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26 隣国の姫君の容態_03

   *          *


「おはようございます。どうしましたか? こんな朝早くに?」


 ハルコンは少しだけ徹夜をしたけど、一応2、3時間はちゃんとベッドで寝ている。

 だから頭はスッキリしているし、顔色も悪くない。


 ところが、ハルコンの目から見て、シルファー先輩も寮長も顔色が若干悪く、目の下にはクマができている。

 一体何事だろうかと、ハルコンは少しだけ警戒した。


「ハルコン、もうできているのか?」


「えっ!? 何がです?」


 寮長が真剣な面持ちで訊ねてきたものの、ハルコンとしては、現在作っている仙薬エリクサー「プロトタイプA」について、自分から「はい、できました」なんて言えるワケがない。


 だから、少し惚けるように返事をした。


「聞いていますよ、ハルコン! あなたが仙薬エリクサーを隣国の第三皇女殿下の許まで送ったことを!」


 シルファー先輩が、真剣な眼差しで問い詰めてくる。おそらく、先日寮長が王宮に今回の件を報告にいった際、この件で話し合いがあったのだろう。


 とりあえず、2人の様子を見て大体察しが付いた。まぁ、……王宮での極秘の会議で、碌に寝ないで話し合いが行われていたのだろうなぁとハルコンは理解した。


「なら、ご説明いたしますが、この場で私が話しても、……問題ありませんか?」


 そう言って、ハルコンはちらりと寮長を見た後で、シルファー先輩に直接訊ねた。


「えぇ構いません。寮長は学生の身分ながら、王宮に仕えております。王立学校での出来事を王宮に伝えたり、私達王族の身の回りの世話をする係でもあります」


「そうでしたか」


 なるほど、やはりそうだったかとハルコンは思った。


「ですから、ここであなたが私達に話すことは、王宮の一部の者以外、一切伝わることがありませんので、安心して話して下さい」


 ハルコンは、シルファー先輩が早朝にも拘わらず制服を着ているのを見て、これから私も王宮にいかないといけないのかなぁと思った。


 今は、できれば実験の続きをして、簡単でもいいから結論を出したいところなのに、と思う。


「では、立ち話もなんですから、中にお入り頂けますか? 湯も丁度沸いているところですから、軽く飲物でも飲みながらは如何でしょう?」


「えぇ、ワカりました。それでは失礼いたしますね」


 シルファー先輩はそう言ってニコリと笑うと、寮長とは真面目な顔で頷き合って室内に入っていく。

 ハルコンは実験台の空いた席に2人を着かせると、お茶の準備を始めた。


 さて、……と。

 とりあえず、2人を招き入れたけれど。何だろう? やはり、難しい話になるのかなぁ。


 本音を言うと、……今は、少しでも早く実験の続きをしたいところなんだけどさぁ。

 でも、今後の作業は、王宮のバックアップがどうしても必要だから、こういった突発の打ち合わせも必要になってくるとは思うんだ。


 なら、私一人じゃねぇ、……。全てには上手く対応できないだろうなぁ。

 どうしよっか? 誰かいい助手になってくれる人がいてくれると、助かるんだけどね。

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