穏やかな午後が過ぎていく。
ネネは適当に自分のテストの答え合わせをする。
結構勘違いもあったようだ。
まぁ、テストの数日前から勉強を始めたようなものだし、
付け焼刃にしては、がんばったほうだろう。
タミの解答のコピーを見ようか。
占いの解答でどこまであっているか。
担任の口ぶりでは、みんながすごい点数を取っていたみたいだった。
ネネは確かめたいとも思うが、
同時に怖い。
『テストの解答が怖いですか?』
ベッドで運動していたドライブがたずねる。
「うん、なんだか怖い」
『根詰めることはないのです。それこそ、気分転換なのです』
「そっか」
ネネはうんと伸びをした。
「ネットでも見ようか」
小さく風が吹く。
気がつけばドライブが肩にきていた。
「何か興味ある?」
『いえ、見に来ただけです。おかまいなくです』
「ふぅん」
ネネは無駄箱一号の電源を入れる。
ディスプレイが何かをうつしはじめる。
程なくして画面が落ち着く。
ネネはいくつかクリックなどして、検索にはいる。
どうでもいいニュースだらけ。
ここにいるネネとはなかなか関わらないニュース。
それが普通だ。
なかなか浅海の町の火事なんかは引っかからない。
『火事が気になりますか?』
「何か情報があったらと思ったけど」
『そこから離れてみてはどうでしょうか』
「うん、そうだね」
ネネは検索ワードを変えてみる。
絵画について調べ始める。
高校生が大賞を取った絵を探し始める。
検索が下手なのか、絵画を載せるのが少ないのか、
なかなか見つからない。
『絵画?』
「うん」
ネネは久我川ハヤトをイメージする。
絵画で賞を取ったことを頭の中でイメージする。
『なるほど』
ドライブが答える。
ドライブと話すのは、下手に言葉でなくてもいいらしい。
「ま、そいつの絵を見たいのですよ」
ネネはちょっとおどける。
隠したいことがある。
何を隠したいのか、わからないけれど、
ハヤトに関しては、全ては見せられない気がする。
『のぞきますよ』
「うーん」
『イメージでのぞきこんでやるのです』
「止めるのは無理だろうけど、あんまりやらないで欲しいな」
『そういわれると、しょんぼりなのです』
「まぁ、ちょっと気になるやつがいるの」
『ネネに春が来ましたか』
「さぁね」
ネネははぐらかす。
そして、検索を続ける。
『ネネは久我川ハヤトが好きですか?』
「わかんないけど、居心地がいい気がする」
『あれですね』
「あれ?」
『友情以上恋愛未満』
「ふぅむ、そうなのか」
『真に受けないでくださいです』
「そうなんだ」
まじめくさってネネが返すと、少しの静かな間。
はじかれたように、ネネとドライブは笑い出す。
『ネネは面白いのです』
笑いながらドライブが言う。
頭の中の声なのに、笑いすぎて苦しいのが伝わってくる。
ネネも笑い涙が浮かぶ。
そして思う。
ああ、久我川ハヤトが好きなんだなと。
絵が見たくて必死になって検索するのも、
好きだといわれて全否定できないのも、
きっと久我川ハヤトが好きだからだ。
でも、好きだから何するわけでもない。
いきなりプレゼントや告白するわけでもない。
ただ、華道の絵を描いてもらう。
それなら真剣に華道しているところを見てもらいたい。
真剣のぶつかり合いをしたい。
どんなネネが描かれるだろう。
告白もラブレターも何もない。
恋愛未満の関係。
ただ、すごく居心地がいい。
家族とは違うあたたかな空間。
ネネはパソコンから目をはなして、また、のびをする。
ドライブが肩にしがみつく。
『おっとっと』
「落ちたら痛いぞ」
『落ちないのです』
ネネはいつもの姿勢に戻る。
ドライブが肩にちまちまと戻る。
「探しても出ないね」
ネネはマウスをクリックする。
久我川ハヤトの絵がでない。
ネネは残念に思う。
久我川ハヤトの見ている世界を見てみたい。
ネネはそんなことを思った。