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「ねぇ~っ、ハルコン。さっきまで、キミは誰と会っていたの?」
ハルコンは配膳コーナーで晩の定食を貰い、ミラ達のいる席に向かうと、さっそく姉サリナが訝しげに訊ねてきた。
見ると、ミラも少しだけ心配したような表情を浮かべていて、もう一人の、おそらくフラワーアレンジメントのサークルの会員らしき少女も、興味深そうにこちらを見つめていた。
「仕事仲間に、食事を届けてきただけです。姉様のお気遣いは無用ですよ!」
そう言って、ニッコリと微笑みながら、ミラの席の隣りにトレーを置いて座った。
すると、ミラがこちらを見てニコッと笑うので、ハルコンも笑顔で頷く。
「まぁいいわ。あなたのそういうところ、昔からガードが固いですからね!」
そう言いながら、サリナ姉は器用にフォークで煮た芋を口に運んだ。
サリナ姉が食事に目を向けると、すかさずミラの意識がこちらに向いてくる。
「ハルコン、キミって最近ずっと忙しいよね? ちゃんと食事摂っているの?」
「平気、平気。問題なしっ!」
「もぉ~っ、ハルコンったら!」
ハルコンが肘を曲げて力こぶを見せると、ミラは少しだけ不服そうな顔をする。
「どれどれぇ、今晩の定食、とても美味そうだ。冷めないウチに早く食べちゃぉ~っと!」
さっそく、ハルコンは機嫌のいいところをアピールすると、食事に取りかかった。
「ふふっ、こうしていると、ハルコンもまだまだお子様ね!」
「そうなのでしょうか? でもサリナさんがそう仰るのなら、そうなのかも、……」
「料理、冷めちゃうよ。ミラちゃんも食べましょう!」
「はい、……」
サリナ姉もミラも、……再び食事に手を付け始める。
その様子に、ハルコンは心の中でホッとため息を吐く。
早く食べ終わって、作業の再開をしたい。今晩のウチに片付けておかなければならないタスクが、まだいくつも残っているんだからね。
ハルコンは久しぶりの食堂での食事にも拘わらず、頭の中はマルチタスクに作業を如何にクリアするかということばかり考えていた。
先程試してみた「マジックハンド」というスーパーチートスキル。
あれって、単なる転送スキルってだけでなく、遠隔操作もできるんじゃないかなぁ。
前世の日本でも、都市部の医者が遠隔装置で僻地の患者を治療する技術ってあったよね。
あれ、イケるんじゃないかなぁ、……。
「ほら、見なさいミラちゃん。ハルコンは、いつものハルコンよっ!」
「そうですね、サリナさん。また遠くの方を、ぼぉ~っと見つめちゃってますからね!」
女の子達がクスクスと笑い出す。
でも、ハルコンは相変わらず2日先のことばかり考えていた。