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第98話 電話

ネネは無駄箱一号で適当に検索する。

何か目指すものがあるわけでもないが、

ハヤトの絵が見られないとわかると、

ネネは本当に適当になった。

匿名掲示板と呼ばれるもの、

ニュースブログと呼ばれるもの。

ネットの散策らしいものをする。

面白おかしく書いたもの。

ニュースだけを伝えたもの。

いろいろあるが、ネネはなんとなく満足しない。

ネネはあせっている気がする。

光の吹きつける先。

ネネは断片的にそんなことを思う。

朝凪の町で光の吹きつけてきたところ。

そこから先に行けば、浅海の町で言うところの、

ネネの学校まで行ける。

しばらくしてネネはまた、伸びをする。

「見つかるわけないか」

ネネはため息をつく。

『わかりませんよ』

ドライブが言葉をかける。

『朝凪の町に行っているのが、ネネだけとは限らないのです』

「そうだけどさ、ネットに転がっているわけないじゃない」

『それもそうですねぇ』

「次の朝までに、何か策が欲しいね」

『そうですねぇ』

「でも、何かを犠牲にしないとは入れないっていうのなら、考えるなぁ」

『それは嫌ですね』

「ドライブ、ちょっと頭の中読んで」

『はいなのです』

ネネはイメージする。

占い師のタミのこと、それはとても怖いこと。

代価を得ている占い師のこと。

朝凪の町にいるのではないかということ。

一通りイメージする。

「言ったこともあるかもしれないけど」

『ありがとうなのです』

「入れないようにしているとしたら、何があれば入れるだろうね」

『うーん』

ドライブが考え込む。

ネネも考える。

「ネネー!」

階下から声がする。

「ネネに電話よー!」

「はーい!」

ネネは大声で答えて、部屋を飛び出した。

ドライブが肩から転げて、机の上に着地していた。


「くがかわって人から」

「ハヤトだ」

母から電話を代わり、受話器を耳に当てる。

「もしもし」

「友井か」

「うん」

「説明しづらいけれど伝えることがある」

いつものぼそぼそ声でハヤトが言う。

「伝えること?」

「うん」

ネネはじっと待つ。

ハヤトが話し始める。

「友井は、佐川の占いのものを何か持っているか?」

「占いのもの…」

「解答のコピーとかあるか?誰かが配っていたらしいが」

「あ、あるけど」

ネネは話が読めない。

「カンニング疑惑とかって担任に言われてる話?」

「いや、ちがう」

「じゃあなに?」

「説明しづらいんだけどな」

「うん?」

「ここでないどこか、光のもとには占い師がいる」

「光のもと?」

「占いを否定するものを拒絶する光だ。吹き付けてくる光だ」

ネネの脳裏に光がうつる。

あの光かとネネは思う。

「ここでないどこか。その光を越えるには、テストの解答を持っていくといい」

「占いで得た解答だから?」

「そういうことだ。ひとまず中に入れるはずだ」

ネネは納得しかけるが、すぐにどうしてと思う。

「ハヤト、何でハヤトがそんなことを知っているの?」

「バーバに聞いた」

ネネは沈黙する。

バーバ、占い屋のバーバ。

何でハヤトがそんなことを知っている?

「ハヤト」

「いつかどこかで会える」

ハヤトはそういうと、電話を切った。

ネネは呆然と立ち尽くす。

やがて気を取り直して受話器を置く。

ハヤトはバーバのことも知っている。

それはハヤトが朝凪の町にもいるから?

戦闘区域が拡大したような町。

そんな危険なところにハヤトがいる。

ネネはどうしようかと思う。

線を辿るだけでなく、ハヤトを探さなくちゃとネネは思う。

探してどうしよう。

ネネは途方にくれた。


ネネは階段を上がって自室に戻る。

『おかえりなのです』

「うん」

『電話はなんでしたか?』

「光の吹きつける先に行くには」

『ほう!』

「ハヤトが言ってた」

『まるでネネを導くようですね』

「うん…」

ハヤトはネネの前に立っているような気がする。

導いているのだろうか。

ネネは判別がつかなかった。

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