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「プフューイッ! ハルコン、ミラッ、……地方行脚から、漸く戻って参りましたわよっ!」
「「お疲れ様ですっ、シルファー先輩っ!」」
王立学校祭の前日の晩、シルファー先輩は当初の予定どおり、花枯れの事態を伝えに向かった西南地方から王宮に戻ってこられた。
ハルコンとミラは、急な長旅に疲れたご様子のシルファー先輩を、笑顔で出迎えた。
「それでね、ハルコン。花枯れの検疫作業、……ちゃんと、上手くいったのかしら?」
「えぇ、もちろんですとも!」
おそるおそる訊ねられる先輩だが、……。
でも、こちらの笑顔をご覧になって、直ぐさまパァ~ッと輝くような笑顔に戻られた。
「それはよかった! 私の向かった西南地方には、まだ花枯れの被害は発生してなかったんだけど。もし被害が出ていたら、情報なしでは何とも対応できないしね。こればっかしは、手間暇惜しんでいられないわ!」
「先輩の仰るとおりです。とりあえず、王都の集積所で大量の花枯れが起こっておりましたが、ハルコンBで無事対処できました!」
「ふむっ!」
「今後発生しても必ず対処できる旨、全国に改めてお布令を出して頂けるとありがたいです!」
「えぇ、王宮だけでなく、父上や宰相にも戻られたら直ぐにそうお伝えしておくわ!」
「よろしくお願いいたします」
そう言って、ハルコンが深々と頭を下げると、「それぐらい当然ですっ!」と先輩は仰って、ニコリと微笑まれた。
やはり、このファイルド国の王族達は、極めて有能な方々だと、ハルコンは改めて思った。
王宮は今回の花枯れについて、大変事態を重く受け止めていたようだ。
事態に機敏に反応して沈静化を図り、地方貴族達に情報を一切秘匿することはなかった。
ハルコンBで花枯れに対処できることを伝達するために、全国の重点地域に王族自らが出向いて対応することにしたのだ。
もし仮にただ役人を派遣するだけでは、事態の深刻さを王都と地方とで共有できないと王宮は判断。どうやら、その対処法が一番の正解だったようだ。
「ホォ~ンと、大変だったわよぉ~っ! ここ10日ほど馬車で移動していたものだから、お尻も脚もパンパン。早くお風呂に入って、マッサージして貰いたいわ!」
事もなげに、首と肩の関節をこきこきと鳴らす先輩。
以前にも増して、先輩は頼れそうな雰囲気をお持ちだなぁとハルコンは思った。
「ほらほらミラ、そんなクスクス笑っていないで! お互い報告会を兼ねて食事にしましょう! ほらっ、ハルコンも!」
「「はいっ」」
「その後、もう遅いから、このまま王宮に泊まっていきなさいな! ミラは食事の後で、私と一緒にお風呂に入りましょう! たまには、2人で洗いっこするのも悪くないわね!」
「ふふっ、大変光栄です、先輩!」
そんな2人の様子を見て、大変仲がよろしいですなぁと、ハルコンは思わず心がほっこりした。