両親からのメールで釘を刺されている通り、
今回の秘境テストには何が何でも結果を残さねば再び俺に死亡フラグが立つのは間違いない
【秘境テストについて注意点:
当日は秘境テストに参加する為の資格を確認する神視の試験結果を直前に実施します
また秘境テストは2名以上3名以下のパーティ編成で実施します】
問題はこの注意点だ...俺こと北野 城二は自慢じゃないが
この世界では義務教育として刑は取り入れられてるのに何で避けてこれるのか...甚だ疑問ではあるが
城二が強いと、序盤でまだ力を付けてない主人公がボコボコに出来ないから
と言うのがキャラ設定会議で決まった北野 城二というキャラの立ち位置だ
(とはいえ...城二に才能が無いと決めつけるのは、まだ早い俺の攻略知識をフルで活用し、より効率的な刑を実践すれば何とかテスト当日に間に合う様に
問題は、もう一つの注意点である同伴パーティーメンバーだ...城二にも友人と言う名の取り巻き連中は居るが、誰も心から城二に付いてる者は居ない
実際に、決闘で城二が尊に負けて家を追われ行く宛が無くなり
取り巻きだった連中に連絡を取るが冷たく突き放され
「お前の事、前からウザかったんだよざまぁ見ろ」
と言われ絶望するシーンがワンカットだけゲーム内で紹介されていた
(あの連中はダメだ...例え頭数に入っても、いざとなったら裏切って俺を置いて逃げ出す姿しか見えない)
「やはり...彼女に頼むしか無いな」
そう呟き机に打つ伏せる
教室には次々と生徒が登校してきてご丁寧にさっきの噂好きの女子生徒が婚約破棄の話を次から次へと生徒に伝えてくれてる
(おそらくこの状況も俺を惨めな気持ちにさせて逆上させる為なんだろう...しかし俺も北野 城二が嫌いだから全然気にならないよ?)
朝のホームルームが始まる少し前に、取り巻きの一人の男子生徒が俺に声を掛けて来た
「城二君、噂聞いたけどムカつくよね、藍瑠の奴も腹立つけど恐らく城二君の弟の尊の入知恵だよ...アイツ、やっちゃおうよ」
嬉しそうにニヤニヤしながら俺と尊をぶつけようとする取り巻きの男に尋ねてみる
「なぁ話は違うんだけど、君は秘境テストはどうするの?」
秘境テストと聞くと急に引き攣った表情で、解りやすくうろたえる
「ひ、秘境テストぉ?あはははやだなぁ~あれは任意だよ?そんな面倒なの参加する訳ないじゃん」
「そうなんだ...俺参加しようと思ってんだけど」
「!?・・・っ!、あ、ああぁぁおはよう!!って、ゴメンね城二君、俺アイツに話あるからまたね~」
ワザとらしく教室に前から居た大して仲良くない生徒の元に挨拶しながら去っていった
(まぁ俺も君たちは遠慮したいしね...勝負の本番は昼休みか・・・)
朝のホームルームを告げるチャイムと共に担任の皆川先生が教室に入ってくる、皆川先生は1年の時から俺の担任だ
「朝から、廊下で騒動があったらしいけど、北野何かあったのか?」
そう尋ねる皆川先生からは、この手の話に大した興味を感じない...そんな印象だ、恐らく義務的に聞いてるだけだろう
🔶
皆川 綾瀬(みながわ あやせ)26歳、現在は独身、茶色い長い髪のストレートヘアーで右の耳にだけ髪をかけている、その右の耳には天然石の付いたイヤリングが輝いていた
身長は160㎝と女性としては平均的でスタイルはスーツ姿が良く似合うスレンダーな体系、目鼻立ちも整っていて超美人だ、
しかし、その鋭い目元が冷たい印象を相手に与えている為、生徒からしたら近寄り難く感じてしまい
少し距離を置かれている
綾瀬と城二は1年の時にひと悶着が有り、学校からの仲裁で表面上は穏便に和解した事になっているが、
綾瀬の中では城二に対し強い嫌悪感を拭いされて無い...そんな彼女も又サブヒロインであり主人公の恋愛対象である
綾瀬は3年前に旦那とは死別している
綾瀬は以前、亡くなった旦那と一緒に
退魔特殊魔刑部隊とは、秘境より這い出てきた魔物や偽神から民間人を守る為武力掃討する事を目的としている国家防衛組織だが、
彼女の所属していた第9部隊は隠密行動を主としている斥候の役割が強い組織だった
綾瀬はその部隊の部隊長を史上最年少の若さで任された超エリートだ
そんな中、とある任務中に綾瀬がへまをして新婚間もない旦那共々窮地に陥ってしまったが、
旦那さんの捨て身の作戦で、なんとか綾瀬だけ助かり旦那は綾瀬の命を救いその作戦にて殉職してしまった
その事が切っ掛けとなり綾瀬は第9特殊部隊長を退任しそのまま除隊、
特殊部隊の資金支援者の一人でもある東光高校の理事長に拾われ学校の教師として赴任して来たのだ
🔶
「いえ、個人的な事です...騒ぎを起こしてしまい申し訳御座いません」
そう皆川先生に頭をさげると、皆川先生もクラスメートも俺の殊勝な態度に驚いて言葉を失っていた
「そ、そうか...まぁ朝から生徒達が噂話で騒がしかったのでな...個人的な事であればこれ以上は聞かないでおこう...皆も憶測で個人を貶めない様に気を付けろ、この話はこれまでだ良いな」
「「「はい」」」
その後は一般的な授業が始まり内容も元居た世界の物と、ほぼ同じで一応東京の国立大学を卒業している俺にとっては、復習程度の内容であった
(これなら初日の学科テストは問題ないな...やはり2日目の秘境テストに全力を尽くすべきか...)
キィーンコーンカンコーン♪
昼休みを告げるチャイムが鳴り午前最後の授業が終わる、先生が教室を出ると仲の良い者同士が集まり、思い思いに弁当やパンを用意し始める
「...えっと...城二君お昼は何時もの学食かな?」
朝に声を掛けてきた取り巻きの男子生徒だ...朝の事があり気まずそうだ
「悪いね少し用事があるから、俺は失礼するよ」
「え?...ああ、ああ分かったよ...ちっ!(なんだよ、昼飯奢ってくれる位しか良いとこない癖に使えねな)」
俺はその舌打ちを聞こえなかった事にして教室を後にした
向った先は3Fのさらに上...屋上への階段だ
立ち入り禁止の張り紙がしてあるが、お構いなしに金属製のノブを回し力を込めドアを押す
風がきついのか少し重たいドアを開けると屋上のコンクリで温められた風が身体を通り抜ける...
周囲を見渡すと錆が目立つ大きな貯水タンクが目に留まる
(あそこか...)