秘境テストに向けた最後の追い込みを兼ねゴールデンウイーク中に、真白と併せ刑による修練の約束を取り付ける事が出来た
北野 城二は刑自体に興味が無かったのいで、元の城二に知識は無かったが、
転生した今の俺にはゲームの達成度100%トロフィを獲得した実績と開発時に培った知識がある、
後俺に必要なのは絶え間なく愚直に努力するやる気だけだ
この魔都東京1999の世界では、一人の例外を除いて、自分が契約し降ろし憑いてくれた神により本人の能力がある程度決まってくる
ただ憑いた神の力を引き出すには、憑かれた側の総合的なステイタスにも依存する為、基礎能力を上げる事で実質的に強くなれるというのが、この世界のレベルアップ概念だ
刑による肉体修練の目的は基本的にこれにあたる、受け入れる器としての純粋な肉体強化になるからだ
次に型の必要性だが、これは憑いた神のスキルを使用する際の複雑な形式を簡略する為、
自分の中に簡易儀式心域という複雑な動きを簡略化して記憶する心の領域拡大を目的としている・・・まぁ言うなら電話の短縮ダイアル登録の記録容量の様な物だ
強いスキル程 複雑な型式が必要になる為、多くの心域範囲が必要になる、
数多くの弱スキルを使える様にセットするか、1つ強力なスキルをセットするかで自由度の高いカスタマイズが可能となっている
そして併せによる刑だが、併せは先の二つの効果を同時に得る事が可能になる、
組む相手のレベル次第だが相手のレベルが高ければ高い程、レベルの低い側の受ける恩恵は大きくなる、逆に相手のレベルが低い側には殆ど恩恵は無い
だから、低レベル帯の時は高レベルの相手に併せを依頼して効率的に修練するのがコツだ、
逆に高レベルになると個人で刑を行うと言うのが一般的なこのゲームのレベリングの流れだ
だから今回、俺にとって学年で最高レベルであろう真白との併せ刑は、願ったり叶ったりである
だが神視だけは生まれ持った才能であり修練時に多少の強化は見込めるが、上限以上には大きく変化しないと言うのがこの世界の常識である
しかも神視のレベルは隠しステータスとなっており、普通にゲームをプレイしてると自分の神視レベルに気付かない内にゲームをクリアしてる事が殆どだ
だが実際にはキーとなるイベントをこなして進めて行くと、神視レベルは上げる事が可能になっている
因みに一般的な人の神視レベルはLV10~15と言われている、雨宮の最高傑作といわれてる真白でLV50前後
しかし、この世界の主人公である北野 尊に至ってはLV40~99までの範囲で神視レベルを上げる事が可能になっている
範囲が広い要因は、神視レベルを上げる為に関係するイベントを全て回収する事でLV99に到達する事を意味してる
つまり、普通にゲームを進行していけば尊は真白に神視LVで及ばないという訳だ
そして今の俺、北野 城二の神視LVは俺の見立てではLV5前後では無いかと思ってる
ゲーム上級者である俺は神視LVを上げる方法は知ってるので日々、学校内にある地脈スポットで瞑想鍛錬をして鍛えている
しかし今の所の進捗では秘境テスト迄にLV10行けば良いところだろう・・・正直神視試験には足りない
目下俺の目的は秘境テストにて秘境最深部に到達し両親の俺への評価を多少なりと改善する事だ・・・それと出来る事なら・・・
目的の為の不足してる神視レベルの上昇...真白との併せ刑は渡りに船だ、これで雨宮家の保有する龍脈の修練場で真白と裏攻略で刑に励めば・・・ギリギリ目標の神視レベル15~20迄到達出来る試算だ
キーンコーンカーンコーン♪
本日の授業が終わり皆川先生が、そのまま教壇に立ち帰りのホームルームが始まる
「明日からゴールデンウイークに入るが羽目を外し過ぎない様に、それとゴールデンウイーク明けの翌週には学科テストと実技秘境テストがある」
「せんせぇ~せっかくの休みなのに気が重くなるじゃんかぁ」
「そうだよぉ~綾瀬っちぃ~」
皆川先生の話しにクラスメートから怨嗟の様な小さなブーイングが怒るが、皆川先生の氷の様な冷たい目に睨まれ口を噤む
(まぁこういうのが本来の学園の乗りだよな・・・あれは...クラスのムードメーカー担当の男女 藤堂 時哉(とうどう ときや)と池上 天音(いけがみ あまね)だったか?・・)
この二人はNPC(ノンプレイキャラ)だがイベント時にパーティーを組んだりする事がある所謂、脇役キャラだ
藤堂は、金髪のウルフヘアにピアスをしたお調子者の残念イケメンだがその実力は中々の物だ、物語終盤に猿田毘古神(サルタヒコ)という風を使う天狗の元となった強力な神を降ろす事になる
池上 天音とは幼馴染でノリも良く似ている事から付き合ってるのでは無いかと揶揄われるが、その時は顔を真っ赤にして否定するのがお約束の分かりやすい正直者でもある
一方で藤堂の幼馴染 池上 天音だが、彼女も藤堂と同じくNPCキャラで藤堂と同じタイミングでイベントパーティーを組むキャラだ
その見た目は、緩フワパーマの腰まである金髪にピンクのメッシュが入った髪の毛、クルっとカールした長い睫毛に目元パッチリメイク、頬にピンクのチークとキラキララメ、爪もデコデコの付けツメが本人の性格同様に騒がしい
スタイルもかなり良くワザと開けたシャツからは水色の下着がチラッと見えてる、スカートもあきらか短すぎで、腰にセーターを巻き付け後ろはガードしてるが足を組み替える度に下着が見えるので、陰キャ共の間ではギャル女神として崇められている
実際、彼女はそんな見た目でも、陰キャ陽キャ分け隔てなく接しており男女共に人気は高い
池上は恋愛対象キャラで無い事が一部のファンから不満の声が上がり ゲームの低評価の一番の原因でもあるった..
