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25 帝都に赴く女エルフ_01

 外で、夕方6時を示す鐘が鳴った。


「さて、……と。食堂のおばさんに頼んで、軽食を用意しようかな」


 ハルコンは一人呟くと、居室兼研究室を出て寮の大食堂に向かった。


 中に入ると、食堂の席には多くの学生が食事をしたり、仲間ウチで談笑したりしていた。

 ハルコンは、いつものように慣れた調子で厨房のドアをノックする。


 そのまま進んでいくと、作業エリアの隅っこの棚の上に、いくつもの軽食がトレーに載って並んでいた。


「ハルコン君、持っていくトレーの番号と、サインお願いねっ!」


 調理中の厨房の奥から、おばさんが大きな声で話しかけてくるので、「ワカりましたぁ~っ!」とハルコンも大声で応じた。


 ここの軽食は、食堂で食べる時間のない学生や職員向けに、特別に用意されたものだ。


 元々そんな裏メニューはなかったのだが、ハルコンが厨房にお願いしたところ、他の人もこれは助かるとばかりに利用し始めて今日に至る。


 ハルコンのような研究生や職員達は、なかなか食べる時間が取れないため、ホンとありがたいサービスだ。


「今日はどれにするかな?」


 ハルコンはざっと見てから、サンドイッチと冷スープ、サラダのセットのトレーを取り、黒板にチョークでサインすると部屋を出た。


 食堂を出て廊下を歩いていると、女子寮に続く通路からサリナ姉とミラ、他に何人かの女子グループとすれ違った。


「ハルコン、今日も自分の部屋で食事なの?」


「いや、これは知人に届ける用だよ。後で、食堂で食べるつもり」


 ミラが心配そうに訊ねてくるので、ハルコンは笑顔で応じた。


「なら、たまには私達と一緒に食べない? せめて、デザートだけでも、……」


「了解。10分したら戻ってくるから。ミラはサリナ姉さん達と先に食べてて!」


「うん。ワカった!」


 そう言って、お互いに笑顔で手を振って別れる。

 ちらりと振り返ると、サリナ姉がミラに、「お熱いねぇ、お二人さん!」と言って揶揄っている様子が窺えた。


 ミラもまんざらでもなさそうに、少しだけ頬を赤く染めて笑っている。


「ヨシッ、……と」


 ハルコンは軽食の載ったトレーを持って、自室に急いだ。


 先程、女神様から頂いたスーパーチートスキル「マジックハンド」。

 そのスキルを使って、これから隣国にいる女エルフに食事を届けるのだ。


 ちゃんと、上手くいくのかなぁ? 

 とにかく、早くスキルを試してみたいなぁと思い、ワクワクしながら部屋のドアを開けた。

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