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29 仙薬エリクサー_02

   *          *


「「やったぁ~っ!!」」


 ハルコンとミラは、エリクサーの開発成功に、思わず笑顔でハイタッチした。


 こちらの世界でも、私はついに仙薬エリクサー「タイプA」を開発できたよっ!

 そう思って、胸をグンと張ってみる。


「うふふふっ」


 すると、思わず笑みがこぼれてしまう。まぁ、それくらい構わないよね?


「ねぇ、どうするの、ハルコン? このことも王宮にちゃんと伝えるの?」


 そこはミラも貴族の子女だ。極めて現実的な表情をして、こちらに訊ねてきた。


「ん~っ? もちろん、内緒だよ、ミラ!」


「えっ!? そうなの?」


「だってさ、……私の長年の成果を、国に横取りされては堪らないからね!」


 今後の身の安全のためにも、絶対、絶対秘匿だよっ! と、ハルコンは思った。


「ふぅ~ん。そうなんだ、……」


「何か、ご不満でも?」


「だって、……いつものハルコンならさ。今回もまた『タイプA』を、世の中の困った人達のために、大量に安価で提供するんじゃないのかなぁって思ってさ」


「なるほど、……」


 ハルコンは、仙薬エリクサー「タイプA」の開発に成功したものの、しばらくの間は秘匿するつもりでいた。


 だが、ミラの言い分の方が、ず~っと理に適っている。


 そもそも私は、金にも名誉にも、それ程関心のない人間だ。

 むしろ、世のため人のためという活動を、これまで行ってきたんだよね。


 そして、そんな私の傍には、いつでもミラがいた。

 ミラは私のことを、どんな時でも献身的に支えてくれた。


 ミラにそう言ったら、「それは、お互い様だよ!」といって、いつもの照れ笑いを浮かべるんじゃないのかな?


 なら、私のやるべきことは、これで決まりだ。


「ワカった。ミラの言うとおり、私は『タイプA』のことも王宮にちゃんと報告する。それでいいね?」


「うんっ!」


 ミラが屈託なく笑った。

 その笑顔を見たら、何だかこちらもホッとした。


 それからの数日間、ミラと共に、研究室で「タイプB」の培養の作業を続けていた。


 隣国コリンドに追加で届ける分と、こちらの王宮に届ける分。

 ウチの小さな研究室の設備では、そろそろ限界を迎えそうだなぁとハルコンは思った。

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