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33 姫君ステラ・コリンドの留学 その2_04

   *          *


 ステラ殿下を招いた晩餐会で、大人達の社交(営業活動)がいったん落ち着いた。


 その主なロールプレイヤー(演じ手)はロスシルド伯夫妻だったが、ステラ殿下は終始気のない態度を取られているようにハルコンには見受けられた。


 夫妻があえなく玉砕したタイミングを見計らって、シルファー先輩が、「次は私の番だよ!」と言わんばかりに、満面の笑みを浮かべながらステラ殿下に声をかけられた。


「殿下、……王立学校で、私と仲良くして頂けますか? 殿下と私は、幸いなことに同じく11歳でございます。多くの講義で、ご一緒できる機会があると思いますわ!」


「それは大変ありがたく思います。こちらこそ、ぜひよろしくお願いいたしますね」


 シルファー先輩の言葉に、ステラ殿下は笑顔で深々と頭を下げた。

 年齢以上に大人びた所作をする殿下。室内の者は皆、感心してほぅ~っと溜息を吐いた。


「でしたら、後ほど私達子供だけで集まりませんか? 幸いなことに、この部屋にいる子供は皆10~15歳くらいと年齢がほとんど一緒なのです」


 シルファー先輩の言葉に、笑顔でひとつ頷くステラ殿下。

 それから、殿下は興味深そうな表情を浮かべ、先ずロスシルド家の長女イメルダと長男のノーマンを見た。


「殿下、もしよろしければ、今後『ご学友』を務めさせて頂いてもよろしいでしょうか?」


 イメルダが、いつもの高慢そうな表情を浮かべながら訊ねると、ノーマンもまた隣で「オレも、オレも!」と意気込んだ。


「えぇ、お願いいたしますね」


 殿下はそう仰って、ニコリと微笑まれた。

 その言葉に、ロスシルド家の子供達は、「やたっ!」と小声で嬉しそうに頷き合う。


 ステラ殿下は、次にミラに笑顔を向けた。

 ミラは嬉しそうにひとつ頷くと、お互いにニッコリ。


 まぁ、移動の馬車の中で2人はすっかり仲良くなっていたため、今更確認するまでもないのだろうとハルコンは思った。


 すると、殿下はさも無邪気そうに、こちらの表情をじぃーっと窺ってこられた。


「殿下、私も『ご学友』を務めさせて頂いてもよろしいでしょうか?」


 思わず殿下の無言の「圧」に耐え切れず、こちらからお声がけをした。


「えぇ、ぜひぜひっ! 私こそ、よろしくお願い申し上げますわっ!」


 ハルコンの言葉に殿下はパァ~ッと表情を輝かせて、何度もこくこくと頷きなされた。

 その様子に、シルファー先輩は少しだけ怪訝そうな表情を浮かべられた。


「まぁっ! 殿下はハルコンのことを、よくお知りのようですね? 移動中の馬車の中で、護衛任務の彼にお会いになっただけかと思いましたが?」


「はい、シルファー様。ハルコン様は私にとって命の恩人であり、我がコリンド国を救済なされた、偉大な方でいらっしゃいますわ!」


「そ、……そうなのですね?」


「はいっ、こうしてお会いできただけでも光栄なことなのに、私がハルコン様の『ご学友』にまでさせて頂けること、大変嬉しく思います!」


 その興奮した調子に、シルファー先輩は無言で目をぱちくりさせる。


「ハルコン、……あなた、向こうで何かやってきたのかしら?」


「いいえ、私はまだ隣国に出向いたことはありませんよ」


 シルファー先輩が、「あなた、また何かやらかしたのかしら?」といった表情でお訊ねになるので、とりあえず、こちらとしては客観的な事実のみお伝えすることにした。

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