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セイントーク家とシルウィット家の両家が案内された部屋は、前回ハルコンが招かれた部屋の隣りで、こちらも20畳くらいのスペースだった。
必要最低限のソファーセットと家具が数点、絨毯の柄がシックで、とても落ち着く室内だ。
「ご両家の方々、陛下がこられるまで、こちらでお待ち下さい!」
「ふむ、ここまでの案内、誠に感謝申し上げる!」
両家を案内した騎士数名が、父カイルズとローレル(ミラの父のこと)卿に向かって敬礼をするのでこちらも応じると、騎士達は部屋を出ていった。
「カイルズ卿、……私もミラも、少々場違いのような気がしてなりませんな」
「いいえ、ローレル殿。貴殿のところのミラ嬢がハルコンを手伝ってくれたおかげで、こうして我々は王宮に招かれたのです。私からも、ミラ嬢には大変感謝しておりますぞ!」
「誠に、かたじけない!」
父カイルズの言葉に、ローレル卿は若さの抜けない笑顔を浮かべた。
ハルコンとミラが今回の席の主役だが、まだ2人とも7歳だ。
今後のことを語るには、2人とも幼い。大人達は責任をもって全面的にサポートするつもりでいるのだろう、とハルコンは思った。
しばらく4人はソファーに腰かけて待っていると、……。
王ラスキンと宰相、シルファー先輩と侍女のソロンの4人が入室してきたので、揃って立ち上がって、臣下の礼をとった。
「おぉっ、よくぞきてくれたなカイルズ、ローレルよ! 優秀な子を持って、誠に幸せなことであるな!」
「陛下、息子共々お招き頂き、大変深く感謝申し上げます」
先ず、爵位がローレル卿より上の父カイルズが、陛下に対して挨拶を申し上げた。
ハルコンも、父カイルズと一緒に頭を下げる。
「陛下、我が娘共々この席にお招き頂き、誠に感謝に堪えません」
シルウィット家も、その後に続く。
「ほぅ、そうかそうか。いつぞやの普請工事の査察の際、我が娘を魔物から救って貰い、こちらこそ大変感謝申し上げるぞ!」
そう仰って、頭をお下げになられる王ラスキン。
「「へっ、陛下、頭をお上げ下さいっ!」」
ミラとローレル卿が、慌てて杵つきバッタのようにお辞儀を何度も繰り返すので、王ラスキンは気を良くしたように、ニヤリとお笑いになった。
それから気さくな雰囲気で王族の2人が席に着くと、宰相とセイントーク家とシルウィット家の5人も後に続いた。
シルファー先輩の侍女セロンが、今回も手際よく紅茶を給仕している。
「さて、……シルファー、王立学校ではハルコンとミラの『友人』として、大変仲良くやっているそうではないか?」
「はい、それはもう、……大変仲良くさせて頂いております!」
ここで、キャハッとこちらに右手を軽く振って、笑顔を見せるシルファー先輩。
ミラは学校での気さくな関係が、こうした非公式とはいえ王族との面会の席でも継続することに、目を白黒させている。
どうやら、身分を越えた自然な関係を求めてこられる王族に、ローレル卿もミラも度肝を抜かれているようだ。
だがハルコンは、このような席はもう二度目だ。
やはり、……陛下もシルファー先輩も、王族なのにフランクな御方だよなぁと思った。