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「……、ということがありまして。父上、冒険者ギルドのギルドマスターに、ブランデーを数本お届けしたいのですが、……。王都邸にある数本を、持ち出しても構いませんか?」
「おぉ構わないぞ、ハルコン。私の方からも、1ダース程ギルドマスター宛に送っておこう!」
「ありがとうございます!」
王都の森に入ってから数日後のことだ。
ハルコンは父カイルズと共に、王宮に向かう馬車の中にいた。
今日のハルコンは、学生服や着慣れた軽装服ではなく、貴族の正装に身を包んでいた。
ハルコンは父カイルズと共に、これから王ラスキンと王宮のプライベートルームにて面会することになっている。
馬車は王宮の堀の上にかかる跳ね橋を越え、中に入っていく。
「うわぁ、……凄いなぁ!」
ハルコンは初めて見る王宮の大きさに驚き、内部を多くの役人や騎士達、女中達が忙しく動くのを見て、さすがこの国の中心地だけあるなぁと、素直に感心した。
馬車は途中から衛兵に誘導され、父カイルズとハルコンが降車すると、御者は馬車を所定の位置に移動していく。
すると、軽装の鎧の騎士が3名、父カイルズの前に歩み出た。
「カイルズ卿、並びにご子息のハルコン君、これから陛下の許にご案内します!」
「了解した。丁重な対応に感謝申し上げる!」
「では、こちらに!」
ハルコンは父カイルズと共に、中位の皮鞄に様々なグッズを持参していた。
途中、詰所の応接室で持ち込んだグッズのチェックを受けた後、迷路のような王宮の、そのまた奥まった部屋に案内された。
ハルコンは、なるほど、こうやってセキュリティー効果を上げているんだなぁと思った。
通された部屋は、大体20畳程。必要最低限のソファーセットと家具が数点の、とても簡素な室内だ。
しばらく2人はソファーに腰かけて待っていると、……。王ラスキンと宰相、シルファー先輩と侍女のソロンの4人が入室してきたので、揃って立ち上がると臣下の礼をとった。
「おぉっ、よくぞきてくれたなカイルズ! こちらの少年が、ハルコン・セイントークか?」
「陛下、息子共々お招き頂き、大変深く感謝申し上げます。こちらがハルコン、我が家の3男となります」
「ほぅ、そうかそうか。いつぞやの普請工事の査察の際、我が娘を魔物から救って貰い、大変感謝申し上げる!」
そう仰って、頭をお下げになられる王ラスキン。
「「へっ、陛下、頭をお上げ下さいっ!」」
ハルコンと父カイルズが、慌てて杵つきバッタのようにお辞儀を何度も繰り返すので、王ラスキンは気を良くしたように、ニヤリとお笑いになった。
「シルファー、王立学校ではハルコンの『友人』として、大変仲良くやっているそうじゃないか?」
「はい、それはもう、……大変仲良くさせて頂いております!」
笑顔のシルファー先輩にそう仰って、王ラスキンは嬉しそうに顎髭を弄りながら、ニヤニヤとされた。
これまでにNPCの目を通して陛下の人となりを知っていたハルコンだが、……。
やはりフランクな御方だなぁと思った。