ゴールデンウィーク2日目、朝から電車とバスを乗り継ぎ、遠く県境の山奥へと向かっていた
「なぁ真白こんな所に本当にあるのか?」
山道を歩く2人の男女、俺事、北野 城二と親友の雨宮 真白である
「ん、心配無用【ブイ・ブイ】」
真白はニコニコしながら右手を俺に向けピースサインしながら突きだしている
「それは...お前の左手で持ってる地図が逆さまなのをツッコめって事か?」
「ぬぉぉぉ!」
ワザとらしく驚いて見せる真白...学校では俺以外の友人が居ない為、俺と知り合う前は孤独に屋上で一人昼食を食べていた「屋上のアリエル」
それが今じゃ何処で覚えて来たのか毎回お笑いネタを仕込んで俺にツッませる事を至上の楽しみにしているお笑いモンスターだ
事前に雨宮から山道を進んだ先にある修練場を用意してるから、ハイキング用の恰好と装備で来るように言われ準備して来た
俺も真白も厚手の生地のキャップを被り、黒いタイトな生地の長シャツにオレンジ色のライフジャケット、茶色のジーンズにトラッキング用の厚底シューズ、そして利便性の高いリュック
真白と色までお揃いだ...これは偶然では無くゴールデンウイーク初日に真白と二人で駅前のショッピングモールに買いに行っき真白に選んでもらったコーデなのだ
お揃いなはずが、明らかに真白のリュックが大きい様な気がする
「なぁ真白、リュックがお揃いでは無いように思うがな?」
一緒に見に行った時に俺が選んだリュックを買わなかった真白は「私、同じの持ってるから要らない」と言っていたはずだが...
「それに、やたら荷物多くないか?」
そう話すとやたら慌てて否定する真白に...
「まさかとは思うけど...修練や生活に関係ないモノをもって来てないよな?例えば...遊ぶ為のグッズとか...」
「!?そ、そそそ、そんな事しないよぉ~」
明かに不自然に目線を外して泳がせてる真白は嘘が苦手の様だ...(まぁそこが可愛いんだけどね)
途中で山の景色を見ながらのお昼休憩を挟み途中で買ったコンビニの弁当で腹を満たした
「前から思っていたけど、真白ってやたらメロンパン食うよな?」
食後のデザートなのか今真白は自分の顔と同じくらいの大きさのメロンパンに噛り付いてる
「ん?うん、前に城二が美味しい言ってたから食べてみたら、ハマった」
ハムスターの様に小さな口でアムアムと音が聞こえそうな程必死にかぶりつく真白は嬉しそうだった
...が...今3分の2ほど残ったメロンパンは俺の手の中に納まっていた
「なぁ...食えないのに出すんじゃないよ」
お腹を摩りながら、午前の紅茶のミルクティーを口に入れゴクゴクと喉を鳴らす真白
「ん?親友同士は食べ物もシェアする、昨日漫画で読んだ、これ常識!【ブイブイ】」
「まぁメロンパ旨ぇ~から良いけどよ...つかその【ブイブイ】てピース、この間俺が貸した不滅の刀のお笑い担当のお約束のだろ?真白ツボりすぎだぞぉ、フフフ」
俺が、そう笑うと真白も調子にのって余計に俺にブイブイと両手で突っついてきた
「【ブイブイ】【ブイブイ】うりゃ、脇腹だぁ~」
「ギャハハハハやめろぉぉ~メロンパンが食えねぇぇ、ギャハハは脇が弱いんだってぇ!!ギャハハは」
そんな馬鹿な事をしながら、アテにならない真白のナビゲーションを華麗にスルーしながらようやく目的の場所に到着した
〇雨宮家 修練場 玄武の雨濡らし岩場
山頂付近で横道に長い石段があり、案内板が立っていた
「雨宮家 修練場 玄武の雨濡らし岩場?」
「そう、ここが雨宮の保有する龍脈スポット南門の守護聖獣玄武の名を冠した修練場」
「確か雨宮の守護聖は雨に纏わる玄武だったよな」
俺の質問に黙って頷く真白
「家の許可は貰ってるし、早速いこう」
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「はぁはぁ何段あんだよ...はぁはぁ...」
両膝に手をついて、肩で息をしてる俺を横目で全く息も切らしてない涼しい顔の真白
「はぁはぁ...なんでそんな涼しい顔で居れるんだ...」
「ん?こんなの普通、城二が貧弱すぎ」
文句の一つも言いたいが、息が切れて苦しい...そんな俺をしり目に真白は入り口の門にあるお札に向って手をかざした
ゴゴゴゴゴゴゴ
如何にも重そうな音と共に大きな木製の門が開く
「お待ちしてました、真白お嬢様」
中から紫陽花柄の紫色の着物を着た女性が真白に向って深々頭を下げ挨拶をする
「ん、梅姉久しぶり」
真白の声に反応した梅姉と呼ばれた和風美人の女性は顔を上げると俺の方をチラッとみて一瞬だが目を細める
(なんか歓迎されてないな...まぁ城二は悪い意味で有名だしな)
真白との併せ刑の修練は波乱の幕開けとなった