* *
「皆さぁ~ん、どなたか氷がこぼれてしまった方は、いらっしゃいますかぁ~っ?」
『さすが、ハルコン殿! 素晴らしいぞっ!』
『問題ねぇだすな!』
『ちゃんと、入ってるぞ、坊!』
『誠に凄いですなっ! 問題なく、コップに入っておりますぞ!』
『えぇ、全く、……』
『真夏に氷、……とてもありがたい!』
ふふっ、……どうやら、力加減が上手くいったようだね。ハルコンは思わずニコリと笑った。
「とりあえず、こういった具合で物質の転送が可能です。今後、皆さんに協力を仰ぐことになると思いますが、……構いませんか?」
すると、しばらくの間6人のNPC達は各々黙っていたのだが、……。
『いいのでは、……ないだろうか?』
『ハルコン殿に従うのみだす』
『確かに。それでいいじゃろうて』
『ですな。私もぜひ協力させて頂きたいところです』
『もちろんですとも』
『同じく』
「良かったぁ~っ! 皆さん、ありがとうございます!」
6人のNPC達は、皆協力してくれるそうだ。ホンと心強い仲間達だなぁと、ハルコンは心にグッときた。
『ところで、ハルコン様。ひとつお訊ねしても、よろしいでしょうか?』
妙齢の女占い師さんからの質問だ。この人は、王宮のご意見番をする程の手練れだから、とても大事な話が予想される。
とりあえず、心を引き締めてかからなければと思い、ハルコンは少しだけ身構えた。
「はい。何でもお訊ね下さい!」
『では、……。ハルコン様は今、王立学校の貴族寮にいらっしゃるのですよね?』
「えぇ。まぁそうです」
『なら、私も王都におりまして。例えばですが、ハルコン様の新たなスキル「マジックハンド」は、……人間の移動も可能でしょうか?』
「えっ!? まだ、私は人間の転送を試してはいないのですが、……」
それは、さすがに躊躇するよ。だって、人体実験じゃん、マジで!
『でしたら、私でお試し下さいまし!』
女占い師さんは、ノリノリで訴えてくる。
いや、さすがにマズいだろ!
『ハルコン様、私も現在王都に滞在中です。今後のためにも、ぜひ、その実験に参加させて頂けないでしょうか?』
すると、大店の商人まで、いつになく強い調子で訴えてきた。
ムムムムムッ。さて、……どうしようか?
ハルコンは、2人の提案に乗るべきか否か、……思わず考え込んでしまった。