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24 ハルコンの名声_16

   *          *


「女エルフさん、お疲れ様です。今、『念話』しても構いませんか?」


『ハッ、ハルコン様っ!? もっ、もちろん大丈夫ですっ!!』


 突然の「念話」に驚いたのだろう。女エルフの心が大いに揺れて緊張するのを、思念を同調させているハルコンもダイレクトに感じた。


「驚かせてすみません。今、女エルフさんはどの辺りにいらっしゃいますか?」


『先程国境を越えたところです。継馬を手配して頂いたおかげで、迅速に動くことができました!』


 ハルコンは、まだあれから16時間しか経過していないのに、もう国境を越えたことに正直驚いた。

 通常なら、馬車で一週間以上かかる距離を、ごく短時間で女エルフは移動してしまったのだから。


「それは良かったです。女エルフさん、あなたが身体を壊したら身も蓋もありませんから、……。これからは隣国コリンドで継馬もできませんので、ムリをせずお願いしますね!」


『了解です、ハルコン様!』


 心なしか、ハルコンの視覚野に映る風景の移動速度が、若干収まったように見える。


「女エルフさんの見立てでは、後どれくらいかかりそうですか?」


『そうですねぇ、……今からムリに帝都に向かっても、夕刻には門が閉められてしまいます。私の身体能力を駆使すれば宮殿に侵入も可能ですが、……如何いたしましょう?』


 ハルコンは、隣国の第三皇女殿下の容態を、とにかく一度診てみないと何とも言えないなぁと思った。


 とにかく、隣国の情報はあまりにも少な過ぎる現状のため、迷いどころなのだが、……。


 ハルコンは、ここでちらりと紅茶を飲んでいる女神様を見た。


「明朝、宮殿に訪ねても問題ありませんよ。向こうの姫君の容態は、今持ち直しているようですから、……」


「ありがとうございます!」


 ハルコンは女神様に頭を下げると、再び女エルフに「念話」を送った。


「今、隣国の姫様の容態は落ち着いているようです。もう直ぐ夕方ですから、本日は移動を終えて、野営をして頂けますか?」


『了解です。私はまだまだイケますが、馬がそろそろ限界のようです。近くの河原で、これから準備に入ろうと思います』


「そうなさって下さい。とりあえず、落ち着いたら軽食と飲物を差し入れますので、受け取って頂けますか?」


『えっ!? ハルコン様、差し入れって!? 一体、何を仰られているのですか?』


「はい。キンキンに冷えた飲み物と、王都で流行のサンドイッチを用意しますので、それまで野営の準備をなさって下さい!」


『了解です。よくワカりませんが、とりあえず野営の準備をして、次の連絡をお待ち申し上げます!』


 ハルコンは、ここで「念話」を切ると、女神様にペコリと頭を下げた。


「さて、……と。ハルコン君は、これからいろいろと忙しそうですから、私はここで帰らせて頂きますね。『マジックハンド』のスキルをちゃんとお渡ししましたから、……どう使っても構いませんよ!」


「ありがとうございます! 何から何まで、大変感謝申し上げます!」


「いぃえぇ。では、またの機会に!」


 その言葉と共に、笑顔の女神様はスッと姿をお隠しになられた。

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