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23 王都の森_10

   *          *


「ほぅ、シルファーよ。ハルコンとはお互い仲良くやっておるようだな。それは、誠にありがたいことだ!」


 王ラスキンが笑顔で仰ると、傍らの宰相もにこやかに頷いている。


 そうなんだよなぁ。陛下は、シルファー先輩と私をくっ付けたがってらっしゃるんだよなぁと、ハルコンは思った。


 前日の夜、シルファー先輩の侍女ソロンの目を通じて、本日の面会の王族側の目標を、ハルコンは大体のところ把握していた。


 陛下と宰相は、どうやら私のことを「婿」として迎え入れたいらしい。


 もちろん、シルファー先輩に押し付けるような素振りは、微塵もお見せになられなかったのだけれど。

 でも、……たぶん、聡明な先輩なら、とっくにお気づきになられてるんだろうなぁ。


 ちらりとシルファー先輩を窺うと、ニコリと微笑み返された。

 あぁ、やっぱりね。


「はいっ。学校ではお互い呼び捨てで構わないと申しているのですが、ハルコンは頑なに私めをシルファー『先輩』と呼ぶんですのよ! ねぇーっ、ハルコン!」


 そう仰って、輝くような極上のスマイルで、微笑みかけてこられるシルファー先輩。


 その笑顔の片隅には、「絶対、逃しませんわよ!」という、強い意志のようなものがハルコンには感じられた。


「はいっ! 学園事情に疎い私に様々な助言をして頂き、大変感謝する次第でございます」


 とりあえず、ハルコンは貴族の子弟らしく、恭しく申し上げるにとどめた。


 黙って笑顔のシルファー先輩。

 おそらく、ここらで本日は引き時と見定めているのだろう。


 すると、陛下は、「ほぅ!」と仰って、顎髭を楽しそうに弄られていた。


「そうだな、ハルコン。オマエは今日この日のために、いろいろと持ってきたんだったな?」


 父カイルズは、話がこれ以上ややこしくなることを警戒してか、話題をさりげなく移してきた。


「ほぅ。何か土産でもあるのか? とても楽しみだ!」


 陛下も父カイルズの話にお乗りになった。


 なるほど。これが王族とのやり取りなのかと、ハルコンは少しだけ肩が凝った。

 でも、そんなやり取りをよそに、まるで春の陽光の下のように朗らかでいらっしゃるシルファー先輩。


 やはり、シルファー先輩にとって、こんなことは至って普通なんだろうなぁとハルコンは思った。

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