その為、開発チームはシステム更新の際にサブヒロインとして恋愛対象とする為のイベントを追加する修正バッチ(修正プログラム)を作り完成させたが、
ユーザーに提供する前に、開発元の親会社からNGが出て直前でお蔵入りになった、つまり池上はサブヒロインにも引けを取らない程、人気の有るキャラだ
そして気になる藤堂との関係だが、池上の方も藤堂とのカップリングを噂されて良く揶揄われているが、こっちは藤堂とは違いアッサリと関係を否定する所から藤堂の一方的な片思いだとファンの共通認識だ
そんな池上はゲーム終盤にて天宇受売命(アメノウズメ)という踊りや歌を司る神を降ろす事になる
なお北野 城二は、こんな社交的で明るい性格の二人からすら毛嫌いされている
「では、これでホームルームを終わる」
「起立、気を付け、礼」「「「ありがとうございました!」」
皆川先生がクラスから退室すると、解放されたクラスメートは藤堂と池上の周りに集まり談笑している
どうやらクラスメンバーで連休前に親睦も兼ねてカラオケに行く様だ、その集団の中には城二の取り巻き連中もいる
「!?っ」
ボーと見ていた俺と目が合った取り巻きの一人は慌てて目線を外し何事も無かったかの様に談笑の輪に加わっていった
(まぁその方が君たちにとっても俺にとっても良い選択だよ・・・)
荷物を手に取り席を立つと、後ろのドアから退室しようとドアに手をかける・・・・と
「ねぇ城二っち、城二っちも一緒にカラオケいく?」
「へぇぇ?」
予想してなかった誘いに間抜けた裏声で返事をしてしまう
「プッッッ何よその痴漢された女の子みたいな声ぇ~城二っちてばウケるぅ~」
俺に声を掛けてきたのは、池上だった
驚いて固まってる俺の肩をパシパシ叩いてケラケラとお腹を押え笑ってる
しかしそれを見て居た藤堂は不機嫌な表情で俺を睨み
「はぁ~?おい、天音そんな奴誘うんじゃねぇよ」
(こういう正直な敵意の向け方、いかにも藤堂らしい・・・裏表無くて良いなマジで・・)
俺はゲーム内で体験出来なかった脇役との日常会話のやり取りに内心で感動し心が躍った
「北野てめぇ~なにニヤけてんだぁ!!」
どうやら俺は嬉しくてニヤけてしまった様だ・・・・いかんいかん
「あ、悪いな藤堂、悪気は無いんだ許してくれ、それと池上さんも誘ってくれて有難う、だが俺が行くと皆楽しめないと思うから遠慮するよ、それに今からやる事あるしね」
「へぇぇ?池上・・・さん?」
今度は池上がキョトンとして声を裏返す・・・・
「それじゃ皆で楽しんできて、また休み明けに」
そう微笑んで軽く池上に手をふり、ボ~と俺の顔を見つめる池上を残し教室を後にした
そして何時もの瞑想スポットである地脈が集まった学校裏庭のご神木の元で静かに瞑想をする
「・・・・・・・・・・・・」
「悪いな北野、そろそろ時間だ」
急に声を掛けられ目を開けると、そこには皆川先生が私服姿で立っていた
「・・・先生、いつも申し訳ありません」
「なに...私も帰りだ、校門も閉めねばならん外まで一緒に行くか?」
あたりは日が傾き夕焼けに染まっていた
「今日から学校は休校だ、暫くお前の瞑想も見れないな」
「そうですね・・・この場所には及ばないですが地脈スポットに心当たりが有りますので...連休中はそこで瞑想します」
本当に皆川先生が最後だった様で校門を出た横にあるボックスを開け中のスイッチを押すと、ギギギと軋む音と共に鉄骨の校門がゆっくりと締まっていく
「なぁ...北野 一つ聞いてもいいか?」
皆川先生が校門開閉スイッチのボックスに鍵をしながら背中越しに話かけてくる
「はい、なんでしょう?」
俺の返事に振り返り、月明かりに光る鋭い目で俺を見つめる
「お前は本当に北野 城二なのか?」
(当然の疑問だよな・・・だが皆川先生と懇意にしてる土着神の神視試験を受ければ、遅かれ早かれ俺が本物か偽物かバレてしまう・・・だが)
「仰ってる意味が分かりませんが?俺は俺ですそれ以上、答えようがありません」
「言い方を変えよう、お前は1年の時の北野 城二と同じ北野 城二なのか?中身があまりに違い過ぎるんだが?」
「俺は・・・・・・・・・・・・」