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悪食EX:何でも美味しく食べれるよ。ついでに何でも能力とか吸収出来るよ! めっちゃ凄い!
魔力操作Lv1:魔法を使用する際、自身の魔力を効率良く使う事が出来る。
悪食を極めし者:悪食を極めた者。まさか◯ンコ食べるとはね……色んな意味で大丈夫? 吸収補正。
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ふむふむ……。
俺は無事に目を覚ますと、今の自分の状況とステータスを確認していた。
まず私、お腹が減ってたのでウ◯コを食べました。そして、その影響なのか『悪食』が『悪食EX』になって、『魔力操作Lv1』を取得。『悪食を極めし者』という称号を賜りました。
何か新しいファンタジー要素的な『能力吸収』とか『自身の魔力を効率良く使う』というのが出来る様になったので、結果的に見れば良かったと思う。
ま、その悪食も狩りには役に立たないみたいですけどね!!
ーーそれよりもだ。『魔力操作』ですよ、皆さん。そしてこのLv概念。アクアフィッシュの時にも見たが、Lv1というのはスキルの強さだな。他のスキルにはLv表記は無かったが……いいね。
魔力と言えばファンタジーの基本。Lvはなくてはならない物だ。あのアクアフィッシュでさえ、恐らく水魔法を使っていた。それなのに転生者である俺が出来ない筈が無い!!
遂に俺、魔法を使います!
そう思い俺は早速、魔力操作をーー
『……どうやんだ、これ?』
やろうとヒレを前に出した所で、俺の前では何も起きなかった。
確か、こういうので大事なのは大体イメージだ。
自分の身体の中にある魔力を前に集めるイメージで球体を思い浮かべる。すると、身体の力が少し抜ける感覚と共に、目の前に不透明な球体が浮かんでいた。
『カメ◯メ波ーッ!!』
……ん? 飛んでかないぞ?
俺が某漫画の様にヒレを突き出すが、球体は変わらずそこに漂っているだけで、動く様子も無い。
どうにかして動かそうとするが、身振りでは上手く行かない様でイメージしてやっと左右に揺れる程度だった。
『あー……なるほど、これは魔力が操作出来るってだけで魔法が使える訳じゃない。"魔法"を使う時に効率良く魔力を使う事が出来るって事か』
しっかりと詳細を確認し、頭を抱える。
あの魚のスキルには『水魔法』があったから、スキルには魔法がないとダメなんだ。しかもさっきから少し身体が怠い……魔力も無限じゃないみたいだ。
つまり、魔法を使う為には、魔法のスキルを持ってる奴を食べれば『悪食EX』で能力、スキルが手に入るんだよな? 詳細には何でも食べれば美味しく能力が手に入るらしいが……
『………まぁ、物は試しだ』
俺は食べられなかった海底の砂を口に含んだ。
ふむ。味はポテチの塩味って感じだ。ウン◯を食べたからこっちもいけると思ったが、想像以上に食感を気にしなければ全然行けるんだな。
まぁ、能力は手に入らなかったが……さっきまで怠かった身体が機敏に動かせる様になった。何かしらの効果はあるみたいだ。腹が減ったらこれを食べて行けば死にはしないだろう。
『……これで食料の問題は無くなった訳だ。次は比較的安全そうな所を探すか』
俺は岩場から離れ、途方もなく泳いで行く。
この近辺で1番弱いのは、多分俺だ。異世界生活2日目ではあるが、俺は1匹たりとも獲物を捕まえられていないし、小さな魚でさえも、同じ種族で俺よりも大きな魚を狩っている所を見た。
しかし、その小魚達よりも強い魚が5万と居る。
それに加えて俺が昨日見かけた、あのバケモノ。果てしなく海が続き、距離はよく分からなかった。近かったにしても泳いでいるだけで、離れた岩場が揺れるなんて相当なヤツだ。
『だから安全な所を探そう』
え? 強くならなくて良いのかって? バカ言いなさんな。こちとら異世界生活2日目、何のチートもないボッチ小魚ちゃんですよ? ◯ンコ食って、砂食ってる小魚ちゃんですよ?
強くなれる訳がないやん。
戦って死ぬなんて、折角の異世界生活が台無しだ。
それならコソコソ隠れて、安心安全にスローライフ送った方が良いだろ? だから、取り敢えずは頑丈そうな住居を見つける事が今の目標だ。
『さぁて、良さそうな所は……ん?』
そんな時、突然視線の奥にあるであろう海底が一面黒く染まっている事に気付く。恐る恐る近づくと、そこは断崖絶壁。まるで世界を割ったかの様な崖が目の前には広がっていた。
『すげー……これ海溝ってやつだよな? こんなのTVでしか見た事ないぞ』
俺は崖の端を沿うように泳いで行く。
流石に此処を飛び越えて泳いで行く勇気は俺には無いので、取り敢えずは様子見だ。
『ん?』
視界の隅。微かに上から差し込む光に、何かが反射する。
……うん。やっぱりアソコに何かある。大きいな。
泳ぐのをやめ、ジッと見ていると暗闇の中にある物の輪郭が段々と明確になって来る。
反射して見えた物は、どうやらその一番上。つまり、俺から一番近い所に何かが引っ掛かって、それが反射しているみたいだ。
あそこに行ったら、もしかして何かあるかもしれない。美味しい食べ物とかーー
『って、行かないけどな?』
はっはっはっ、行くと思った? さっきも言った通り俺は大人しくスローライフをしたいんだ。態々、あんな怪しさ満点な所に行く訳がない。
暫く海溝の端を沿って泳いで分かったが、この海溝は相当長くまで続いているし、向こう岸さえ見えない。深さはそうでもないようだが、命を賭けてまで行くかと言われれば否である。
『さてさて……では他の方へ行ってみますか〜』
そうして、俺が海溝へと背を向けた瞬間だった。
『っ!?』
砂埃が大きく吹き荒れ、一瞬にして視界は砂で真っ白になる。飛んでくる砂や小石が混ざり合い、それはまるで台風の中を歩いているかの様に錯覚した。
何で、どうして、そう考える事すら出来ず、俺は暗い海溝の底へと落ちていくのだった。