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数日後、父カイルズとミラの父ローレル卿が、寮の研究室に2人して訪ねてきた。
「なぁ、ハルコン。オマエはついに、仙薬エリクサーを開発したのだな?」
「はい、父上。先日完成し、サンプルは王宮に既に献上しております!」
「そうか。よくやったな!」
「はい、……」
相変わらず耳の早い父だなぁと、ハルコンは思った。
「ハルコン。オマエには王宮から男爵への昇格の打診が届いている。ミラ嬢にも、同様に爵位の授与が予定されているそうだ!」
「「えっ!?」」
寮長から前段階の話として、確かにそんなことを言われていたのだが、……。
あいにく、研究の進捗の方がずっと重要で、大して気にも留めてなかったんだよなぁ。
「とりあえず、2人とも、今から正装をして王宮に向かうぞ! 直ぐに支度してくれ!」
「「はいっ!」」
返事をするや否や、さっそく着替えの準備に取りかかった。
「ミラちゃん、なる早で着替えるよ! もう部屋に用意してあるから、それに着替えてくれるかな?」
姉サリナも研究室にやってきて、手伝いを買って出る。
「はっ、はいっ! サリナさん、お手数をおかけします!」
「いいのよ、私達の仲じゃないっ!」
「ありがとうございます!」
ミラはサリナ姉に一礼すると、直ぐに女子寮に戻っていく。
とりあえず、サリナ姉さんに任せておけば大丈夫かなぁとハルコンは思った。
「ハルコン。オマエも直ぐに着替え始めなさい。以前王宮に着ていった服があるだろ? それでいいんじゃないか?」
「はい、父上」
ハルコンも父カイルズの指示に従って、着替えの準備に取りかかる。
正装の服を衣装タンスから取り出すと、手際よくベッドに並べて、パッパッと着替え始めた。
ちらりと見ると、父カイルズとローレル卿が何やら話をしているのだが、こちらからは聞き取れない。
まぁ、たぶん非公式とはいえ国王陛下と面会をするのだから、その件で打ち合わせでもしているのだろうとハルコンは思った。
20分後には、何とか両家とも支度が整った。
ミラの正装はなかなか凛々しく、それでいて優美な雰囲気のある仕立てだった。
「なかなか、似合ってるね!」
「うんっ、ハルコンも!」
貴族寮の車止めでミラと頷き合うと、それぞれの家の馬車に乗って、王宮に向かった。