ネネは中空に飛んでいる感覚を持つ。
吹き飛ばされた?何に?
光が吹き付けてきたような感じ。
ネネは体勢を整えようとする。
吹き飛ばされたなら、次に来るのは、落下だ。
ネネは落下に備える。
足元があるようなないような感じ。
光の後遺症か、目がちかちかして見えにくい。
何が起きているのだろう。
がさがさと音がして、ネネはどこかに落ち着いたような感じを持つ。
『ネネ』
ドライブが話しかけてくる。
『大丈夫ですか?』
「わかんない」
視界がうまく見えないのが、こんなに不安だと思わなかった。
『端末を動かしてください。ここから戻ります』
「ここは、なに?」
『木の上です。戦闘している人も見えないところです』
ネネは手を伸ばす。
生きている木の感触がした。
「いろいろあるけど、向こう行ってから聞くよ」
『はいなのです』
ネネは少し目が慣れてきた。
いつものように端末のエンターキーを押す。
光が端末に収縮して、放たれる。
ネネの目の前に光の扉が現れる。
ネネは光の扉の取っ手を持った。
開いた感じを持った。
光に包まれる。
何で光が吹き付けられて、
学校の近くから飛ばされたんだろう。
まだ来るなということだろうか。
それとも何かの攻撃だろうか。
はじかれたような感じ。
誰がそんなことをするんだろうか。
占いをするものだろうか。
死んだあの人は、占いは食っているからあたるといっていた。
ネネはいろいろ考えて、
やがて考えが止まったような感じがした。
ネネはベッドに突っ伏している。
いつもの部屋に戻ってきた。
起き上がると、葉っぱが何枚か落ちてきた。
木の上から転移した名残らしい。
「ドライブ」
ネネはそっとドライブを呼ぶ。
『はいなのです』
机の片隅に、ドライブはいた。
「よかった、無事だったんだね」
『はいなのです』
ドライブは机に鎮座したまま話す。
『力にはじかれましたね』
「はじかれた?」
『光が吹き付けてきたのは、はじかれたのです』
「何がはじいてきたかは、わからない?」
『わかりませんけれど、大きな力です』
「そうなんだ」
ネネはネネなりに納得する。
でも、大きな力ならば、ネネをたやすく殺すことも出来るだろうと思う。
ネネは小さく震えた。
あの殺された人のように、
戦闘区域では、ばたばた人が死んでいるに違いない。
それはとても怖いと思った。
『占い師』
ドライブがつぶやく。
ネネもそれは考えていた。
ドライブが怖がっていた、死者すらよみがえらせる占い師。
「やっぱり占い師がかんでいると思う?」
『おそらく』
「朝凪の町が怖いことになるね」
『朝凪の町だけではないでしょう』
「だろうね」
ネネは自然にそう口にしていた。
占い師。ネネは知っている。
代価を得て、いろいろな占いをしている存在。
「タミ」
佐川タミを思い出す。
代価を食って力にしているのだろうか。
殺されたあの人は、占い師は食っているといっていた。
なんとなく、イメージだけなら重なる。
浅海の町でも何かが起こるのだろうか。
佐川タミは、佐川様と呼ばれるようになって来ている。
占いを信じるもの、そして、反占い組織。
これはネネのイメージでしかないが、重なることは重なる。
では勇者はどこにいるのだろう。
反占い組織に勇者がいるような気がする。
勇者に頼るしかないといっていた。
勇者は吹き付ける光の向こうにいるのかもしれない。
ネネは思う。
どうにかして、吹き付ける光の向こうの、
朝凪の町の学校に行かないといけない気がする。
どうすればいいだろう。
策があるわけではない。
ネネは考えだけで途方にくれた。
『ネネ』
「うん?」
『とにかく、こっちの学校に行けば、何かあるかもしれません』
「うん、そうだね」
ネネは立ち上がった。
葉っぱを丁寧に落とす。
「やってみるしかないか」
ネネはネネなりに覚悟みたいなものをした。