辺りは先程よりも見えやすくなっており、夕方程の暗さぐらいまでは明るくなっている。
周囲は砂しかなく、俺達が来たであろう方向は坂になっていた。その途中、それはあった。
帆に描かれた骸骨マーク。船横には大砲が突き出されており、船底は大きな穴が空いていた。
『海賊船か?』
異世界でも概念が同じならそうだよな?
そう思いながらも海賊船の方へと進み、甲板へと着く。甲板にはサーベルらしき剣が突き刺さったり、人の骨らしき物が転がっている。所々に血痕の様な跡も残ってる。
『この世界は、地球で言えば西洋文明ぐらいなのか?』
木造の船艇。前世でこの大きさの船は金属とかで出来ていた。それを考えればーー
『って、何時沈んだのかも分からないのに考えても仕方ないか』
他の所も見てみよう、そう思い船内へと入って行く。船内もボロボロだ。
棚は倒れ、入っていたであろう食器やコップが割れて散らばっている。椅子やテーブルの足も折れて使えそうにもない。
『もっと奥に入ってみるか……』
目に入った壊れている扉、その奥へと進む。するとそこにあったのは沢山の檻だった。
『うっ………』
そこにあったのは多くの人間の骨……その多くが
『可哀想に…………まだ何歳にもなってないだろうに』
多くの子供が檻の中に入れられていたみたいだ。どんな扱いを受けていたのかなんて、檻に入っている時点で想像はつく。
『この世界は奴隷もいるのか……』
骨の近くに落ちている無骨な黒い首輪。それに意識を集中すると、頭の中に詳細が浮かび上がる。
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奴隷の首輪:奴隷に対して絶対的な命令権を得る為に作られた首輪。所有者と奴隷の血を混ぜ、首輪に垂らす事で契約が成される。
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契約。魔法もあるんだからあって当たり前か。
この世界のちょっとした事……片鱗に過ぎないだろうに、もう精神的に辛くなっている。何か他の物は……ん?
辺りを見渡すと、見張り番として使われていたのか、1人分の椅子や机の残骸。その近くに1冊の本が転がっていた。
随分年季が入っていて、他の物と比べてもボロボロだ。文字が分かるか心配だったが、スキルの『異言語』のおかげで、ちゃんと読める仕様になっている。
本にはーー【古の魔法について】と書かれている。
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古の魔法書:現代と比べれば魔力消費は多いものの、多種多様で強力な魔法を使用できる。あまりにも威力が強い為、現代では使用を禁じられている。他者と契約を結び、一方的に従わせる事も出来る。
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なるほど……此処に居た子達はこの魔法で……いや、これ以上は止めよう。どれも全部憶測に過ぎない。
俺はこれからの自分の事を考えるべきだ。
そう、それで俺はある事を思い付いている……もし、もしだが、俺がこの【古の魔法書】を
もしかしすると、もしかするんじゃないだろうか。
ーー試す価値はある、か。
俺は本を啄ばみ、食して行く。そして全部食べ切った頃。
『古の魔法』を取得しました。
……なるほど、本でも吸収出来るのか。
古の魔法の全ての知識が一気に頭に入り込み、頭を痛めながらも理解する。
古の魔法。それは物を介して契約を行えば、その物が壊れない限り
檻の中に入っている骨、首輪を見る。
『今だにこの子達はーー……』
成仏する事無く、此処に留まり続けている。
子供になんて事を……だけど、今の俺に出来る事は何も無い。もし出来るとしたら『光魔法』を取得し、最大Lvである10まで上げて『解呪』する事。
『いつか出来たら、此処に居る子達を解放してあげよう』
俺は彼等に決意を立てる様に呟き、そこから立ち去った。その直後。
『うおぉぉおおおぉおっ!?』
船が傾いてる!?
俺は船の壁に凄い勢いでぶつかり、意識を失うのだった。