧玉宮は現在お客様満員御礼のための罠だらけのためその罠をものともせず動ける者のみが残れる邸とかしているからだ。
新作の罠も多数あるので、どれにどのくらいの人間が引っかかるか今から楽しみで仕方ない。
ちなみに罠は基本お兄様の得意分野で、私はそれをさらに改良するのが好きなので、合作すると浩然様いわく『えげつない捕獲罠が爆誕している』という評価だった。