この世界にひとりも居なかった
味方となってくれる友人が俺にも出来た、
それは屋上のアリエル事 雨宮 真白だ
真白は魔都東京1999のゲームの世界では、物語の序盤から登場はしているが
本格的に主人公と関わるのは中盤から終盤にかけての佳境だ
その為、最初から強い力を持つ最強格の主力キャラだ
そして真白を仲間にした後に恋愛対象とするには、
ゲーム序盤に訪れるアニメショップでの遭遇イベントを経由する必要がある
それは真白がアニメのコメディ好きと言う事を主人公が知ってるという事で
二人に接点が出来て、其が切っ掛けとなり徐々に会話が増え
孤独な真白の抱える悩みや苦悩を主人公が親身になり受け止め、一緒に日のあたる場所に連れ出すと言うイベントにつながる流れなのだ
だが、そのイベントは発生しないだろう何故なら...
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「だから、あの場面は海に飛び込んじゃダメって話よ~クククク」
真白と友達となったあの日から、俺は毎日の様に昼休みになると屋上へとおもむき貯水タンク裏へと通った
そして今日も真白と他愛もない会話で盛り上がる
「確かに、フフフ、じゃそのまま来た道帰れよってね、ウフフ」
すっかり真白と打ち解け、気さくに会話をする間柄になれた
原作で見知ってる真白の好きなジャンルの話題を、ちょっとずつ会話に混ぜ真白が興味を持ったタイミングでさらに会話を盛り上げる
少し卑怯かとも思える好感度上げの方法だが、自分の生死を分かつ未来が掛かってるとなれば必死にもなる...
それに俺の一推しの真白が目の前で俺だけに笑いかけてくれる...この笑顔を見れるなら、俺の持てる知識を総動員する事も厭わない覚悟だ
「城二、あれから宮下さんだっけ?元婚約者さんは何もしてこない?」
俺と真白の会話で藍瑠の名前が上がったのは、初日に真白と初めて話した時以来だ
「いやぁ~あれからは何も無いよ、と言うか俺が顔を合わせたくないから屋上に逃げて来たっていうのもあんだよね~」
「そう・・・・」
真白は少し複雑な表情で少し落ち込んでいる様だ、俺もまだまだ真白の女心を理解は出来てない様だ
「あ、でも今は真白と話出来るのが楽しくて屋上に通ってるんだぞ?」
これは紛れも無く本音だ...いやそもそも流星眼を持つ真白に心を偽れるはずもない
「フフフありがと、私も城二と話するの楽しみにしてる」
真白は満面の笑顔で俺に答えてくれる
(くぅぅぅ可愛いなぁぁ)
「ところで前に話していた秘境テストの件、どうするつもりなの?」
「あ、あぁ~あれねぇ~ほら俺って皆に嫌われてて一緒にパーティーを組んでくれるような物好きは居ないよ、なんとか秘境テスト以外で家族からの信頼を取り戻す方法を見つけるよ」
チョンチョン
真白は俺のシャツの袖を引っ張り自分を指さす
「ここに物好き居るよ?」
「!?え?マジで!本当に良いのか?真白」
コクコク
笑顔で何度も頷く真白の手を握り上下に何度も揺らす
「やったぁぁありがと真白!!真白は本当に最高の友人だ!」
「ふふふ、もっと感謝してくれて良いんだよ?城二?フフフ」
「アハハハ、真白は最高だぁぁ!!今度一緒に行く約束のアニメショップで好きなグッズ奢るからな!!」
俺の言葉に真白も俺に握られた手を嬉しそうに上下にゆらしている
これで何とか秘境テストへ参加する資格は得た...あとは神を視認する為に、テスト当日まで神視できるレベルまでの段階まで刑に励まないとな...
しかし俺たちは気付いて無かった...屋上のドアの陰から俺たちの様子を見ている人影の事を...
「何...あれ...あれって雨宮さんだよね?...屋上のアリエルとあんな楽しそうに...それに城二君のあんな優しそうな笑顔...」
◇
刑の鍛錬方法...刑の鍛錬は大きく分けて3つある
1つは肉体の鍛錬だ、これは強力な神の力の行使に耐えうる為には強靭な肉体が必要だからだ...不十分な状態で神の力を行使したら後からの反動で体が言う事を利かなくなる...
俺は転生した初日から毎朝、夜が明ける前に道代を起こさない様に気を使いながら家を抜け出し、ランニングを続けてる最初こそ全然距離も走れなかったが、この北野 城二と言う男の身体は思ったよりポテンシャルが有るようで2、3日で20キロのランニングにも耐えれる様になった、最近ではランニング後に近所の公園で腕立てと腹筋、スクワットをそれぞれ200回程課してる
それからこの世界にはプロテインやサプリメントが存在しないので、自分で黄粉を購入し野菜ジュースとミキサーで混ぜた物を飲み続けてる(非常に不味い)
2つ目は刑の為の型を繰り返し練習する事だ...一見法則性の無い型もよくよく研究すれば効率的な型を複数組み合わせる事で短時間に効果を得る...これは前世で中学まで習っていた空手が役にたっている
3つ目は2人で行う併せと言う方法だ...これは肉体の鍛錬と刑の型の反復練習を2人で呼吸を併せて行う鍛錬だ、この併せはパートナーの神視力が強ければ強い程効果が大きくなる、併せでの神視上達速度は先に上げた2つの方法を大きく上回るので、学校でもこの刑を授業内で行う
そして俺には、ゲーム上級者として最高効率での修練方法を行うプロセスの知識がある、いまはそれ等を駆使し自分の肉体と精神を鍛えている
◇
「ん?どうしたの?城二?」
少し考え事をしてしまって真白の話を聞き逃した...
「あ、いやすまない...秘境テストの前にある神視の試験の事でな...」
真白は俺が奢ったコーヒー牛乳のストローと口に入れたままキョトンと首を傾げる
「あれから毎日刑の鍛錬をしてるんだがな...当日までに間に合うか...」
「ふふ、知ってる...城二私と初めて会った時よりすごく上達してる...普通ではあり得ない成長速度...一体どんな刑をしてるの?」
俺は自分のしてる刑の事を真白に説明した
「そっか...キツイ鍛錬だけどチョイスしてやってるのね、城二は偉いね誰にも見て貰えないのに努力出来て」
「そんな事無いよ、実際真白には見て貰えてるからな、俺の成長を」
「フフフそうね、あっそれならGWを利用して私と併せしてみようか?」
「!?本当に良いのか!?真白が併せしてくれるなら心強い、宜しくお願いします!!」
こうして俺は秘境テストに向け真白と、最後の追い込みをする事になった