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25 帝都に赴く女エルフ_03

   *          *


「どうですかっ? ちゃんと届きましたか?」


 ハルコンはそう訊ねつつ、女エルフの視野を借りて自分でも見てみた。


 すると、先程までこちらにあった夕食の載ったトレーは、女エルフが手を突いた直ぐ傍の河原の石の上に、ちゃんと置かれていた。


 果汁入りのミルクの入ったコップが倒れていることもなく、刻んだ野菜や豚小間の入った冷スープもこぼれておらず、もちろんサンドイッチの載った皿も割れていない。


『ハルコン様っ! 無事届きましたっ!! 何だか美味そうですねっ!!』


 女エルフから、明るい調子の報告がさっそく届いてきた。


「良かったです! では、そこにアルコールを塗布した脱脂綿がありますので、それで指先をよく拭いてから召し上がって下さい!」


『脱脂綿? あぁその白い綿みたいな布ですね? アルコールと仰いましたが、それを吸っても構わないのですか?』


「絶対、ダメですからねっ! 度数が強いですから、喉をやられてしまいますよっ!」


「そうですか、……残念です」


 そう言って、女エルフは脱脂綿で指先を丁寧に拭き始めた。

 どうも、こちらの人間はアルコール好きがホンと多いよなぁとハルコンは思った。


 さっそく、焚火の傍で女エルフは夕食を始めた。


『美味いです、ハルコン様。差し入れありがとうございますっ!』


「それは良かったです。実はですね、……この転送スキルって、先程覚えたばかりでして。他にも思い付いた使用法がありますので、しばらくお手伝いをお願いしてもよろしいでしょうか?」


『えぇ、もちろんです。ぜひ、私でお役に立つことができれば喜んで!』


「ありがとうございます。私もこれから食事を摂りますので、またしばらくしましたら、『念話』でご連絡しますね!」


『はい、了解です。ハルコン様っ!!』


 それから数分、黙って女エルフの様子を窺っていたハルコンだが、……。女エルフは、美味そうにサンドイッチを頬張っているので、特には問題なさそうだ。


 ふふっ、上出来っ!

 うん。このスキル、かなりお手軽で、使い勝手いいかも!


 ハルコンは足取り軽く部屋を出て、再び食堂に向かった。


 さっきミラ達に会ってから、まだ10分も経っていない。


 とりあえず、ここ最近ミラやサリナ姉様達と食事を摂っていないからさ。

 たまには、一緒に食事するのもいいよね。


 私はこう見えて、かなぁ~り女の子に気配りのできる男の子なんだぞ!


 そんなことを思いながら、ハルコンは軽いステップで、鼻歌交じりに廊下を急ぐのだった。

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