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第2話 スキル

 眠りから起きると、大きな魚、アクアフィッシュという奴から受けた傷は綺麗さっぱりに無くなっていた。


『ふむふむ。寝たら傷は治るみたいだな。では一刻も早く此処から逃げ去る為に行動しますか……と、その前にステータスを確認しておくか』


 また昨日みたいに戦闘になる時、なんか役に立つ物があるかもしれないしな。


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 ウオ:ただの魚の幼体。魚の祖先と呼ばれる程昔から存在する生物。あらゆる生物はウオから生まれたと言う学者も多い。


 悪食:何でも美味しく食べられる。凄いね。

 毒無効:毒? なにそれ? 凄いね。

 異言語:異世界の言語を理解する事が出来る。


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 何だ? この種族、魚の祖先と言われれば何か良い気もするけど……結局はただの魚の幼体なんだろ? ヤバすぎだろ!?


 しかもこのスキル。うーむ………いや、生き残る為には役に立つんだろうけどさ? どれも戦闘の役には立たないよな?

 前世は旅行とか行って色んな現地の物食べてたからこのスキルが付いたんだろうけど……あー! 空手とか習っておけば良かった!!


『………まぁ、嘆いてもしょうがない。お腹も減って来たし、外に出ないっていう選択肢はないな』


 そう決断し、俺は恐る恐る外へと出る。


 周囲は昨日よりは明るく、見やすい。時間は……多分昼ぐらい。岩場の中で寝てたから分からなかったけど、寝たのが早朝だったのかもな。


 でも丁度良い。昨日はちょっと薄暗くてよく見えなかったんだ。これなら自分の食べれそうな小魚も探せるんじゃないか?

 と、思いながら、ちゃんと周囲を警戒しつつ海底を這いながら進んで行く。


 何で海底を這ってるかって?

 これは、もしもの時の為、俺が何かに襲われた時に砂埃を舞わせて逃げる為だ。


 昨日の事で俺は思い知った。自然界は本当に弱肉強食で、俺はこの世界の事をまだ全然知らないんだと。例え俺が異世界から来たって、チートもない。魚だから知識チートも出来ない。


 つまりは本当にただの魚。しかも幼体の。

 命は大事に行くべきだろう。


『よし!! とっとと出て来やがれ!! 俺の餌共よぉっ!!』


 俺は声にならない声を出しながら、意気揚々と周囲を見て泳ぐのだった。






 はい。甘く見てました。お腹減りました。

 え、何で腹減ってるかって? 食ってねぇからだよっ!! あのクソ魚共!! 意外に足が速いんだよ……俺よりも小さいのに何でこんなに食べれない?


 スキルの悪食ってやつもあるじゃん? だから何でも食べようとは思うんだよ? でも何もねぇんだよ……海藻でも食べようかなって思っても此処ら辺一帯、海藻生えてねぇんだよ!


 あぁ……もう腹が減り過ぎて泳ぐのもままならなくーー……あ、なんか、アソコに落ちてる。


 俺がフラフラしていると、視界の隅に何か海底の上を漂っている物を見つけ、近づく。




 うっ………。


 そこにあったのは、何か黒々とした丸い塊、においは……生ゴミを凝縮させた様な臭いを放っている。


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 ******の糞:栄養価が高く、魔力を吸収する性質を持つ**の糞。臭いがキツければキツい程に栄養価、魔力共に高い。まぁ、誰も食べないだろうけどね。


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 頭にこの物体の情報が入って来る。少し隠れているのが気になるが……それ以外の文でも分かる最悪さだ。まるで、俺がこれを食べるとでも思っているかの様な説明。


 ……いや、冷静に考えて食わんだろ。本当に何を考えてんだ俺の頭は。

 詳細は分からないよ? だけど糞が入っている時点で、それは食事じゃなくなるのよ。◯◯◯ロになっちまうのよ。


 栄養価が高いからって食う訳ないや〜ん! さて、餌を探してーー








 ……はい。戻って来ました。

 もう、探したんですけどね、本当に何もないんですよ。もうこの際石でも食っちまおうかと思ったんだけど、あるのは俺よりもデカい岩とかしなかなく、そんな物を俺が噛み切れる訳もなく……砂でも食っちまおうかなって思ったんだけど、何故か身体が受け付けず……また此処に戻って来ました。


 …………う、うん。異世界モノでは文字化けしてるのはレア物確定みたいな所あるじゃん?


 俺は涙を流しながら、その黒い球体に近づく。そしてキツ過ぎる臭いに鼻を曲げながら、かぶり付く。


 するとーー








 意外に悪くなかったです。

 なんて言うの? ちょっと苦味を感じるハンバーグみたいな味がする。食感は綿飴みたいな感じだけど、臭いさえ我慢すれば何ともない。


 そのウ◯コを完食すると、俺は何故か突然眠気に襲われる。そして、俺は何とか近くの岩場の影に隠れて目を瞑った。



『悪食EX』へと進化を果たしました。

『魔力操作Lv1』を取得しました。


称号:『悪食を極めし者』を取得しました。



 何か凄い事になっちゃってんじゃん……。


 薄れる意識の中。不思議な声を聞きながら、俺はこれからどう生活して行くのだろうと不安になりつつ眠りに着くのだった。

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