「
「その呼び方やめろ、うぜえな」
……ったく、コイツはこの期に及んでまだ渋るのか。いい加減腹くくれっての。
「うぜえとか言うなって。改心したんやろ?」
「はあ? いつオレがそんな事を言ったんだよ」
命を
ガイアの見立てではマナの色が紫で、彼女とはこの上ない相性のよさ。
なのに……なのに、だ。
「なんでそんなに拒むんだよ」
「う、うるせえ……」
「うるせえってなんだよ。心配してんだぞ……」
「はあ? 頼んでねぇよ」
本当に改心したんかこいつ? ティラノたちの言葉を疑う訳じゃないけど、今までとなにも変わっていないように見える。
「八白さん、ちょっといい?」
新生の
「アイツさ、意地になってんじゃない? あの状態って、言えば言うだけ抵抗してくると思うよ」
「それってどうすればいいのさ? 人との距離感を図るのは、ウチが最も苦手なことなんだけど」
「え~……私にはかなり容赦ないと思うんだけど」
アンジーはニヤリと口角を上げて笑う。
多分だけど『そういうのは嫌いじゃない』という意思表示なんだと思う……いや、思いたい。
「ま、それはさておき。アイツが改心したらしいってのは確定でいいの?」
「う~ん……
ティラノやベルノ、ラミアまでもが太鼓判を押しているんだ。信じない訳にはいかないだろう。
「なるほどね。でも人間って、改心したつもりでも“ふとした瞬間”に悪い癖がでたりするからさ」
「また暴力振るうかもって?」
「それもあるかもけど。それ以上にさ、もしかしたらアイツも
そうか、今までやってきたことが“間違っている”と本人が自覚していて、そしてそれを繰り返さないという自信が持てない、と。
ウチも結構引きずるタイプだから、その辺りは妙に共感できてしまう。
でも、それはそれとして、ちょっとだけ微笑ましく思ってしまった。アンジーって意外と新生のことを見ているのだなって。
……まあ、顏合わせれば喧嘩ばかりだけど。
「アイツがそれを“ウチたちの前で”認めるかどうか。ってことか」
「そうだね。私や八白さんと違ってさ、初代は正真正銘のJKじゃん。精神的にかなり未熟だとおもうんだよね」
「ウチは永遠の17歳やで!」
「……だから、正真正銘のアラサーである人生経験豊富な八白さんが、円熟味のあるフォローをしてあげた方がいいと思うんだ」
うわ……あっさり流しおった。さらになし崩し的に、アラサー枠から自分を外しやがりました。
——なんてヤツだ、アンジュラ・アキ。
「具体的にどんなフォローすればいいのかな?
「そうね、
「なる。
お互いをひきつった笑いで牽制し合っていたら、ラミアがめっちゃいい笑顔で声をかけて来た。
上機嫌の理由は件のちっこ可愛い鳥さんだ。彼女のおかげで全快し、今はその腕の中で『ピッピピッピー……』と歌っていた。
「エモいですわ~。亜紀ぴもジュラぴも」
……いや、そのエモいは使い方間違ってないか? アラサー枠を抜けるか抜けさせないかって話なんだぜ。
「まあ、なんつーかあれなのですが、ここは私が話をしてみようかと。この
「うん……いいかもしれない。八白さん、ミアちゃんにまかせようよ」
「だよな。“ギャル語会話で意気投合!”とかあるかもだし」
もう、ここはラミアに期待をかけるしかない。ウチたちは心の中で『がんばって~』とエールを送りながらうしろ姿を見送った。
「しかしアンジーさんや……」
「なんだい、八っつぁんや……」
「よくよく考えると、今回ウチら役立たずだねぇ」
「そだねぇ」
……そこには、なにもできなかったマジもんのアラサーが二人、情けなくたたずみ風に吹かれていた。