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「オゥッ、ハルコン、ミラ、きたかっ!」
「「お待たせしましたぁ~っ!」」
ギルマスの威勢のよい言葉に、ハルコンとミラは笑顔を見せた。
「それにしても、……オマエさんら、凄い荷物だなぁ!」
「はいっ、現地でサンプルを取得したら、直ぐに調べたいので、……だから、その器材をひととおり持ってきましたっ!」
「私は、食堂のおばさんにお願いして、『弁当』を皆さんの分も持ってきたんですよ!」
「うぅん? 『弁当』って何だ?」
「ハルコン君の器材はワカりましたが、ミラさんのその『弁当』って何ですか?」
そう言って、ミラを不思議そうに見つめるギルマスとミルコ女史。
「はいっ、『弁当』って、今シルウィット領でも流行っているんですよ。昼の食事を朝、こんな具合に箱に詰めて持っていくんです!」
ミラが屈託ない笑顔で、木製の「弁当」箱を開けて見せた。
すると、「「オオッ!」」と言って、大人2人は大いに目を輝かせた。
「こんな美味そうなもの、用意して貰ってスマンなっ!」
「えぇ、全くです。こんな素晴らしいもの、頂いていいんですかっ?」
「えぇ、どうぞ。昼になったら一緒に食べましょう!」
ミラがそう言うと、大人達とミラがニッコリ笑い合った。
こちらの世界では、昼に屋外でちゃんとした食事を摂ることは、ほとんどない。
ミラに頼んで「弁当」を用意させたのだが、大人達の反応は上々だなぁと、ハルコンは思った。
「なるほど、これが『弁当』か。綺麗に料理が並べられていて、とても美味そうだな! うん? こちらのパンは何だい?」
「はいっ! これって、『サンドイッチ』って言うんですよ!」
「『サンドイッチ』って、何かしら?」
「カットしたパンに、簡単な具材を挟んで食べる調理パンですね」
ミラに代わって、ハルコンが説明をした。
「なるほど、これももしかすると、オマエさんの発明なのかい?」
「えぇ、まぁ。そうなりますね」
ハルコンは地球での知識に基づいて、こちらの世界で再現したに過ぎない。
発明と言われても、少々違うのだが、……まぁ話がややこしくなるので、その辺りは適当に濁すことにした。
「今日、オマエさんらと少し話しただけでも、多くの示唆を得られるな。なぁミルコ女史、ウチのギルドでも、この『弁当』や『サンドイッチ』を用意してみるか?」
「えぇ、大歓迎ですっ! きっとギルドの職員だけでなく、冒険者の皆さんも喜ぶと思いますよ!」
「なら、帰ったら購買に掛け合ってみるかな」
思いのほか好評のようで、ハルコンとミラもニッコリと笑顔で、大人達の様子を窺っていた。