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「「やったぁ~っ!!」」
ハルコンとミラは、エリクサーの開発成功に、思わず笑顔でハイタッチした。
こちらの世界でも、私はついに仙薬エリクサー「タイプA」を開発できたよっ!
そう思って、胸をグンと張ってみる。
「うふふふっ」
すると、思わず笑みがこぼれてしまう。まぁ、それくらい構わないよね?
「ねぇ、どうするの、ハルコン? このことも王宮にちゃんと伝えるの?」
そこはミラも貴族の子女だ。極めて現実的な表情をして、こちらに訊ねてきた。
「ん~っ? もちろん、内緒だよ、ミラ!」
「えっ!? そうなの?」
「だってさ、……私の長年の成果を、国に横取りされては堪らないからね!」
今後の身の安全のためにも、絶対、絶対秘匿だよっ! と、ハルコンは思った。
「ふぅ~ん。そうなんだ、……」
「何か、ご不満でも?」
「だって、……いつものハルコンならさ。今回もまた『タイプA』を、世の中の困った人達のために、大量に安価で提供するんじゃないのかなぁって思ってさ」
「なるほど、……」
ハルコンは、仙薬エリクサー「タイプA」の開発に成功したものの、しばらくの間は秘匿するつもりでいた。
だが、ミラの言い分の方が、ず~っと理に適っている。
そもそも私は、金にも名誉にも、それ程関心のない人間だ。
むしろ、世のため人のためという活動を、これまで行ってきたんだよね。
そして、そんな私の傍には、いつでもミラがいた。
ミラは私のことを、どんな時でも献身的に支えてくれた。
ミラにそう言ったら、「それは、お互い様だよ!」といって、いつもの照れ笑いを浮かべるんじゃないのかな?
なら、私のやるべきことは、これで決まりだ。
「ワカった。ミラの言うとおり、私は『タイプA』のことも王宮にちゃんと報告する。それでいいね?」
「うんっ!」
ミラが屈託なく笑った。
その笑顔を見たら、何だかこちらもホッとした。
それからの数日間、ミラと共に、研究室で「タイプB」の培養の作業を続けていた。
隣国コリンドに追加で届ける分と、こちらの王宮に届ける分。
ウチの小さな研究室の設備では、そろそろ限界を迎えそうだなぁとハルコンは思った。