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「ハルコン、そしてミラよ。両名のこたびの成果、ファイルド国の一代表として、誠に深く感謝申し上げる!」
陛下はそう仰って、こちらに対し頭をお下げになられると、シルファー先輩と宰相もその後に続いた。
「えっ!? へっ、陛下っ!? 殿下、宰相までっ!? どうか頭をお上げ下さいっ!!」
その言葉を合図に、セイントーク家とシルウィット家の両家4名が、いっせいに矢のように立ち上がった。
直ぐさま王族2名の許に駆け寄って、その足元に跪くと、流れるように臣下の礼をとった。
ハルコンも父カイルズに習って、跪いたまま国王陛下を見上げた。
すると、目と目が交差したその瞬間、陛下に両手をギュッと掴まれてしまった。
とても痛い。痺れる程強く握られてしまい、子供の力では振りほどくこともかなわなかった。
辛うじて陛下に笑顔を向けると、目前の陛下は目に涙を湛え、熱狂するような瞳でこちらの心の奥深くまで見つめてこられたのだ。
「ハルコンよ、……我が妃もまた、長年の間、病で臥せっていてな。オマエが先日王宮に提出した薬剤を飲ませたところ、たちまち立って歩くまでに回復したのだっ!」
「それは良かったです。その薬剤とは、『タイプA』をお飲みになられたのでしょうか?」
「いいや、『タイプB』の方だった。『タイプA』はオマエの指摘どおり、人間での治験を経てから飲ませるつもりであった」
「そうでしたか、……」
なるほど、……ね。隣国コリンドの第三皇女殿下が病から回復したことを、こちらの王宮も漸く掴んだのか。
向こうの情報が、そろそろ伝わってくる頃合いだったしね。
まぁ、……でもさぁ。
私にとって「タイプB」は、あくまで栄養剤の範疇なんだけどさぁ。
でも、こうして回復にまで至っているのなら、それは良かったとハルコンは思った。
「ハルコンッ! 我は今回の件で、オマエが『神の御使い』であることを確信したっ! これまで王国に大いに貢献してきたことを、ここに深く感謝申し上げるっ!」
陛下の両手が力強くこちらの両肩を押さえ込むと、そのまま抱き付いてこられた。
「とん、……でもない、……です」
「いいや、礼を言わせてくれ! オマエには、感謝しても感謝し切れないのだ、……」
陛下の双肩は、王国民数百万の命を背負っている。
その重責に長年耐え続けてきた男の迫力に、ハルコンは思わず感服せざるを得なかった。