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第17話 玄武の修練場と管理人

雨宮家の保有する修練場「玄武の雨濡らし岩場」古来より神儀を生業としてきた雨宮家秘蔵の修練場だ


人里離れた山道の奥にあり、長い石段を上った先に朱色に染まった大きな木製の両開き扉が行く手を塞いでる


長い石段を登り切り肩で息をする俺をしり目に、門の横の支柱に埋め込まれてる紋様の印字されたお札に手をかざすす真白


すると、鈍いうねり音と共にゆっくりと扉が開きだす


開いた門の先には、人影が...


「お待ちしておりました、真白様」


「ん、梅姉、久しぶり」


真白に対し礼儀正しくも深々と頭を下げる紫陽花柄の紫色の着物の女性、真白と挨拶が終わり顔を上げ俺の方を見るその眼は一瞬だが冷たく輝いていた



「本日から暫くお世話になります、雨宮さんと同じ東光高校2年の北野 城二です」


真白の少し後ろから頭を下げ挨拶すると、


「お話しは伺っております、私は「玄武の雨濡らし岩場」の管理を任されております貝塚 梅子(かいずか うめこ)と申します」


先ほど真白と挨拶した時より2オクターブ程低い声で挨拶を返す女性、貝塚 梅子さん


貝塚さんは、黒髪を束ね後ろでアップにしており貝殻の櫛で留めている、身長は170cmと女性にしては高身長ながら細い体つきの為大柄な印象は感じない、色白な肌に、整った細めの眉と長い睫毛(まつげ)真っ赤な口紅、口元には大人の色気漂う黒子がある


20代半ばか後半と言った所か落ち着いた雰囲気の女性だが、一番強く印象を受けるのはその黒く輝く鋭い眼光だろう


(雰囲気からも歓迎されて無い事は解る...これも城二のキャラのせいか)


俺に身に覚えが無いが、俺自身も城二の事が大嫌いなので、こういう場面に出くわしても相手に対し不快な感情は抱かない寧ろ同調すら覚える


「本日より、3日間の修練場への滞在とお聞きしてます短い間ですがよろしくお願い致します」


形だけの挨拶を済ますと貝塚さんは真白の荷物だけ預かり中へと案内してくれた


「ん?梅姉、修練所内の説明」


真白から修練場内の説明を促され、少し苦い顔をしたが真白に軽く頭を下げた後、石作りの歩道の中央で立ち止まり修練場の説明を始める


「この修練場は大きく4つのエリアに分かれます、まず東側にあるのが此れから行く宿泊や食事を行う「青域」です、次に北にありますのが型や併せを行う為の修練場「赤域」になります、そして西側にある天然の岩場の肉体鍛錬場「白域」、南側には精神鍛錬の為の滝が有ります「黒域」の4箇所が、玄武の雨濡らし岩場の修練場で御座います」


「ん、説明不十分...城二、各施設には東西南北の龍脈が通ってる、例えば青域に青龍の力で疲労回復効果が有るとか...白域には白虎の力で筋力が上がるとか...まぁ良い効果が修練場とマッチしてるって事」


どうだとばかりに胸を張り俺に説明する真白


「真白様の見識には感服しました」


白々しくも真白に向かってそう頭を下げる貝塚さん


まぁ知ってたけどね...


この修練場は魔都東京1999においても登場する、物語終盤で真白が仲間になった後、主人公である尊が3柱の神の内の最初に契約する神、須佐之男命との再戦の為の特訓の場所として提供される


ただ、ゲーム内では移動コマンドでサクッと移動してたので、まさか険しい山道を進んだ先にあるとは思って無かった


それに案内役の貝塚さんもゲーム内では名前も出てこない恐らく施設コマンドを選択する時に顔アイコンだけ表示されてたアシスタントのキャラだろうと思うが...こういう所も既にゲームの内容から変化してきてるのだろう


途中途中で施設の説明をしながら案内してくれる真白に相槌をうちながら歩いて行く


(まぁゲーム内での玄武修練所は一枚絵でしか見て無かったから、リアルな作りを見ると結構広いし、しっかりした施設だったんだな...)


キョロキョロと周辺を見渡しながら歩いていると、目的の宿泊施設に到着した


「ここの宿泊施設はコテージになって完全個室なの」


真白は俺にコテージのカギを手渡しながらそう話してくれた


「朝7時から朝食、昼12時から昼食、夜の7時に夕食、お風呂は本館の裏に温泉がある」


「了解分かった、それじゃ荷物だけ置いてくるな」


真白に渡された鍵のタグに書いてある「亀」と掲げてあるコテージのドアを開け中に入ると、広くは無いがベッドや机、トイレにパソコン迄備え付けてありちょっとしたビジネスホテルの様だった


「良い雰囲気の部屋だ」


「ん、早く荷物を置くといい」


俺が備え付けのクローゼットに荷物をしまっていると、真白も一緒に荷物を押し込みだした


「ん?真白は何してるんだ?」


「ん、片づけ」


「お前、自分の荷物は自分の部屋に片づけろよ」


「ん、だから今してる」


「??どういうこと?」


「??なにが?」


「お前まさかこの部屋に俺と一緒に泊まる気か?」


「ん、モチモチブイブイ」


大きな荷物を無理やり詰め込みながら俺に向かって二パッと笑いピースする


「真白様...それは旦那様も奥様もお許しになっておりません真白様は本館の自室にてご宿泊下さい」


入り口で貝塚さんが真白に向かって頭を下げながらも、俺と一緒に泊まるのはダメだと釘をさしてくれた(助かる)


「ん、梅姉が黙ってればOK」


「それは出来かねます」


「ケチ」


「そう仰られても出来ないものは出来ません、それに未婚の男女が同じ部屋に寝泊まりするのは感心致しません」


「心配ない城二と私は親友、握手もした」


「なりません」


「ケチ」


「何と申されても許可出来ません、もし如何してもこの部屋に泊まられるなら北野様には、即刻この修練場から出て行ってもらう事になります」


「...仕方ない梅姉はここの責任者、今回は言う事を聞く」


真白を屈服させた貝塚さんは、項垂れる真白の頭越しに俺の方を向き鋭い目で睨み付けてから、真白の荷物を俺から受け取り真白と一緒に本館と呼ばれる大きな建物へと消えて行った


部屋の入口から正面に見える「白域」の方へと眼を向ける


(ゲーム終盤なら白域に4聖獣のうちの一匹である「白虎」が顕現し、真白に新たな力を授けるイベントが有るんだが...まぁ今の俺達じゃ神視レベルが全然届いてないし今回は無いだろうな...)










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