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次に実務面に話が移ると、今度は宰相が笑顔でこちらに話しかけてきた。
「さて、……今後についてなのだが、ハルコン。オマエはこれまでどおり、王立学校に学生として通って貰いたい。学業が本分なのだから、それで構わないな?」
「はい、もちろんです、宰相閣下!」
ハルコンの言葉に、大人達は皆ホッとした表情を浮かべた。
どんなに素晴らしい実績があろうと、まだ7歳の少年に過ぎないのだ。
その年齢なら、学校で学ぶべきことが山ほどある。
とにかく、若いウチに人から学ぶことは、とても重要だ。
「ミラもハルコンと同じく爵位を得ることになるが、それに慢心することなく学業に励み、日々を大切に過ごしなさい。いいかね、2人とも?」
「「はいっ」」
宰相の言葉に、明るく朗らかに返事をするハルコンとミラ。
「いいだろう。我々王宮は、ハルコンに相応しい地位を既に用意している。今後、仙薬エリクサーの研究開発は王宮の管轄となる。その拠点となる研究所の所長を、ハルコン、オマエに務めて貰いたいのだ! どうか、引き受けてくれるか?」
「もちろんです、宰相閣下。謹んでお受けいたします。ですが、こちらからも二、三、……条件を出しても構わないでしょうか?」
ハルコンが笑顔で条件を出してきたことに、宰相は怪訝な顔をする。
「ハルコンよ、条件とは何だね?」
「はい。今後エリクサーを販売するに当たり、必ず安価で市民に提供すること。それは、ファイルド国のみならず、隣国、周辺諸国にも価格に差を付けることのなきようお願いできますか?」
「ほぅ。ならば、我々の方針に合致するな!」
宰相は、とても感心したようにこちらを見てきた。
「もし良ければ、その方針をお聞かせ頂けますか?」
「ふむ、ハルコンよ、……我々ファイルド国は、今後、周辺諸国とは古くからの友人のように接する、『善隣外交』を国是とする方針に決まった。そのためには、どうしてもオマエの生み出した仙薬エリクサーが必要なのだ!」
「つまり、仙薬エリクサーで、周辺諸国から薬学・医療・衛生面でリードしたいワケですね?」
「そのとおりだ! 我々は、この薬剤で周辺諸国と融和を図りたいのだ!」
宰相の表情は、とても真剣そのものだった。
長らく続いていた戦乱の世も終わり、今は戦後復興期の最中にある。
だが、いつ何時、元の暗い世界に戻るとも限らないのだ。
「了解しました。では宰相、……次の条件を申し上げます!」
ハルコンの言葉に、大人達がグッと表情を引き締めてきた。