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33 姫君ステラ・コリンドの留学 その2_06

   *          *


「ねぇ~っ、ハルコン。先輩と殿下のこの勝負、……今、どちらが優勢だと思う?」


「うぅ~ん、どうだろうねぇ、……」


 ただ今、シルファー先輩とステラ殿下が将棋を指している。その対局を見守っていると、隣りに座るミラが、こちらに身を寄せて耳元に率直に訊ねてきた。


 ハルコンの目から見て、両者の実力は伯仲していた。

 そのため、この対局、一体どちらに軍配が上がるのか、まだワカらないとしか言えない情勢だ。


 しばらく前にさかのぼる。

 二次会でハルコン達の今いる娯楽室には、セイントーク領産の様々なボードゲームが常備されており、室内の奥には、ビリヤードや卓球、麻雀の台も設置されていた。


 サリナ姉兄やイメルダ姉弟達上級生の組は、仲良くビリヤードに夢中のようだ。

 ハルコンがちらりと奥のグループを見ると、丁度マルコム兄がキューを巧みに構え、ブレイクショットをしているところだった。


 バチバチバチとボールがぶつかって弾けるような音と共に、「ナイスショット!」という掛け声が、次々とこちらまで届いてくる。


 一方、こちらの若年組の方では、先程からシルファー先輩がステラ殿下に、話題作りにいろいろとお訊ねになっていた。


「ステラ殿下、……今、隣国の娯楽は、何が流行っているのですか?」


「そうですねぇ、……ここ最近、ファイルド国から様々なボードゲームが輸入されていますが、私はその中でも将棋が一押しです!」


 シルファー先輩は、ステラ殿下から隣国コリンドの娯楽で将棋がブームになっていることを聞き出すと、話を少しだけ深堀りさせようと思われたようだ。


「将棋ですか? 私、そこそこできますよ? 将棋の考案者のハルコンから、直々に指導を受けておりますから」


 そう先輩は仰って、ステラ殿下にニヤリと笑みを向けられたのだ。


「私、結構強いですわよ!」


 そう軽い調子で応じられるステラ殿下。こちらも不敵な笑みを浮かべられた。

 もちろん、シルファー先輩も負けていない。


「なら、これから一局やりませんか?」


「えぇ、楽しみましょう!」


 お互いにそう仰ると、笑顔で頷き合って対局が始まったのだった。

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