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「女の子って、……怖ぇ~っ!」
どうやら姉達は、こちらのことなど先刻お見通しだったようだ。
ハルコンはバクバクする心臓を左手で押さえながら、自室兼研究室に戻った。
光魔石の照明を灯し、再び室内に侵入者がいないかざっと確認すると、軽装服のまま冷蔵庫を漁り始めた。
ハルコンは、これまで懇意にしてきた6人のNPCに、さっそく思念を同調させる。
6人のNPCとは、中年の一級剣士、中年の一級鍛冶士のドワーフの親方、若い女盗賊、妙齢の女占い師、中年の大店の商人、そして狩人の女エルフだ。
ハルコンは6人が皆本日の作業を終え、晩飯を食べていることを確認すると、さっそく念話で声をかけてみることにした。
「皆さぁ~ん、今、連絡をしてもよろしいでしょうかぁ~っ?」
すると、直ぐに『おっ、本日の定時連絡だな!』、『ハルコン殿、よろしいですぞ!』、『えぇ、構いませんわ!』といった念話が、続々と戻ってきた。
ハルコンは念話を送りつつ、冷蔵庫の冷凍槽の氷をザラザラと木勺でかき混ぜた。
「えぇ~、それではさっそく始めますね。先程、皆さんには私と女エルフさんとのやり取りを映像でお送りしましたが、……、如何でしたか?」
つまり、新たに得たスーパーチートスキル「マジックハンド」の感想を、皆さんから貰おうと思ったのだ。
『凄いな、……さすが、「神の御使い」様だけあるな!』
『大変、素晴らしいです! ハルコン様は何でもできるのですね!』
『もしよろしければ、私どもの商品の輸送にお力添えを頂けないでしょうか?』
様々な感想を貰ったけど、どれも概ね好評のようだ。
「皆さん、本日も大変暑いですね。冷たい飲み物が欲しいところでしょう。では、お手持ちのコップを前に翳して頂けますか?」
『おぉ! これでいいのか?』
『こうでしょうか?』
『坊、前に翳したぞ?』
『仰せのままに!』
等と様々な反応を示すが、皆それぞれコップを前に翳してくれた。
「それでは暑い夏の、私から皆様へのプレゼントですっ!!」
ハルコンはそう言って、冷蔵庫の氷を6人の翳すコップに、スキル「マジックハンド」でそれぞれ転送した。
すると、音もなく、波紋も立てず、……コップの中にスッと収まる氷。
『『『『『『オォ~ッ、氷ぃっ!?』』』』』』
6人のNPC達は、皆大喜びだ。