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「へぇーっ、なかなかいい雰囲気のお店ですね!」
「ふひひ、そうでやしょ?」
そう言って、ハルコンと女盗賊の2人は店のドアを開けた。
彼女が連れてきてくれた店は、以前ハルコンが訪れたことのあるギルド本部の通りから、ひとつ路地に入ったところにあった。
おそらくその店の立地からすると、魔物を狩ってきて羽振りのいい冒険者達が、よく利用しているのではないかと思われた。
なるほど。-店の構えは、なかなか趣きがあっていいかもとハルコンは思った。
店の中に入っていくと、照明が程よく設置され、中には多くの冒険者達で賑わっていた。
室内は両側の窓が全て開け放たれていることもあり、夕風がとても心地よく流れてくる。
旨そうなソーセージの匂い、にんにくの匂い、最近流行りのバターの香りが、とても心地よく漂ってくると、思わず食欲を刺激する。
見ると、外が暗くなってまだ間もない時間ながら、もう店内にはところどころに酔客が横になっているのが見受けられた。
「いい店ですね!」
「あぃ。ここの奥の部屋で、皆がお待ちかねでやす!」
さて、……一体、誰が待っているのだろう?
ハルコンはそう思って女盗賊の顔をじっと見ると、彼女はくすぐったそうに笑った。
店内の奥まった部屋、……とはいっても障子のパーテションで間仕切りされているだけなのだが、……。
へぇーっ!? もしかして?
すると、……聞き覚えのある楽しそうな笑い声が、こちらの方まで漏れて聞こえてきたのだ。
「あちらでやす。ハルコン殿!」
「はい、……」
女盗賊に誘われて間仕切りの奥に入っていくと、これまで赤ん坊の頃から世話になってきた5人のNPC達が、楽しそうに盃を交わしていた。
「一同、ご覧あれっ! 本日のサプライズッ(もちろん、現地語では別の表現となります)、アタイらの『神の御使い』様、ハルコン・セイントーク子爵殿がご参加されるでやすよっ!」
「「「「「「ハッ、ハルコン殿っ!?」」」」」」
女盗賊が、陽気な調子でハルコンの両肩を掴みながら席に入っていくと、……。
既に宴を始めていた5人は、ハルコンの名を叫びながら、全員目を見張って立ち上がった。
「おっ、お元気そうで。皆さん、とてもお久しぶりですっ!」
総勢6人のNPC達が、私を囲んで笑ってくれた。中には、感激して目を潤ませている者も。
ハルコンは、NPC達との久しぶりの再会が、……とても嬉しかった。