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「何とか集積所の花々を再生することができて、これで一安心ですわ!」
そう仰って、こちらにステラ殿下は満面の笑みを浮かべられ、とてもホッとしたご様子だ。
「ホンとだよ、ハルコン! これで私達のサークルにも、花がちゃんと届くね! 何とか学校祭のイベントにも間に合うよ!」
「よかったですわね、ミラ!」
「はいっ!」
ミラの言葉にステラ殿下も反応されて、お互いに手を取り合って笑っている。
よしっ! 最初はサリナ姉様のサークルだけの問題だと思ったけど、……。
まさかっ、こんな大問題になっていただなんてね!
とりあえず、王宮が動いてくれたおかげで、無事解決できたかなぁと、ハルコンは思った。
「ハルコン、あなたのおかげですわっ!」
ステラ殿下が感極まった表情でそう仰って、こちらの両手を包むようにギュッと握ってこられた。
「いっ、いえ、……私はただ、姉の手伝いをしたいと思っただけですので、……」
何だろう、こそばゆいな。面と向かって礼を述べられてしまうと、何だかくすぐったくなるね。
「ふふふ、ハルコン照れてる、照れてる。顔真っ赤だよ!」
「えっ!? フェイスガードしているのに、よくワカったね?」
「ふふっ、長年の付き合いだからねぇ。それくらいお見通しさ!」
「なるほど、……」
ミラの言葉に、確かにそうかもと思った。
「ハルコン殿ぉ~っ! 何とか無事上手くいきましたぞっ!!」
向こうから、防護服に身を包んだ農業大臣が走ってこられた。
「はいっ、よかったです!」
大臣は大変暑がりなのか、目の前でフェイスガードを外されると、その顔には大粒の汗が滝のように流れていた。
季節は初夏の手前。現場まで気温計を持ってきていないからワカらないが、……おそらく、30度近くに達しているものと思われた。
ステラ殿下とミラも、検疫作業が終了したためフェイスガードを外すと、長い髪の隙間の額に、汗がしたたり落ちていた。
「お互い、凄い汗ですわね?」
「はいっ」
女子2人はニッコリと笑い合う。
「とりあえず、今回の作業で王都での花の流通を再開することができる。感謝しますぞ、ハルコン殿!」
「はいっ、お役に立てて光栄です、閣下!」
ハルコンもフェイスガードを外しながら、大臣に笑顔で応じた。
「今後、王宮からこの検疫作業の詳細をファイルド国各地及び近隣諸国にも伝え、同様の作業を随時行って貰う予定です!」
「はいっ! これから忙しくなりますね?」
「あぁっ。後は任せて下されっ!」
そう仰って、胸を張られる農業大臣。
久しぶりの快晴。季節は長い梅雨を終え、初夏に差しかかった。
何とか間に合ったなぁと、ハルコンはホッと一息吐く。
そして、……王立学校祭は、予定どおり週末の3連休に開催される運びとなった。