「私、宮下 藍瑠は今を以って、北野 城二との婚約を破棄します!!」
藍瑠の俺に対する言葉に周囲は息を飲んで俺の方を見てる、勢いで俺に告げた藍瑠も興奮状態なのか顔を真っ赤にして息も荒い
そして藍瑠の隣にはこの物語の主人公にして城二の義弟
尊は清潔感のある短めの黒髪に凛とした大きな瞳、スッと通った鼻筋の整った顔の造形を持つイケメンだ、そして北野家に来てからずっと刑の鍛錬で培われた強靭な肉体で着やせするが
優しくて甘いマスクの正に「ザ・主人公!」を王道で行く美男子だ、そんな尊が心配そうに藍瑠の方を見ている
そして俺が返した言葉は...
「そうか・・分かった婚約破棄を了承する、今まで沢山迷惑をかけて、すまなかった」
そう藍瑠と尊に向かい深々と頭を下げると、顔を上げ素早くその場を立ち去ろうとする
「ちょっ!!それだけ?そんなアッサリ了承するの!?」
立ち去ろうとする俺の腕を掴み、さっきの俺の言葉を確認する様に尋ねる藍瑠に再び向きなおり再び軽く頭を下げると
「俺のとって来た行動と言動で此れまで沢山の人に迷惑をかけて来た、藍瑠...宮下さんのような素晴らしい女性にはきっと相応しい人がいる」
そして藍瑠と同様に驚きの表情で呆気にとられている尊を一瞬だけ見て藍瑠に視線を戻す
「へっ?宮下さんって...ちょっと城二君?」
状況が理解できないのか、俺の反応が思っていたのと違うからか、藍瑠は酷く困惑していた
「これからは、もう君に関わる事も無い...弟...尊とも気兼ねなく仲良くしたらいい、きっと俺なんかより君に相応しい自慢の弟だから」
「それじゃ二人とも、さようなら」
俺はそれだけ告げると、振り返る事無くその場を立ち去る
「えぇぇ~なんだか拍子抜けぇ~」 「本当ねぇあれだけ見ると城二君がなんか可哀そう」 「てか宮下さんて、城二君と婚約してたのに尊君と隠れて仲良くしてたとかちょっと見る目変わるわぁ――」
「!?っ・・・・」
藍瑠は周りの反応と自分に向けられた白い目に気付き自分の今の状況を冷静になって振り替える
『...尊君に相談して、今日の登校中に大勢の前で盛大に婚約破棄を告げ、城二君が言い訳出来ない様にしてから正式に両家に事情を説明して婚約解消しようって話だったけど・・・』
『確かに、傍から見たら私の一方的な婚約破棄を、無理やり城二君に飲ました様になってるわ・・・それに周りには尊君と浮気してたと思われてる・・・』
『尊君に城二君の執拗な嫌がらせを相談はしていたけど...私浮気なんて...』
藍瑠は後ろの尊に向き直ると
「ねぇ...尊君これで本当に良かったのかな...?」
「ああ、藍瑠は今まで良く我慢して来たよ...少し拍子抜けだけど、これでようやくあのクズ兄貴から解放されるんだ...これからは...」
「うん、ありがと...でも少し自分で今日の事、もう一度良く考えてみるね・・・ゴメンけど暫く一人にしてね...」
そういうと藍瑠は尊をその場に残し教室へと去っていった
「お、おい...藍瑠」
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そんな二人のやり取りを知らない城二は、一人教室に向かいながら今後の事を考えていた
(取り合えず目先の決闘イベントは回避出来たが、今後は尊や藍瑠の方から決闘の話しを持ち掛けてくるかも知れないな...やはり二人とは距離を置くのが最善だな)
そう俺の出した答え...
それは主人公とメインヒロインに近寄らない事だった...
藍瑠の方は婚約破棄を向こうから申し出てくれた事で、苦せずして関わりを絶つ事が出来そうだが問題は主人公である尊の存在だ...尊は俺の弟という立場だし今後も関わりを持つ機会は何度も訪れるだろう
唯一の救いは両親の計らいで、尊は学校の寮に住み俺は東京にマンションを借りて、もらいそこに住まわして貰ってるので私生活で顔を合わす心配が無い事だけだ
...そして、俺はこの婚約破棄イベントをぶち壊した事で、道代さんのヒロインルートも一緒にぶち壊したのだ
ゲーム本編ルートであれば、先ほどの婚約破棄イベントで俺から殴られた尊はコケた際に打ちどころが悪く負傷してしまう
そして、学校から連絡が入った北野家からの指示で尊を迎えに来た道代さんと帰ってる途中、
街のとある場所に立ち寄る事で道代さんがチンピラに絡まれるイベントが発生し
尊が怪我をおして道代さんを助ける事で道代ヒロインフラグが立つのだ
その後、城二に決闘で勝った尊は北野家から勘当され学校から去った城二に代わって
道代と一緒に都内のマンションに住まう事になり
先の道代のヒロインイベントでフラグ回収してると道代との恋愛ルートに入る事になる
しかし今回は、そもそも俺が殴らなかったので道代とのイベント自体が発生しなかった訳だ
尊には藍瑠との王道ルートで俺とは関わらない物語を進んでもらいたい
ゲームをプレイしていて何度と無く進めた道代ルートを思い出しながら、
今はもう関係ないと頭を振り次の作戦の事を考える
(次からは地に落ちた両親の俺への評価を少しずつでも回復する為、全力で行動しないとな...)
そんな事を考えながら自分の教室に入り席に着くと、
教室に居る数名のクラスメートが俺の方をチラチラみながら苦笑してる
『ねぇ城二君て今朝、宮下さんから婚約破棄を告げられたんでしょ?』『ねぇ~ダッサッ』『それにしても宮下さんも、したたかだよねぇ~尊君に乗り換えるなんて』『あ~それねぇ~でも、私でもあっちの北野君を選ぶわ~』『だよねぇ~城二君は無いよねぇ~』
流石に噂が広まるのが早いのは気になるが、事実は事実だ受け入れるだけだ、
それにこの噂が広まれば藍瑠と距離を置くのにも丁度いい
推しの一人でもあるメインヒロインの藍瑠には是非とも主人公である尊との恋愛を楽しんで幸せになって貰いたい...
そんな事を考えながら俺は自分の机の中に有る丸まった紙を取り出し机の上に手で広げる
【1学期実力考査28‘5/13、14実施 : 1日目:学力テスト 2日目:秘境実技テスト】
(多分、学力テストはなんとかなるが...)
【秘境テストについて注意点:
当日は秘境テストに参加する為の資格を確認する神視の試験を直前に実施します、
また秘境テストは2名以上3名以下のパーティ編成で実施します】